第72回 米国糖尿病学会(ADA2012) 【開催期間:2012年6月8日~12日】
毎日朝食をとると、週0-3回に比べ2型糖尿病発症リスクが34%低下
2012年6月13日 カテゴリ:一般内科疾患・循環器疾患・内分泌・代謝疾患
朝食摂取の重要性が従来、指摘されているが、2型糖尿病発症リスクと朝食習慣との関連は十分研究されていない。米国ミネソタ大学のAndrew O. Odegaard氏らは、心血管疾患の危険因子を検討した集団ベースの前向き多施設研究CARDIA試験のデータをもとに、朝食摂取頻度と代謝関連指標および2型糖尿病発症の関連を調査し、6月11日に報告。Odegaard氏は、1週間の朝食回数が増えるに伴い腹部肥満などのリスクが低下し、毎日朝食を食べる人で週0-3回の人に比べ、2型糖尿病発症リスクが34%低かったと解説した。
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CARDIA(Coronary Artery Risk Development in Young Adults)試験の参加者は、18-30歳のアフリカ系米国人と白人5,115人で、背景や既往歴、心理社会的要因、身体活動度や食事に関する情報を問診と標準的な質問票で収集した長期観察研究である。
食事習慣については、CARDIA試験開始後7年目(1992-93年)に調査した。今回、Odegaard氏は、この食事調査に参加した人のうち、摂取エネルギーが極端に多い人(男性8,000kcal、女性6,000kcalを超す人)や極端に少ない人(男性800kcal未満、女性600kcal未満)を除外し、2型糖尿病ではなく最低1年以上追跡調査されている3,598人を対象に、朝食摂取頻度と代謝関連の指標および糖尿病発症について検討した。追跡期間は1992-93年から2010-11年。
ベースライン(7年目の調査)時の朝食摂取頻度は、週0-3回群1,556人、週4-6回群779人、週7回群1,263人。平均年齢は週0-3群24.8歳、週4-6回群25.0歳、週7回群25.4歳。女性がそれぞれ53.3%、53.7%、59.8%を占め、現喫煙者は34.9%、23.0%、15.8%、BMIは27.9kg/m2、26.7 kg/m2、25.1 kg/m2だった。
ハザード比(HR)は週0-3回群を基準(1.0)としてCox回帰モデルで求め、モデル1では、年齢、実施施設、人種、性別、教育、喫煙状況(現喫煙者、過去喫煙者、非喫煙者)、身体活動、アルコール摂取量(mL/日)、ファーストフードの摂取頻度、総合的な食事の質、昼食・夕食・軽食の摂取頻度、総エネルギー摂取量(kcal)の各因子で調整した。モデル2aは上記の因子に加え、ウエスト周囲径を調整因子に加え、モデル2bではさらにBMIを調整因子に加えた。
まず腹部肥満(女性は>88cm、男性は>102cmと定義)について見ると、モデル1のHRは週4-6回群0.75、週7回群 0.60と朝食頻度が増えるにつれ、有意にリスクが低下し(p<0.0001)、モデル2aでも同様に週4-6回群0.84、週7回群0.78という結果だった(p=0.001)。
肥満(BMI 30kg/m2以上)についても、モデル1のHRは、週4-6回群0.75、週7回群0.57(p<0.0001)、モデル2bで週4-6回群0.85、週7回群0.80(p=0.011)と朝食頻度の増加とリスク低下が関連していた。また、メタボリックシンドロームについても検討し、モデル1のHRは週4-6回群0.79、週7回群0.63(p<0.0001)、モデル2bで週4-6回群0.89、週7回群0.82(p=0.02)と同様の傾向を認めた。この関連に人種や性別による差は見られなかったが、食事の質が高い人でHRが最も低かった。
一方、2型糖尿病の発症(1,000人・年あたり)を見ると、週0-3回群6.7、週4-6回群 4.5、週7回群 3.3で、モデル1のHRは、週4-6回群0.76(95%CI 0.58-0.98)、週7回群0.66(95%CI 0.51-0.86)と朝食頻度の増加とともに、有意に2型糖尿病発症リスクが低下していた(p<0.001)。モデル2bでも、週4-6回群0.82(95%CI 0.63-1.07)、週7回群0.81(95%CI 0.63-1.05)と低下する傾向は認めたが、有意には至らなかった(p=0.07)。黒人女性では、ベースラインの平均BMIが高く朝食回数0-3回が多かったことから、朝食頻度と2型糖尿病発症との間に関連は認められなかった。
この結果に関してOdegaard氏は「今回検討の対象とした18歳以上の集団では、朝食摂取頻度が増えるに伴い、腹部肥満、肥満(BMI)、メタボリックシンドロームリスクが有意に低下した」と解説し、2型糖尿病発症については「毎日朝食を食べる人でリスクが34%有意に低かったが、BMIを含めて調整すると、このリスク低下が弱まった」とまとめた。