雫石町に入ってからも、どこの湯にしようか、いろいろ、思いあぐねた。
網張、いや、湯田か・・、ふと、いつもは素通りする「鶯宿」が、浮かんだ。
温泉街に、深く入っていく。
鴬宿川沿いの細い道の角に建つ、元湯旅館「かどや」。民宿のような、小さな旅館だ。
お向かいは、鴬宿屈指の大きな旅館「長栄館」。鴬宿温泉の代名詞・・、言い過ぎかな。
常連さんじゃないと入りづらい雰囲気はあるけど・・。
「立ち寄り湯ですがあ・・」
「はい、どうぞ。」と、人当たりのいいオバサン・・、女将さん。
掛け流しの湯船に、冷えた身体を沈めた。言葉にならない、至福の境地。
熱め。微かな硫黄の香り。何といっても、お湯が新鮮!!欲張らない大きさが、いい。
滞在の湯治客が数人いるようでしたが、一時間ほどは貸切状態。
内湯ですが、露天のような開放感。窓の下を流れる、鴬宿川の川音が心地いい。
汗が引くまで外で涼んでいたら、宿のご主人らしきお父さんに声をかけられた。
「山形からよく来たなあ。いづ出てきた?今からじゃ帰れねーべ。泊まれじゃ。」
「オレの倅もこんなさ乗ってでな。オレ、何ぼに見える?八十だじゃあ・・」等々。
強烈なネイティブ南部弁に、ヤワな庄内弁は、ことごとく粉砕された。
KO寸前のボクを救ったのは女将さんの一声。お客さんの車を案内しなさいとの指示。
ここもやっぱり奥さんかあ・・。ボクは、この宿がとても気に入りました。