駆出しの思い出

　朝刊の香川県関係の叙位叙勲名簿に「旭日単光章　元綾南町議津村久和氏（79）＝綾歌郡綾川町小野乙14ノ7（10月8日死去）」の懐かしい名前を見つけた。
　小生が駆出し営業マンの時の取引先であった。38年ほど前のことだが、津村氏は既に革新党系の中堅町議として活躍、家業は奥さんが切り盛りされていた。口数こそ少ないが、ズバリ直言する方で、その一言に重みがあった。

　当時の我がテリトリー香川県は、会社を城の本丸に例えるならば外堀にあたり、スタート早々に地を這うような苦労の連続だった。従って仕事面のことはあまり思い出したくもないのだが、失敗談をひとつ。
　津村氏の店を訪ね駐車時についうっかりエンジンキーをさしたままドアロックしてしまった。閉める瞬間に気付いたのだが時既に遅し。
　しかし、津村氏は慌てず騒がず悠然と知合いの自動車屋を呼んで下さった。平べったい針金状の秘密兵器で難無く開けて頂き事なきを得た。
　この時は商談のことに気をとられていたのか、心に隙があったようだ。懲りずにこの後も同じ失敗を２度、３度繰り返したが、いずれも岡山県内だったので親父にスペアキーを届けて貰ったことが思い出される。尤も最近の車は、キーレスエントリーシステムなので、こんな失敗は語り種にもならない。

　津村氏は新聞屋を廃業し、後はＹ系列との合売店となっている。同氏の叙勲は長年に亘る議員としての功績を称えたものだろう。栄えある受賞おめでとうございます。さりとて命あっての物種です。ご冥福をお祈りします。