昼食時、 買い物を済ませて家に戻る途中のこと、 どこか草臥れ感のある運動靴姿の男性(Hと呼ぼう)が歩道を歩くともなく、 走るでも無い歩調で南に向かって進んでいるのが見えた。 僕の家もそっちの方法だから自転車で追尾していった。
Hは押し釦式信号機の所で一瞬歩を止め、 押し釦を押した。 そしてまた歩き出した。 そんな所で僕はHに追いついた。 並んだところで声を掛けた。
「さっき横断歩道の信号機のボタンを押してましたね」
「なんのためにボタンを押したんですか?」と問いかけた。
H(変なやつ)の説明はこうだった。
「この道路は30km道路、 なのに車はみんなそれ以上のスピードで走っているだろう」
「それは通行する歩行者にとって安全上よくない、 信号で一回止まってもらえばスピードが低下して安全になる」
「なんとも変わった思考をするジジイだな、 お前が道路上に寝転んで車の通行を遮断したらどうなのよ・・・」とでも言ってやろうと思ったが、 それだけで通り過ぎた。