・・・工場の生産現場に居た時、不良品を撲滅するために色々な経験をした。
それまでの会社勤めでは、生産現場の経験がなかったので、不良品の発生の対策は、予備知識なしに色々と自分なりに考えて対策を打ちながら品質改善をした経験がある。
なぜ、こんな話を持ち出したかというと「過って経験のない福島の原子力発電事故」に対して、経験がないという事では同じ観点から、事故担当者に対して、自分なりに思い当たることが多いので、過去の不良品対策の生産現場での体験を思い出した。
原子力発電も、普通の製造現場も機械は人間が設計する。
機械を動かす為の作業標準・技術標準・安全基準・・・・等も、すべては、人が元になる理屈をベースに経験値、実験データーを加えて作り上げ、それを失敗経験を織り込みながら改善していくもので、最初から出来上がって使えるものはありえないというのが人間が作ったものの本質である。
さて、私の現場での不良品改善経験であるが、
私が現場に赴任した時には、すでに問題のラインは週に2回のペースで不良品を出していた。
そこで、品質を改善するために、最初、不良を出す機械に張り付いて原因を調べた。
不良の原因は現場の機械の構造にあることを突き止めたが、残念ながら一度作った機械はコストの面から、取り換えることができないので、手直ししながら使うことになる。
また、数多い不良のパターンはいくつもあるので、その原因を全部解決するのに、時間がかかった。
機械原因による不良はかなりの程度改善できたが、最後まで残った不良品の原因は作業者に起因することでした。
原材料をセットしてから、別のラインに半製品を人が運んだり、更に出来上がった製品を出荷品置き場に運んだりの間に、人が関与することによって、不良が発生することが最終的にわかってきた。
行ったことは材料を機械にセットして、製品が製品バッグに収納され出荷品置き場に行くまでに、生産工程で人が関与しない設備作りがもっとも効果的な対策でした。
そのほかに効果的な対策は、製造途中で、何回も機械が自動で数を数えて、大事な品質には自動の検査工程を入れて不良品を発見することでした。
これらの対策を地道にやったことにより、最終的には、対策後は何年もノークレームの状態になりました。
その状況に至るまでの、そのときの経験から、製造現場の経験がない私が、初めての現場での問題発生について、いくつかのことを学びました。
学んだことの第一は、機械が原因による問題発生は必ず再現することができますが、人によって起因する問題発生の再現は難しい。
問題発生の人の要因として、一番、困るのは熟練作業者である。
何も考えない作業者は間違いは、おおよそ同じ間違いを再現するが、熟練作業者は単純な間違いは自分なりにすぐに改善してしまい、それが、正しい改善ができてないことによって、問題を更に複雑にして解決を難しくする。
現場における人の問題は決めたルールを、そのルール通りに作業する事が一番難しいことにある。
従って、一般には機械でやれることは徹底的に機械化して、人が関与しないことが間違いをなくすことが大事です。
しかし、それはルールが絶対に信頼できる場合で、必ず間違いを起こさないルールは一般的には作れないと考えるのが正しい。
ルールの場合も間違いを見つけて改善していくことで、より間違いのないルールにしていくものです。
世の中には人知の及ばないことがある、どんなに頑張っても、人の知恵が及ばない事がある。
その及ばない程度によって、それが起因して発生する問題の割合は少なくなっていくものです。
人の知恵で作り上げていく機械であったり、ルールであったりする限り、人の知恵の及ばないことによる問題発生がわずかであるが必ず発生し、ゼロになることはありえない。
一般の製造現場の不良発生も原子力発電の事故発生も、具体的事情は違っても、人間が作り上げた技術と云う事では同じである。
原子力発電は人知が及ばない大きな失敗をすると、取り返すことのできない問題となり、問題発生の結果を社会が受け入れられないところに、原子力発電が技術として成り立たない所以がある。
即ち、技術として成立するためには、社会が失敗を受け入れて、それを改善していける対象でない限り駄目なのである。