Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

定まった天の配剤の絶妙

2009-03-24 | 試飲百景
週末の試飲会は盛り沢山であった。ワインは数種類の2008年産のリースリングが樽試飲として、まだ製品として検査される以前の段階として試飲出来ただけであるが、前年の2007年産のものとの比較は通常はない事なのでとても興味深かった。

それに引き換え山盛りだったのは情報であって、殆ど昔話になるような自らの記憶と重なる部分も多く、ただ客観的に冷静に接する事の出来ないものもあった。

それは何かと言えばやはり名門醸造所フォン・バッサーマン・ヨルダンの身売りへと向う段階の説明であり、ヘルダーリンなどを研究するその当時の娘さんと当時の未亡人の母親の事を思い出し、更に先代のヨルダン博士の面影もそこに重ねるからである。なんとも、ご多分に漏れずあの時ああなっていればもしかしたらとか「歴史」に色々と過去には想像もつかなかった現在からの光を当ててしまうのである。

なんとも他人さんの事とは言え、お隣のフォン・ブール醸造所の貸借などの事なども話題になるにつけ、「見えない将来の放つもの」をどうしてもそこに嗅いでしまうのである。些か落ち着かない不安な気持ちは変わらない。

グラス蓋の事についても厳しい見解が示された。それを独占販売している会社内部の者とも先週話したばかりだが、栓をするのに手動でやるのが最大の難点だとか、十年以内には消滅すると言う見解で、スクリューキャップは外国でのイメージさえ上がれば上級のワインにまで取り入れたいという。事情は、コルクを使うスペインなどに比べて殆ど一ユーロと大変高価な割に質が落ちるものしか手に入らないドイツ事情はやはり深刻なようだ。それならばグランクリュワインでもスクリューキャップの方が良いと言う結論に落ち着く。勿論何年寝かせるかの話である。秘蔵倉庫のワインも、四半世紀に一度の丁度コルク替えの時期に当たっており、何百年も飲めるワインを寝かせて置くのとはどうしても事情が異なる。

更に驚いたのは、既に広大な地下蔵自体が殆ど観光対象の蔵になり果てていて、実際はニーダーキルヘンのヴァインマッハーの方へと拠点が移っていた事で、その農協の施設を借りる事で高級ワインが醸造されている新事実であった。フォン・ブール醸造所が、直系がいなかった為に相続をした親戚筋であり実際はフォン・ブール家でもあるツ・グッテンベルクが、ジャパンマネーを使って近代化して、なるほどステンレスの醸造施設を整えて高級リースリングを醸造すると共にブルグンダー種などは余所で摘み取っている事実と、これまた事情が似ている。

要するにあれだけの量を近代的な手法で醸造しようと思えば合理的な設備の方が使い易いのは間違いなく、熟成のさせ方などワインの哲学に関わる問題でもある。たとえ現在の水準が上回っているとしても、我々先先代のころの味が懐かしく思う古いお客さんがいても可笑しくはないだろう。個人で寝かしてあるあの当時のワインはやはり貴重である。

そのようなある老夫婦の感想は大変興味深かった。なんとキーセルベルクとヘアゴットザッカーに挟まれた谷間の「モイスヘーレが何といっても旨い」と力説する夫婦が現われた。勿論インタヴューさせて貰ったが、あの砥石のような「ミネラル味が堪らない」らしい。

個人的には特に興味深かったのは去年の春以降は目もかけなかった2007年産ヘアゴットザッカーがここに来て急に面白味を増した。改めてAP番号56を確かめたぐらいにワインが開いてきていたのである。個人的にはこれをあまり寝かしたことがなかったので少し驚いた。社長に言わせると、秋から冬場に閉じていたのがこれから開き出すとなる、すると早めに閉じ出して更に第二の樽摘めとなるような商品はまだこれから期待出来るとなる。その一方、ラインヘーレのように今閉じてきたなという感じのワインも出て来て、そうしたものは瓶詰め後二年目つまり来年の今頃第二の頂点を迎えるのだろう。

テロワーの説明として、ホーエンモルゲンの土壌の歴史的な積み重ねに言及されて、盛り土をする時に現在の地層になったことを思い出させた。要するに、擁壁が作られるときに、通常とは逆に、フォルストの玄武岩などが混じったそれが上に重ねられたことから ― 恐らくそれ故に太陽の熱を保存し易いようになっているのだろう ―、 ある意味ニュートラルであって且つフルボディーのリースリングとなる葡萄が育つ用になったのである。その配剤は人工的とも言えるが、それが特別な個性となっているのがまさに絶妙である。

さて2008年リースリングは、味の濃くだけでなくて凝縮感がある。その出方によって、お目当ての土壌の素晴らしいワインとなっているか、それとも癖が強すぎるとなるかは好事家にとって大変な話題となる事であろう。2007年産に比べると明らかにマニアや通向きのヴィンテージとなりそうである。どうせ生産量も比較すると少ないのであり、凝縮されたワインは絞られたマニアに思う存分楽しんで貰えば良いのだろう。それにしても、もっとも安いグーツリースリングもしくはゾンマーリースリングと呼ばれるものからして全く重みはないにも拘らず飲み応えがあるリースリングが提供される。特にリースリングファンにとっては今後とも目を離せないヴィンテージとなった。その前に清澄さが売り物の2007年産も確保しておく物がありそうで大変である。



参照:
どうした?バッサーマン・ヨルダン
雑色砂岩の味
雑色砂岩の上に果実味
飲み方あれこれ
確固たるミネラル味 (新・緑家のリースリング日記)
画竜点睛を欠かさない充実 2009-03-06 | 試飲百景
なんだかんだと僻むだけ 2009-03-14 | ワイン
ふにゃふにゃしない加齢 2009-03-09 | ワイン
我慢し切れない美味さ? 2009-03-03 | 試飲百景
コメント (2)
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