Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

怒涛の如くの飽きない味

2009-07-28 | 試飲百景
天気が良く、行楽日和である。だからワイン街道は交通量も多く、普段の日曜日以上の試飲客がいると思った。しかし実際には先客が一組だけで、後にも先にももう一組が店仕舞いまでに訪れただけであった。

試飲の椅子の上には下らない評価本などが投げてある。「捨てて仕舞え」と叫んだ。そう云えば午前中に「商用」と秋の葡萄摘み取り会の参加を断わりに訪れたフォン・ブール醸造所などの評価も、そのような評価本を掴んで離すことができない辺境の島国の自称他称「通人」たちの餌食になってしまう。泳ぎでも何事もそうだが、ハウツーものを手にしてあれやこれやと模索して入るうちは一人前にはなれない。それを力いっぱい込めて握っている掌から手放すときに初めて文字通り一人立ちが出来るのである。こうした感覚は、初めて立つことが出来た、もしくは自転車に乗れたときの感覚そのものなのである。

情報源が少なくそれを通してしか接点を持たないと云うようないい訳がこれまたどの世界においても日本人の口から漏れるかも知れないが、そう云う「小ざかしさ」も情報の伝達と環境という「如何にも合理的そうないい訳」自体も一人立ちしていない証拠なのである。日本文化や日本人がいつも情ない文化や民族であるのはこれ故にである。

さて、試飲は2008年産として素晴らしい成果でもあったグーツヴァインから始める。結果的にはお客さんにもそれなりの評価を貰ったが、軽めに作って個性を薄めたフォン・ブール醸造所のそれと対抗軸にあるかと思われる。ワインとしてはこちらに軍配が挙がる事は間違いないが、要はそうしたワインの楽しみ方のありようであってつまりその目指す市場のあり方である。なるほど高級ワインのグランクリュワインの質がそのままスタンダードワインであるグーツヴァインに平行して表れるのは当然であって、ビュルクリン・ヴォルフとフォン・ブール醸造所のワインの格がその違いとなっている。そうなのだそうしたワインの格の違いに点数をつけて見ても仕方なかろう事はどんな馬鹿でも分かる。

さて次にルッパーツベルクとヴァッヘンハイムのオルツヴァインを比較する。先ず先のグーツヴァインに比較してこれまた遥かに格が上がり香りが人を魅了するのである。よりクリスタルな印象のある後者のワインに軍配が挙がるのは個人的な趣向などである以上に、飲み頃であることがそうさせるのである。これは何度も繰り返し試飲をしていないと判り難い事実なのだが、時の要素が如何に大きいか。評価本などを手にとる奴には分かるまい。

「ルッパーツベルク」の敗者復活を目指して食事前にあるいてきたホーヘブルクのプリミエクリュを試す。残念ながらお客さんの評価はすっきり感のなさで、そこに炭団が二つ並んだ。それに対抗するランゲンモルゲンは酸がまだ表に膚かっていてその評価は難しいかも知れないが、誰もがそれに気がつく頃には売り切れて入るのである。馬鹿者達よ!

最も評価の高かったアルテンブルクとゲリュンペルのヴァッヘンハイマー同士の比較では、前者のペトロな要素とそれ以外の梨など出方が少しづつ変化して来ているようで、春ほどには万人向けではなくなって来ているが、バランスはなかなか良く、低位のワインにあったような甘い感じは少なくなってくる。そしてレープホルツが言うような塩が効いている。最もクリスタルっぽいリースリングであるゲリュンペルはここの地の醸造所の代表的なワインであることに違いない。2008年度の特徴がその地の性格と巧く相殺されているようで飲み易い按配となっている。

いよいよ2007年産のグランクリュの比較試飲である。先ずは最も二月の訪問の時に不可解なワインと映ったようである玄武岩のペッヒシュタインを2003年と比較する。2003年は酸が少なくとても難しい年で未だに飲めるリースリングがあるのが不思議なほど若々しいが、十分に開いている例として大変参考になる。後に聞くところによると、2001年や2002年などは買いらしい。因みに2003年産が36ユーロとなかなか買える価格となっている。

そして思いがけず差し出されたのが2007年産イエズイーテンガルテンで五十ユーロの価格はまだまだ閉じていると云っても良い。容易な安いワインほど早く飲めるのだから、これを買いこんで将来スキヤキなどに合わせるとなると大変贅沢なお話である。

お目当ての2001年ホーヘンモルゲンの42ユーロが高いというか安いというかは、兎に角味わってみなければ誰にも結論は下せまい。味わってしまうと高いと断定出来なくなるのである。2007年の健康度では達成出来ないような円熟が嬉しい。

ご愛嬌に2008年産ホーヘンモルゲンの樽試飲もしたのだが、火付け役となった我々としては願ってもない試飲であり、2008年産の強さと必ずしもこの地所のワインでなくても良いというヴィンテージの実感を得た。もちろん毎年少しづつでもお気に入りのワインを購入して行けば毎年良い状態のものを開けて行ける楽しみが味わえる。それとは違って、年度によって最高にお買い得なものを選択して行くのはなかなか通常人には容易ではないだろう。

85年産のショイレーベなら我家の地下にそれ以上のものがあり、また甘口のそれらについては特別書く事もなかろう。



参照:
ゴー・ミヨ騒動その後 2 (モーゼル便り)
リースラーナーについてです。 (saarweineのワインに関してあれこれ)
コメント (4)
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