Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

三十路女の手練手管に感心

2009-07-07 | 
近所の女に迫られた。残念ながらドイツ女性はフランス女性ではないので鼻を鳴らしてやって来ない。それの良し悪しは相手次第で何とも言えないが、今日のはまた風変わりだった。

訪問者があったので察しがついて玄関へ降りていくと、スクエアーから男と女の話し声がするではないか。これはおかしいと思って、なにか面倒な事で無ければ良いがと思って玄関を出ると予想通りの訪問者が居て安堵した。そして、その後ろに隠れていた女が一人近づいてきて唐突に挨拶をはじめる。

そう言えば昨日だかに隣のガレージから車を出し入れしていた女に会釈したのだった。どうもその女だったようだ。彼女は言う。

「私、もうここに引っ越してきて四半年経つのよ、今までお会いしなかったね」

「ああ、そう。一体何時から?」

「ほら、ここの名札書いてあるでしょ、一人住まいなのよね、もう四半年よ、私ね、もう三十近いのよ」

「はははは、しかしそれにしてもいつも時刻が合わなかったのかね」

「そうなのよ、それじゃよろしくね」と手をしっかり握られる。大柄では決してないのだが、決して小柄でないドイツ女性である。

比較的肉付きの良い顔をブラウンの髪をしたためていた印象があるのだが、その後の事の方が更に印象に残って、なかなか思い出せない。そして門を出て行ってから、再びコロンボ刑事のように戻ってきて、感情を込めて言うのだ。

「残念なお知らせがあってね」

「ええ」と此方も「なんだ?」と心では思いながらも少し顔色を曇らせる。

そして、顔を覗きこむように言うのだ。

「私、目が見えなくなるのよ」

当然の事ながら自然、彼女のブロンド色した眉毛から睫毛の奥のブルー系の比較的小さな瞳を悲哀を込めて覗きこむ。間近で、それも深く。

「それはそれは」と同情を表わす。

すると彼女は間髪入れずに物憂げに言葉を吐く。

「でももう、大丈夫なのよ」

これは危ない人と思った。思わず身を引いて、用事のある背景奥で作業をしている訪問者の方へと視線を泳がしてしまった。

なるほど、昨日だかに車で擦れ違ったときに一目惚れをされてしまったのだろう。逆の立場ではいろいろな事を試みるのだが、今回の手法は初体験である。寅さんの恋の手解きにもなかった。なにか少女雑誌が安物恋愛小説に載っていそうで、それも気持ちが悪い。なるほど自分のチャームポイントと思っているのだろう目を覗かせることで、一挙に多くの事をやり遂げてしまうのである。

流石に三十路の女性は手練手管が違う。昨年の地質学の女性と比べると明らかに慣れている反面、空想が強そうな感じであるが、こちらの反応を一体どう思ったであろうか?

なるほど同じ事を二十歳の女性が試みて、突然「私、もう二十歳なのよ」と言われたらこちらはフナフナとなっていたかも知れない。女性は手が早い。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする