シュロース・ヨハニスベルクのワインを頂く。飲んで思い出したのは十五年前ほどの味覚である。辛口キャビネットを購入したと思うが、底に漂うスレートの味覚に乗ったワインの味である。
今回のシュペートレーゼはアルコール15%の過熟成の葡萄から出来上がったようで、2006年の腐った葡萄を髣髴させる。恐らく他の目的で垂らしてあった葡萄を見切り発車で製品化したのだろう。
そうした不幸な不健康さは同じ年のハールトのグランクリュ落ちのビュルガーガルテンを思い起こさせる。活性炭を入れたかどうかは定かではないが同じような味気なさを強いアルコールがマスキングするように拵えてある。
それでも独特の黄土質のそれの一種の分厚さというかボディー感は通常のヨハニスベルクのリースリングの特徴が出ていて、懐かしい思いを味合わせて貰った。そのスレートの地盤を別にすると、若干似ているのはルッパーツベルクのガイスビュールやラインヘッセンのフーバッカーの土壌であろうか。比較に出したビュルガーガルテンは薔薇の香りという強い特徴があるので、土壌感の出方は似ていても個性はヨハニスベルクよりも強い。
この歴史的な地所の特徴であるまろやかさとボディー感がある種の貫禄を備える訳なのだが、葡萄の品質が良くない限り、そうした重量感が受け入れられる素地は少ない。要するに地下の醸造所で出来る事などはそのアルコールの質を落とすぐらいだけで、葡萄が摘みとられた時点で総ては決まっているのである。
ラインガウの土壌ではこれに似ているものも少なくないが、ハッテンハイムのそれなどは遥かにニュアンスが細やかな反面石灰質で角が落ちたような感じも否めない。
なるほどシュロース・ヨハニスベルクはその独立峰のような地形的特徴からも気候的にも美味いリースリングの出来る地所である事は誰も争そわないだろうが、現代的なリースリングをどのように作れば良いかの答えはまた別な話である。
記憶にある二十年ほど前のキャビネットはさらに酸が鋭かったが、温暖化の影響と共にボディー感のあるリースリングを醸造しようとして、また新たな最高級クラスであるグランクリュを醸造しなければいけない圧力から、それは丁度ミュラー・カトワールが陥ったようなスリムなワインが容易に醸造出来ない状況に落ち込んでいるかのようにみられる。2006年産の不浄なリースリングの代表をこの二件の醸造所のワインとして味わったのは決して偶然ではないだろう。
それに呼応するかのようにロバート・ヴァイル醸造所が軽いリースリングシリーズを出し、千枚岩土壌の石英の多く認められるグレーフェンベルクのプリュミエクリュを再開する方へと紆余曲折の道程ながら、リースリングの土壌の格付けと描き別けへとビュルックリン・ヴォルフが主導したVDPの方針を強く今年から明確に打ち出しており秋の試飲会が注目される。
そうした状況を総て鑑みてこの一際格違いの名門シュロース・ヨハニスベルクが醸造所としてはVDP加盟一流どころと比べて依然格落ちであることは否めない。その相違は上のような葡萄となればそれを放棄するかどうかの違いなのである。とは言っても名門地所であるから販売価格が妥当であるかどうかが問題であろう。
参照:
月光がラインを渡る時 2007-09-23 | 暦
グラスに見るワインの特性 2005-04-28 | ワイン
本当に力が漲るとは 2008-12-02 | ワイン
偽装消費を鼓舞するな 2008-12-01 | ワイン
朝から一杯、力を誇示 2008-11-18 | ワイン
貴腐葡萄の摘み取り 2006-10-16 | ワイン
2006年産の買付け計画 2007-03-15 | ワイン
買ってしまうグランクリュ 2008-10-02 | ワイン
年産の良い地所 2007-09-27 | 試飲百景
細身で苦みばしった辛口 (新・緑家のリースリング日記)
今回のシュペートレーゼはアルコール15%の過熟成の葡萄から出来上がったようで、2006年の腐った葡萄を髣髴させる。恐らく他の目的で垂らしてあった葡萄を見切り発車で製品化したのだろう。
そうした不幸な不健康さは同じ年のハールトのグランクリュ落ちのビュルガーガルテンを思い起こさせる。活性炭を入れたかどうかは定かではないが同じような味気なさを強いアルコールがマスキングするように拵えてある。
それでも独特の黄土質のそれの一種の分厚さというかボディー感は通常のヨハニスベルクのリースリングの特徴が出ていて、懐かしい思いを味合わせて貰った。そのスレートの地盤を別にすると、若干似ているのはルッパーツベルクのガイスビュールやラインヘッセンのフーバッカーの土壌であろうか。比較に出したビュルガーガルテンは薔薇の香りという強い特徴があるので、土壌感の出方は似ていても個性はヨハニスベルクよりも強い。
この歴史的な地所の特徴であるまろやかさとボディー感がある種の貫禄を備える訳なのだが、葡萄の品質が良くない限り、そうした重量感が受け入れられる素地は少ない。要するに地下の醸造所で出来る事などはそのアルコールの質を落とすぐらいだけで、葡萄が摘みとられた時点で総ては決まっているのである。
ラインガウの土壌ではこれに似ているものも少なくないが、ハッテンハイムのそれなどは遥かにニュアンスが細やかな反面石灰質で角が落ちたような感じも否めない。
なるほどシュロース・ヨハニスベルクはその独立峰のような地形的特徴からも気候的にも美味いリースリングの出来る地所である事は誰も争そわないだろうが、現代的なリースリングをどのように作れば良いかの答えはまた別な話である。
記憶にある二十年ほど前のキャビネットはさらに酸が鋭かったが、温暖化の影響と共にボディー感のあるリースリングを醸造しようとして、また新たな最高級クラスであるグランクリュを醸造しなければいけない圧力から、それは丁度ミュラー・カトワールが陥ったようなスリムなワインが容易に醸造出来ない状況に落ち込んでいるかのようにみられる。2006年産の不浄なリースリングの代表をこの二件の醸造所のワインとして味わったのは決して偶然ではないだろう。
それに呼応するかのようにロバート・ヴァイル醸造所が軽いリースリングシリーズを出し、千枚岩土壌の石英の多く認められるグレーフェンベルクのプリュミエクリュを再開する方へと紆余曲折の道程ながら、リースリングの土壌の格付けと描き別けへとビュルックリン・ヴォルフが主導したVDPの方針を強く今年から明確に打ち出しており秋の試飲会が注目される。
そうした状況を総て鑑みてこの一際格違いの名門シュロース・ヨハニスベルクが醸造所としてはVDP加盟一流どころと比べて依然格落ちであることは否めない。その相違は上のような葡萄となればそれを放棄するかどうかの違いなのである。とは言っても名門地所であるから販売価格が妥当であるかどうかが問題であろう。
参照:
月光がラインを渡る時 2007-09-23 | 暦
グラスに見るワインの特性 2005-04-28 | ワイン
本当に力が漲るとは 2008-12-02 | ワイン
偽装消費を鼓舞するな 2008-12-01 | ワイン
朝から一杯、力を誇示 2008-11-18 | ワイン
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