Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

泥酔が愉快でないライフスタイル

2012-05-17 | 試飲百景
承前)それに引き換え軒ならず地下蔵を貸したバッサーマン・ヨルダン醸造所のワインは、三月から比べるとずっと出来上がっていた。甘みも抑えてあり、概ね上出来で、2010年のような除酸の苦労もすることなく、2008年のような嫌味な酸もない。

それならばどれほど安く、良いリースリングが飲めるかと期待するが、それはあまり適わない。先ず、グーツリースリングは悪くは無いが、風味などで魅力は少ないだろう。価格7.90ユーロをどのように見るか?

ラーゲンヴァインでは、ライタープファードからヘアゴットザッカーと悪くは無いが、10ユーロを超える価値があるかとすると、競争力は可也低い。辛うじてキーセルベルクの10.50ユーロが勝負どころである。この価格でこれ以上に魅力あるリースリングは何処で見つかるか?

その他は、ウンゲホイヤーやアウフデアマウワーなど一連のものは悉く競争力を失っている。但し、安心して楽しめる白ワインであることには変わりない。

そこでブルグンダー種を評価すると、ピノブラン、ピノグリの後者は酸が多い年のものの方が楽しめる。同様にシャルドネも上手に醸造していてソーヴィニオンブランなどは新鮮でよい。ムスカテラーもそつが無い。

甘口においてはイエズイーテンガルテンがその土壌の個性を発揮していて良かったが、2011年は甘口の年ではない。

結局、こちらの消費者としての態度如何である。BGM代わりの音楽鑑賞と同じで食事に自動的にワインを開けるライフスタイルとすれば、なにも考えることなく適当に瓶を開けて、グラスに注いで食事を流し込めばよいのである。そうした需要には、7ユーロ程度で飲み応えもあって、尚且つ飲み飽きしないリースリングがあれば十分なのである。そのような目的にはグーツリースリングが適当である。

しかしである、個人的に、最近は晩酌でストレスを解消するという生活から身体を使ってのリラックスと覚めた状態での身体の緊張と緩和でスポーツ能力を高めようとしているので、アルコールに酔うのがあまり愉快でなくなってきている。

要するに晩酌で開放という生活から、食前酒で食欲を刺激して、食事との相性を楽しむワインとなってきていて、そこでは酔い潰れる感覚から程遠くなってきている。身体の運動量やその他神経系の作用に違いない。

そこで必要なワインであり、薬膳のように薬酌となるワインは特別なワインが選ばれるのである。そこではもはや量ではなくて質が問題となる。なるほどリッターワインは安いが、飲み飽きするばかりでなく、パーティーぐらいでないと残りの不味い気の抜けたワインを飲む無駄が生じるのである。

要するに口が贅沢になったのである。そして特別なワインはところ構わず集められるのだが、どうしてもその発見の頻度からしてドイツのリースリングが多くなるのである。若しブルゴーニュに住んでいたならば全く異なる食生活をしているだろう。

青スレートの研ぎ澄まされた薬草香味のリースリング、玄武岩の肌理の細かな酸と静かな熟成、千枚岩の構築感のある透明感、雑食砂岩の厚かましいまでのゴツゴツ感など、こうしたものを食事毎に愉しめたらどんなにか幸せだろう。

そうしたリースリングを毎年探すのが一苦労であり、価格も嵩む。平素の食事に幾らまでの予算が計上可能か?7ユーロを年間180本開けるところを120本以下と削減すると、平均10ユーロ以上まで質を上げることが可能である。それならばシェーンレーバー醸造所のグーツリースリングなど安くて興味深いものを含めて、上限も上がるので予算を超えない。

ドイツのリースリングは今や価格が高く、私が探して食指を動かすようなものは到底市場には乗らず、あったとしても大変高価な商品となる。エリートのワインであるという意味は、その価格ではなく、吟味や取得、保存、飲み頃の推測などと、とんでもなく難しいからである。私自身も、上手に蔵を回すことで、いつも欠乏状態の在庫からその日の一本を選び出す、殆ど綱渡りのような遣り繰りをしているのである。良いワインなどは箱に余って在庫処理なんてことはありえない。(終わり)



参照:
ゲーテには難しい青粘板岩 2012-05-13 | 試飲百景
二分咲き帰りには四分咲き 2012-03-18 | 試飲百景
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする