Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

音の鳴らし方、緊張と緩和

2012-05-03 | 
恒例のCD漁りである。第二四半期の割引を使うにはあと二月しかない。先日辺りからデッカのデジタル録音のオペラ安売りが出ていて気になっていた。食指が動いたデュトワ指揮の「ペレアス」全曲やデーヴィス指揮シュターツカペレの「ヘンゼルとグレーテル」などは直ぐに飛んで売れてしまった。新たにパバロッティーのスカラ座での「アイーダ」が出ていた。「アイーダ」の録音ではムーティーのデビュー盤がいつも気になっていたのであるがアナログ録音で今後とも購入することはないであろう。そのためかこの人気オペラはエアーチェックしか所持していない。よく考えると生も体験したことがないのである。それでも今更と思うほどTVなどで飽き飽きするほど見聞きしている。

それでもミラノスカラ座の制作録音らしきものは、LPの「シモンボッカネグラ」や「マクベス」などは所持しているのだがデジタル録音時代になってからはあまり記憶がない ― ついでにクラウディオ・アバド指揮のオペラ上演は録音だけでなくて生でも体験していることを思い出した。今回の「アイーダ」はマゼール指揮であるが試聴すると結構きれいに録音されているようで楽しみである。そう言えばパヴァロッティーのオペラ全曲録音も手元には無いようである。三枚組みで9.99ユーロは嬉しい。

お気に入りのヴァージンの二枚組みシリーズではヒリアードアンサムブルのイタリア・英国マドリガル集を見つけた。どの曲も聞き覚えがないので重なっていないだろう。これは二枚組みで9.99ユーロ。そこに今や堂々たる世界最高の独立系レーベルとなったアルモニアミュンディーの音のカタログ無料をつける。

そしてなによりもシカゴ交響楽団のバレンボイム指揮の録音を纏めたもがヒットチャートに上っていたので調べると、欲しいものは以前から何度も安売りなどで見かけたシェーンベルクの作品集一枚だけであった。「浄められた夜」の録音はフォン・カラヤンのLPと室内楽版を所持している。生での神戸室内合奏団の岩淵龍太郎の解釈を体験してからもはやそれ以上にこの曲に求めるものは無くなった。触りを聞くと流石に当時のシカゴの弦楽器の能力は素晴らしく、改めて興味を引いた。作品16番の方もこれまた手元に録音のあるバーミンガムのラトルの指揮とは大分程度が違いそうである。ブゾーニ編曲のピアノ小曲も含まれていて、これは珍しい。結局廉価版一枚を5.99ユーロで注文。

その過程で一度は数年前に買い物籠に入れたことのあるアバド指揮ヴィーナーフィルハーモニカーのシェーンベルク作曲「ワルシャワからの生き残り」が再び安売りになっているのを偶然に見つけた。ブーレーズ指揮BBC交響楽団盤と比較してみよう。他のヴェーベルンの曲集はいつものコムパレーションであるが、この座付き管弦楽団での演奏は他に所持していない。これも9.99ユーロであるが本当に在庫があるのかどうか分らない。この辺りの録音は纏めて安売りBOXとなって再発売されそうである。

シカゴ交響楽団、ベルリンのフィルハーモニーカーなどの当時の録音を聞いてくると、冷戦当時のソヴィエトのそれと丁度対称となって我武者羅で強健なアンサムブルの特徴を聞き取ることが出来る。「西側の壁」の中にいたものだから、東側の全体主義の非人間的なそれを強く感じていても、自らのは全く気がつかなかったが、その後のアバド監督の下のベルリンのフィルハーモニカーの演奏録音などを聞くと現在のラトルの下でのそれとは違う高圧的なぎこちなさを聞いて取ることが出来る。特にマーラーの交響曲などは指揮者自体も今とは違っていたのだろうが十分に力が抜けないで、とても窮屈な按配となっている ― それこそコンツェルトマイスターにクスマウル氏などを呼び寄せたに拘らずである。

マーラーの交響曲は様々な演奏が数多く録音されているが、全集としての決定盤は無いのだろう。その曲の長さと制作費用からして九曲に後二曲が完璧に仕上げられている例は無いに違いない。今後は益々人件費や市場を考えるとベートヴェンのそれのような完成度の高さをもった制作録音は中々完成されないだろう。それゆえかLPとCDを合わせてもあまり手元には揃っておらず、今回新たに見つけた交響曲七番の録音も所持盤も二種類で、その一種類は英国オルドバラのスネープでの実況録音である。デジタル録音で9.99ユーロの安売りとなっていたのはブーレーズ指揮のクリーヴランド管弦楽団の演奏である。どれほど手間を掛けているかは分らないが少なくとも屈託無く響く音が4Dで録れていて、クレムペラー指揮のLPとは全然異なるのでこれまた面白そうである。その後アバド指揮の同曲のオファーを見つけた。試聴するとLPでの交響曲六番などのシリーズと同じでとても完成度は高いようで評判も良いようだ。しかしネットでも明らかにアナログ時代の録音制作の跡が見えて、LPでも綺麗に響いたことが想像される。演奏解釈も制作意図に則って大変まじめなもので、嘗てのこの指揮者の評判を思い起こさせる。その通りコントラストのつけ方は現在から見ると明らかに物足りない。

いつもウイッシュリストに入っていながら、なくならないうちにと漸く購入したのはヴォルフガンク・リーム作曲のヴァイオリン曲集である。これは販売元のレーベルCPOから2.99ユーロである。6ユーロの割引を差し引いて〆て10枚で42.94ユーロ。若し全部が入手出来れば約10ユーロの予算オーヴァーである。

メーデーは夜中の嵐に起こされて寝坊をした。ゆっくりと過ごすことにしたが、世界共通の休日とは気がつかずに準備をしていなかったので思うように読書も勉強も儘ならなかった。そこで注文と相成ったのであるが、試聴をして重ならないように手元の音盤などを点検がてら音を鳴らしていると、久しぶりにショルティー指揮の「モーゼとアロン」を聞き直すことが出来た。とても素晴らしい録音で、その制作への経過などにも興味を持った。最高級交響楽団を思いのまま手中におさめていた巨匠が付け焼刃で制作したプロダクションとはとても思われず、二つのブーレーズ指揮の録音よりも価値が高いかもしれない。この録音を聞くと、ブーレーズ指揮のオペラ上演よりも音楽的な内容が充実していて、シェーンベルクの音楽技法にいろいろと気づかされる。シェーンベルクの音楽はどのように鳴るべきかを教えてくれるようでとても感慨深い。



参照:
福袋CDエディション 2012-02-28 | 暦
世界を見極める知識経験 2008-07-30 | 文学・思想
対話を喚起する報道の趣味 2010-05-16 | マスメディア批評
コメント (2)
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