Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

量子力学的跳躍の証明

2012-05-05 | 雑感
水曜日は軽く二杯ほど南仏のシャルドネで一人祝盃を挙げた。嬉しかったのはいつもの石切り場で課題となっていた箇所が登れたからである。難易度で六級プラスであるから登れて当然なのだが、今まで上手く行かなかった。教えて貰っていた角の裏側にある左手の縦長の穴に指を突っ込んで、それで右足を広めにとってバランスを取りながら、右手で最後のボルトにカラビナを掛けて終わる。昨年まではその状態で立つ姿勢まで持っていけなかった。そして今回は一回目に右手でカラビナを探して掛けようとするとずり落ちてしまった。二回目に見事にカラビナを掛けた。後はカラビナを握ってA0となろうがどうしようが構わない。

それ以前にその前のカラビナに最後の中間支点を取ってから、左手の穴まで伸び上がるのに苦労した。苦肉の策でカラビナをHMSにして直接短くザイルを掛けて、身体が空に彷徨うのを防いだ。勿論レッドポイントで一連の動作を終了する実力はない。それでもその下の中間支点から真っ直ぐに逃げずに登れたのは大成果であり、冬の間オーバーハングを繰り返していたお陰で小さな屋根は苦にならなくなって来ている。

それでも最後の一手が難しいのは南仏でも何度も試みても突破出来なかったところとそっくりである。要するに三点支持で体を維持するのがとても難しいのである。更に身長差で掴みきれないかもしれないと言う不確定要素などもあり、可能な難易度に拘らず突破が危ぶまれていた箇所であった。七級を超えての身長差による不利は認めてもこの程度では納得が行かないのである。勿論大男の実力のある者でもクリアー出来ていない箇所であるが、自分としてはやはり突破しないと具合が悪い箇所である。

そして新しい靴で十分に満足のいく形で制覇したのだった。トップロープで幾ら登れてもその困難度は最後のカラビナを掛けるところにあるので全く意味が異なるのである。冬のトレーニングに続き南仏での試み、完全に5.10への道は開かれた。そのあとは、嘗て厭な感じのしたところなどを新しい靴で登るととても楽なのである。驚くべきこの成果に、ホールで私のコーチをしてくれたペーターが新しい靴を目ざとく見つけて、注目していた。素晴らしい靴であり、文句なく推薦である。

しかし相棒の医師は、引き続きプレッシャーの中にいて、必要もないフレンズなどを購入していて、その使い方などを指導した。冬の間に練習したように戸外でもリードして登らないといけないという強迫観念と、恐怖心の狭間にいるようで、フレンズを使ってなんとか誤魔化そうとしているようであるが、幾らクレッターガルテンであっても室内のように頻繁に中間支点がある訳ではなく、正しく登る練習をしていなければその不安から解消されることはない。今更の如く「室内では決まったことしか練習できない」と悟っても、今のこの初夏の良い時期に進展がないと一年先もあまり期待できない。それなりに本人も自覚してきてはいるようだが。

流石に右手首も知らず知らず酷使していたようでなべを洗うと痛む。今晩辺りは久しぶりに包帯を巻いて明日に備えようかと思う。背中から腰も両鼠蹊部も勿論肩から左右指先まで疲れが残っているが、とても気持ちの良い筋肉痛である。兎に角、冬の間のこつこつとした練習が完全に量子力学的な跳躍を生じさせたのが嬉しいのだ。



参照:
攻撃的な身体にしたのよ 2012-04-29 | 生活
カジュアルと手軽さのシャルドネ 2012-05-02 | ワイン
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