Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

神話に繋がる夢物語

2013-08-21 | 文化一般
明け方にうとうとしながらまどろんだ。ゲルマン神話の中だろうが、中世の騎士道の姿であった。どうもその朝にスペインに旅立つブロンドの彼女のことと、コメントしたばかりのベルイマン監督作品の「処女の泉」の印象が交わっているらしい。そこで改めて感じたのは、神話と中世騎士物語との融合の文化的視点そのものなのである。神話とは後世の時代のファンタジーそのものとも言っても差し支えないだろう。

そんなことを考えながらリヒャルト・ヴァーグナーのパトロンの息子であって、数学者プリングスハイムの指輪の杮落し公演練習風景の報告を紐解く前に、「ヴァルキューレ」を皿に乗せて鳴らしてみた。今まであまり感動したことのない楽劇であるが、久しぶりにカール・ベーム指揮の実況録音盤を聞くとなるほどと思わせるところが多い ― 序ながら先日九十歳を迎えたメトロポリタンには惜し過ぎたとされるレオニー・リザネックのジークリンデが絶好調である。

公演準備中にアルフレート・プリングスハイムは、楽匠の作品では「トリスタン」と「マイスタージンガー」のポリフォニーを最高のものとして、それに肉薄するものとして「神々の黄昏」を挙げて、「ヴァルキュレー」の告別と「ジークフリート」のそれを比較している。まさしくその後の「パルシファル」が創作されていないだけで、現在の我々の見解と全く変わらない。

それでも、そのヴァルキューレの効果のありどころにも言及していて、現在の聴衆においても可也多くの音楽的ではない一般聴衆はその効果を楽しみにヴァークナーの楽劇を好むのである ― 基本的にはスターウォーズ効果を代表とする映画音楽と変わらないのである。

そうした効果を可也厳しくコントールしながらも ― 管弦楽団だけでなく声楽も、素晴らしい効果をあげているのが前述の新バイロイト様式のベームの指揮で、そうした効果が劇場的な音響としてここに記録されている点で、フォン・カラヤンなどの音楽的な効果以上に大変芸術的なのである。このあたりの劇場感覚が、この指揮者には備わっていて、それが演出と相俟って記念碑的となったのは当然のことなのであろう。

プリングスハイムが嘆く観客の入っていない祝祭劇場の酷い音響効果は、テキストが全く聞き取れないこともあって、それ以上に管弦楽のヴァイオリンの線が綺麗に聞き取れないことを批判している。そして楽匠をどこまでも信じるルービンシュタインらと論争となっている。プリングスハイムは、ニッチェの新しいヴァークナー論を読む傍ら、前日に練習で感激した神々のい黄昏やトリスタンのピアノ版の編曲に勤しみながら、また晩の練習に備えるような滞在の日々を綴っている。



参照:
Alfred Pringsheim, der kritische Wagnerianer, Egon Voss (Thomas-Mann-Schriftenreihe)
プリングスハイムバイロイト詣で 2013-02-25 | 文化一般
神々しい微笑に映る魂胆 2013-08-19 | 女
ダイナミックなザトペックそう法 2010-09-06 | 生活
栄枯盛衰に耳を傾ける 2007-07-08 | 雑感
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