Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

特別効果の「さすらう若者の歌」

2017-05-02 | 
日曜日晩は予定通りフォアールベルクからの放送を聞いた。4月16日にモンタフォンの谷の出口にあるフェルトフォキルヒェでの演奏会実況中継録音である。演奏するのはフォアーベルク交響楽団で、指揮するのは同地へと移民してきたヴァイオリン奏者の息子キリル・ペトレンコである。交響楽団自体はもともとORFの放送交響楽団を母体としていたようだが解散後に新たに発足した交響楽団のようである。

スキー愛好家には、ザンクトアントンの名で代表されるフォアアールベルクシューレによって日本にもアルパインスキー技術が齎されたように、近代スキー技術のメッカとして有名である。しかし音楽の世界ではブレゲンツの湖上オペラや精々ホーヘネムス城でのシューベルティアーデぐらいしか聞いたことが無いだろう。実際には小さな音楽祭などはあって、そこでヒラーアンサムブルのメムバーなどがうろうろしていたのを覚えている。それよりも、谷を入ったところのブルデンツに名歌手シュヴァルツコップが最後の居を構えていたことで知られているかもしれない。要するに午前中に生放送を聞いた東の果ての帝都どころかハプスブルク家の居城インスブルックからもトンネルを超えて遠い。更に遠いザルツブルク音楽祭にシュヴァルツコップ女史が通っていた時は当然のことながらそこで長期夏季逗留をしていたのだろう。要するに細長いオーストリアの西端に位置して、ボーデン湖を挟むようにドイツ、スイス、リーヒテンシュタインなどが国境を重ねている場所である。

だから言語的にもアレマーニュ方言に近いと思う。そして今回の交響楽団にとってもハイライトとなると、助っ人として多くの名手が国境を越えて集まって来たということである。平常でも最近売れているミヒャエル・ホフシュテッタ―なども指揮をしているのだが、やはりドイツの大都市の管弦楽団とは比較出来ない。それが前半聴取後の感想である。

それでもペトレンコ指揮はとても面白いことになっている。楽団との練習時間も限られていただろうが、全く誤魔化すことにない指導をしているようで、音が十分に出ていなくても高度な演奏を求めているようで、中々演奏することで表現の幅が広がっていくようなことにはなっていないが、ベルリンのコーミッシェオパーでの演奏程度の表現には至っている。特に興味深いのは地元出身でフランクフルトでも歌っているというシュムッツハールトというバリトンが上ずった声で歌い ― そのものバイロイトでジークフリートを歌ったライアンを想起する ―、有名なフィッシャーディスカウの歌などよりも直截な若者の歌になっていて独特の効果をあげている。まるで少年合唱団員が声変わりしたような歌声になるのである。この人もレヴィン事務所の所属のようだが、この人を選ぶところがとても面白い。(続く



参照:
思春期のホルモンの様 2016-10-16 | 雑感
ペトレンコの「フクシマ禍」 2015-12-21 | 音
阿呆のギャグを深読みする阿呆 2014-08-04 | 音
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あり得ないような燃焼の時

2017-05-01 | 文化一般
ウーリ・シュテックが亡くなったとある。メスナー以降未だにアルピニズムが存在したとすれば、この人とアレクサンダー・フーバーの存在は欠かせなかったと思う。少なくともこの人がアルプスの三大北壁などのクラシック課題を単独超高速で走りあがる姿は人類の進化でしかなかった。

当然の如くその目標はヒマラヤの壁へと向けられていたが、前回のエヴェレスト遠征で駆け足で登るその氷が下で働くシェルパの頭上に落ちてきたとして袋叩きにあった。その経験を踏まえて今回は通常ルートから離れて、隣のローツェから下りて来て48時間以内に縦走を成しえる計画で、ホルンバインクロワールをテンジンと登っていたようだ。

享年40歳、6人の救助隊によって、ヌプツェの谷に遺体は収容されたということである。滑落というが、恐らく酸素欠乏の結果としても、あれだけの岩壁を駆け上がる人が滑落するような斜面などはあり得ないと驚くばかりである。

記事が修正されている。事故現場は高度順応のために日曜日の朝に訪れていて、その遺体が収容されたヌプツェフランケの足元へと千メートル落下したようである。単独の行動中とある。最後のターゲスアンツァイガーへのインタヴューで、「完踏して戻って来れる体力があるかどうかでだけで危険を冒してまでやるものではない」としていたようだ。
Ueli Steck's Everest-Lhotse project

Interview | Ueli Steck at Everest Base Camp (24-04-2017 at EBC Nepal)

Ueli Steck, Rekord in der Matterhorn-Nordwand

Ueli Steck VS Grandes Jorasses. 2008. 2 hours 21 minutes

Ueli Steck - "Making of" The North Face Trilogy

Ueli Steck | Mountaineering Legend

Ueli Steck in Les Drus "North Couloir Direct" (VI, Al 6+, M8)

Ueli Steck New Speed Record Eiger 2015

82 Summits In 62 Days, Ueli Steck Tests His Endurance In The Alps, Part 1 | Presented By Goal Zero

Ueli Steck - 82 summits in 62 days, Part 2

Tragedy Strikes Ueli Steck’s 82 Summit Project, Part 3 | Presented By Goal Zero

Ueli Steck - Training for Everest Without Oxygen 2013

RIP - Ueli Steck (1976-2017) The Swiss Machine



承前)明け方思いついてヴィーナーフィルハーモニカ―の予定表を見た。思った通り、金曜日のバーデンバーデンのプログラムが週末の定期コンサートで演奏されて、日曜の午前中からオーストリアの放送局で生中継される。前日もブルックナー交響曲4番の版やら演奏を探していてなかなか所望する材料が出てこないのでイライラしていた。それならばブロムシュテット演奏するそれを材料とすればよいと考えた。

急いでパン屋に行って峠まで駆け上がって、録音の準備をしていたが、正直この指揮者の生を聞いたこともなく、座付き管弦楽団のその演奏態度も知っているので、ここでつまらない演奏を聴いてしまうと態々バーデンバーデンにまで燃料を消費して出かける価値が無くなるかもしれないと心配になった。

しかし憂慮は徒労に終わった。詳しくは改めるとしても、モーツァルトのテムポの鮮やかさは90歳とは思えない軽やかさで、肝心のブルックナーも恐らく現役指揮者の中では筆頭のブルックナー指揮者ではないかと思った。何よりも、キリル・ペトレンコまでは至らなくても楽譜の隅々までに目が行き渡っているのは確かで、そこまで適格に指摘されると座付き管弦楽団でも真面目に演奏しなければいけなくなる。その様子が如実に表れていて、明らかにお互いの疎意さえ感じさせたペトレンコ指揮の定期演奏会とは大分趣が異なった。

兎に角、期待して鳴らしたギュンター・ヴァントの演奏もただただ喧しく、各声部を同じ勢いで鳴らしまくるだけで、なるほどペトレンコが指摘したように「焼香臭さから交響的な構造物へ」は分かるのだが、余りに管弦楽が制御が効いていなさ過ぎて話しにならない。やはり、最もブルックナーらしいオイゲン・ヨッフム指揮の演奏録音をネットで探していたのだった。(続く)



参照:
Extrem-Bergsteiger Steck stirbt am Mount Everest, FAZ vom 30.4.2017
人類の将来の進展のために 2012-12-02 | アウトドーア・環境
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