Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

込みで33ユーロの魅力

2023-10-02 | 生活
10月に泊まるミュンヘンのホテルの料金が落ちる。キャンセルは火曜日の深夜までだ。先日泊まったホテルで場所も分かっていて、冷凍庫がない分冷氷材を預けられることも現地で確認しておいた。又お湯沸かし器とコーヒーメーカーしかなかった。67ユーロというのは最低線でまだミュンヘンの宿泊は高い。郊外もいいシーズンだからだろう。

8.1評価だが、若干古ぼけているのと、駐車場が夜間は余らないのが厳しい。しかし何よりも旧市街に車で入るには悪くない。遠回りしないアウトバーンの出口から二分ほどの場所で、一泊で無駄な時間を無しでとなると使える。今回はオペラ劇場駐車場との往復で、渋滞も分かっていて、更に帰りは食事後で遅くなるので酒気帯びでも簡単に問題なくベットまで戻れるところがよい。

無駄を徹底的に省く為にピクニックの準備をしておいて、チェックインで冷蔵庫に帰宅前の朝食と車中の嗜好品を入れておけばいいか。15時30分のチェックイン待ちに到着予定して、17時半前に駐車場入庫で、18時迄にお買い物、アイスケースに入れておけば、問題がない。ホテルで冷蔵庫に移すか、翌朝新しい冷氷材に入れ替えて適当な時刻に帰路に就けば宜しい。日帰りよりは面倒であるが、演奏会後に飲み食い出来て、居眠り運転の危険の少ない帰宅がなによりも楽で一番安全である。

ちょこちょこ来春の催し物の予定が新たに出てきている。幾つか購入予定のものも見つかった。特に出かけることを仕事にしている訳ではないのだが、近辺でこれはというのがあれば出来るだけ機会を逃さないようにしている。バーデンバーデン、ハイデルベルク、フランクフルト周辺で貴重なものがあるとすれば態々遠くまでとは思わないものでも出かけるようにしている。それでも交通費だけで30ユーロぐらいの加算となり、時間的に往復二時間、駐車料金などを入れるとやはりティケット代に加えて40ユーロほど必要になる。

それでも最も至近に購入したローマの聖チチェーリア管弦楽団のバーデンバーデンでの演奏会などは逃せなかった。購入を考えていた時には上階を閉めての1000人規模の演奏会だったので、最安席は既にボックス席に二列目ぐらいしか残っていなかった。33ユーロは、他のフランクフルトなどに比較すれば安価であって、現在南欧のトップの楽団とすれば聴いておきたかった。それも18年間続いたイタリア系英国人パパーノの指揮の12月退任前の最後のツアーとなる。年初に最後のと銘を打って中欧ツアーが為されていたのは知っていたのだが、価格やプログラムなどもう一つ食指が動かず、世界最高のオペラ指揮者の指揮とは言いながら、またコロナから完全に抜け出すかの時には出かけなかった。しかし各地での公演の反響は可也のもので、それはコロナ期間中2020年のクリスマスコンサートでのキリル・ペトレンコ指揮演奏会生中継での成果が素晴らしかったことでも理解できるものだった。

今回もリストの交響詩「理想」などという珍しい曲を取り入れていても、上階を開けることになって、その反響の大きさを感じた。そして結局その代わりにケルビーニの序曲が入って、シベリウスの「サガ」が演奏されることになった。共演するピアニストのレヴィットがハイデルベルクで音楽祭をやっていることもあって、一定層の固定客もあったかもしれないが、全て込みで33ユーロとなると喜ぶ人も少なくないだろう。



参照:
連邦共和国文化圏各々 2023-09-18 | 文化一般
音の摂理とその奔流 2023-09-22 | 音
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伯林市民が知るべきこと

2023-10-01 | 
承前)新制作「メデューサの筏」第三回公演の批評を読む。流石に公演が重なると演奏者だけでなくて、聴者の方も学ぶことが多い。漸く真面な評が出てきた。いつものことながら初日はプレスが招待されるためにそれ相応の反応が出て、概ねの評価は決まるのだが、どこまで本質に迫れるかは、特にこうした初演後60年にも至らない作品では決定的とはならない。

更にその初演のスキャンダルの政治的な要因までが昇華されない限り、その作品自体が持つメッセージも正しく伝わり難いという事情がある。今回のトビアス・クラツァー演出の場合は直接の政治的な現状を突きつけた訳ではない。プログラムのインタヴューにおいても、それは難民問題でもあるかもしれない、食糧危機でもあるかもしれないと様々な受け取り方を示唆している。

しかし同時に女性の学者らしきが創作そして初演の時代の作曲家と脚本家のいた環境を詳しく書いている。手短に初演の1968年の4月2日にバーダーとエンスリンがフランクフルトのデパート爆破して赤軍派が誕生、二日後にはルーサーキングが暗殺され、それに続いて作曲家ヘンツェがローマのヴィラに囲んでいた活動家ルディ・デュツケへの暗殺未遂があった。6月6日にはロバートケネディ上院議員が銃殺された。その年には、元ナチ党員だった西ドイツ首相キーシンガーの過去が明らかにされ、学生革命に再び油が注がれた。

こうした事象が書かれると同時にそこには筋書などがトルコ語で書かれている。ベルリンのこうした催し物では通常のことがどうかは知らないが、まさしくこの上演の意義がそこにある。それを三回目の公演を見た博士号を持った人が次のように書いている。

大プールを囲んで二つの急峻な大スタンドが築かれていて、象徴的に作曲されている大コーラスのその根源的な力が死と生との間の大きな世界とに別けられていて理想的な上演場所となっているとして、その嘗ては歴史的に分断されていたベルリンの入口でもあり出口であったテムペル飛行場の誰にとってもその事実とその受け取り方が微妙なその場所で催されたと状況を説明している。

既に言及しているように、こうした記載やこの演出の内容全てがまさしく東ドイツ人にとっては経験していない事であり、当然のことながらトルコ人など68年革命を経験していない者には追体験して貰わなければいけないものがそこで示されたと考えてもよいだろう。

そしてこの報告者は、この公演をこうしたただスペクタルな催し物を越えて、その魅力的なクラシックモダーンの総譜から半音階的な12音音楽の掠れる音響を亡霊的に、バロック風の合唱のメロドラマを、死者の豊かな楽譜からロマン風の雰囲気を見渡せるように音化したティテュス・エンゲル指揮とその座付き楽団を絶賛している。これだけでこの書き手がしっかりとその内容を吟味できていることを知ることになる。

そこでこの音楽劇場公演によって日常に向き合う我々の日常がそこに浮かび上がることになるのである。こうした音楽はその為に作曲されていて、そうした創作家の意思をどのように正しく聴衆に伝えられるのかどうかが問われているのである。それでも総譜には社会主義者ヘンツェの68年の政治思想が決して書き込まれている訳ではないのである。(続く



参照:
DAS FLOSS DER MEDUSA – Komische Oper am Hangar, Dr. Ingobert Waltenberger, OnlineMerkur vom 29.9.2023
漆黒の闇があったから 2023-09-15 | 歴史・時事
オペラの前に揚がる花火 2023-09-19 | 雑感
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