Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

ペトレンコの日本への真意

2023-10-21 | マスメディア批評
11月の壮行演奏会が迫って来た。即ちベルリナーフィルハーモニカーが初めてペトレンコ指揮で日本で演奏する。幻のフルトヴェングラー指揮の演奏旅行や初めてのカラヤン指揮での日本公演に匹敵するイヴェントとなる。

それに先立ってネット会見をキリル・ペトレンコが日本向けに行ってその内容が方々で掲載されている。先日のミュンヘンの「千人の交響曲」公演の合間に行われたようである。その内容を、少なくとも2014年夏以降、ペトレンコのブレーンであるクラスティング氏に続いてその芸術について最も詳しいであろう私が解説しておこう。

夏のツアーのプログラムであった「英雄の生涯」を其の儘持って行く趣旨を問われて、夏のツアーで楽団の核のレパートリーである古典から浪漫派の作品の中に含まれて、その曲で楽団の「一人一人の奏者迄」の音楽の全てを示すことが出来ると考えると回答。

これは同時に斎藤シューレの故湯浅氏が恐らくペトレンコにも伝えたと思われる同じ弟子の小澤征爾からの又聞きとしての「ここに指揮技法の全てが集約される」とされる日本でどうしても示したいものであるという意味でもある。それを別途回答として、アマテュアー楽団を指揮することで「どのように演奏するか(way of play)」を日本でも教えるという一種の恩返しの旅ともなっている。

それは具体的には、芸大の学生などを受け入れているベルリナーフィルハーモニカーのアカデミーで教えることとして、「細かくディテールにこだって積み重ねていくこと」と語っている。それを如何にライヴでの解放するかなのだが、それへの楽団との協調関係の在り方として、総奏の銘々までが納得して演奏できる合意作りを基本として話している。これは実際にラディオ中継のあったその午前中にスコッチ交響曲から急遽ショスタコーヴィッチに練習課題を変えての練習風景でも楽員のアイデアを入れながらのそれを確認している。要するに音楽作りの全てであるのだが、これらはドイツにおける評論家諸氏でも理解している人は少ない。

また、ここでも再三再四話題にしているブラームス交響曲四番におけるシュタインバッハ版への試みへの言及で、そこに残っているパート譜に「英雄の生涯」の前に演奏されるレーガーがそこに書き込んだ初演からの演奏実践について言及していて、今日今その最終的な研究がペトレンコによって為されている筈だ。

もう一点、オペラ指揮についてへの質問に答えて、復活祭のただ一度の最大限への追及にしか言及しなかった。その他はノーコメントとした。既に来年のスカラ座での「バラの騎士」の発表が為されていて、その理由は定かではないが、一つ考えられることはその前の共同制作であるザルツブルク音楽祭でオペラを振るということになればより大きな発表が必要であるからかもしれない。もう一つは試みられている夏にNHKでも放送された「影のない女」の制作が2025年に日本で引っ越し公演されるという復活祭公演への軽重を示したことになるのかもしれない。

音楽芸術に関してはざっとこういう内容であった。



参照:
インタヴュー、時間の無駄一 2016-07-20 | 文化一般
終身指揮者ペトレンコの意志 2023-06-17 | 音
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