77年の夏、大林監督の商業映画デビュー作『HOUSE ハウス』を見た。封切り2番館なので3本立上映。それが昔の常識だった時代だ。あまりのことに映画館の椅子から何度となく滑り落ちた。吃驚仰天。驚天動地。こんな映画があっていいのか、と2度見た。(ほんとうなら3度でも続けて見たかったけど、3本立なので不可能だった。)たぶん高校3年の夏休みだ。映画に夢中で、受験勉強なんかしなかった。
『HOUSE ハウ . . . 本文を読む
これはとても寂しい映画だ。孤独な少年が新しい場所で、ぽつんとひとり佇む。冒頭のランニングシーンから、競馬場にたどり着き、そこで仕事を貰うまでがいい。映画は彼をただ追いかけるだけ。なんの説明もない。だけど、それだけから、彼が置かれている状況はわかる。この無骨な見せ方が心地よい。甘い映画ではないけど。ただ少年に寄り添い、なんの感想も言わない。ただ、一緒にいるだけ。やがて事故で死んでしまう馬のように。僕 . . . 本文を読む
吉田修一の初期作品を2作連続で読んだ。まず、2013年の『愛に乱暴』。なんだか強烈なタイトルだが、内容もまた強烈だった。この激しさが吉田修一らしくない、とか、思いつつ。
3人の男女の物語だ、と思いつつ読んでいると、果たしてそうなのか、と疑問がわく。そうじゃなかったのか、と気付いたときには、もう遅い。作者の罠にはまる。騙されていたのは誰か。明確だ。ふたりの女と彼女たちが奪い合う男。3角関係のお話に . . . 本文を読む