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映画・演劇のレビュー

さよなら大林宣彦監督

2020-04-20 21:52:12 | 映画

77年の夏、大林監督の商業映画デビュー作『HOUSE ハウス』を見た。封切り2番館なので3本立上映。それが昔の常識だった時代だ。あまりのことに映画館の椅子から何度となく滑り落ちた。吃驚仰天。驚天動地。こんな映画があっていいのか、と2度見た。(ほんとうなら3度でも続けて見たかったけど、3本立なので不可能だった。)たぶん高校3年の夏休みだ。映画に夢中で、受験勉強なんかしなかった。

『HOUSE ハウス』はそれまで見慣れた映画とはまるで違うものだった。こんなもの見たことがない、と思った。当然リアリズムからはほど遠い。全編加工された映像が延々と続く。一応はホラーなのだけど、とても優しく暖かい。彼女たちと一緒に夢の世界を旅する感覚。手作り感満載の暖かい映画。でも、女の子たちはひとりひとり殺されていくんだけれど。映像のマジックを堪能した。

昔、住道平和座という映画館があった。大東市唯一の映画館である。そこでこれを見た。場末のションベン臭い映画館だった。昔はどの町にも必ずそんな映画館があった。70年代がその最期の時代だろう。翌年『スターウォーズ』が公開されるのだから、映画の歴史において、大林映画は画期的な出来事だったのだな、と改めて思う。あれから40年余りの歳月が過ぎた。その間ずっと大林映画を見てきた。全ての作品をリアルタイムで、劇場で、見るという幸運を手にした。

いや、ひとつだけ見られてない映画がある。今、気付いた。『この空の花』だ。劇場用映画では(TV映画の再編集劇場公開作品はいくつか見逃していることにリストを見て気付いたけど、それは除くと)唯一『この空の花』だけ、公開時に見られなかった。実は劇場で見ることもかなわず、凄くあとになって(だってなかなかDVDにならなかったので)ようやくDVDで見ることになった。大林監督の作品でとても大事な1作なのに.今でもそれは悔しい。

2度目の驚きは『転校生』だ。その衝撃は大きい。(その頃はまだ結婚する前だったけど)妻とふたりで、自転車に乗って見に行ったことを今でも鮮明に憶えている。(当然今はもうない場末の映画館)香里ミリオン座だった。そして、『時をかける少女』『さびしんぼう』の尾道三部作。あの頃、20代の前半で、映画を見るのが最高の喜びだった。新婚旅行は尾道に行った。大林映画と自分について語り始めると枚挙に暇がない。でも、そんな感傷をここに綴っても仕方がないからしない。

昨日、TVで追悼企画として『ねらわれた学園』が放送されていて約30年ぶりで再見した。懐かしい。本当なら4月10日公開初日(コロナの影響で公開延期になったが、この日は大林監督の亡くなられた日だ)に見に行くはずだった『海辺の映画館』が見たい。一刻も早く見たい。

大林映画のマイベスト10

1位 転校生
2位 野ゆき山ゆき海辺ゆき
3位 時をかける少女
4位 異人たちとの夏
5位 この空の花
6位 さびしんぼう
7位 HOUSEハウス
8位 青春デンデケデケデケ
9位 ふたり
10位 22才の別れ


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