今年公開されたアニメ映画である。予告編を見た時の驚きは並ではない。なんだこれは!と思った。絢爛豪華な色彩、華やかなだけでなく、過剰なタッチは豊穣というより露悪的。こんな絵柄で長篇映画を作るって何?と思う。これが『劇場版』とあるのならもともとはTVアニメだったということなのか、と何も知らないから驚いたのだ。
TVの深夜枠で放送されるアニメはこんな実験的な作品も作っているのか、と改めて感心した。ただ予算はないはずなのにこれが可能なのか、といらぬ心配までしてしまう。
全く何の予備知識もなく見るのは怖いから劇場公開時は見送ったが、配信されたのでさっそく見ることにした。当然これは劇場の大画面が映える映画だった。もったいない見方をしてしまった。しかもTVサイズではなくスマホサイズで見たから残念の二乗。だけど、そのおかげか、これの欠陥が明白になる。
驚きは持続しない。それどころか、早期に飽きさせる。お話があまりにつまらないし、台本の不備からか、わかりにくい。それは作り手の驕りかもしれない。大奥を舞台にした妖怪騒ぎのミステリー仕立てという設定が生かされない。同時に大奥に入ってきたふたりの女たちの運命と妖怪唐傘の謎、さらにはそこにやって来る主人公の薬売りが関わってくるという図式が広がらない。せっかくのまさかの設定が台本の不備から生かされないまま終わる。なんとももったいない話だ。