この悪魔のような男、漱太郎のことをどう受け止めたらいいのか。さらには、そんな彼をずっと愛し続けることになる主人公の夢生。彼の報われない想いをどう受け止めるのか。戸惑うばかりだ。どうしようもないこととして、素直に受け入れてしまうのは、なんだかちょっと納得がいかないけど、この2人を心からは憎めないのも事実で、こんな嫌な話なのに、最後まで読ませてしまうのは、さすが、山田詠美だ。もちろんそんな彼らを山田詠美自身は否定も肯定もしない。
漱太郎のしていることは犯罪行為だ。人を平気で傷つけて、でも表面的にはとても穏やかで紳士的。とても嫌な男だ。人を見下しているくせに、おくびにも出さない善人顔。人のいないところでは、悪業の数々を平気でしている。それがこの男の本性なのだが、本人は悪いとは思わない。自分の心に忠実なだけ。そんな彼を見て、見ぬふりする夢生も共犯者だ。そうすることでつながっているなんて思うのは言語道断だ。彼は漱太郎を全面的に受け入れて愛し続ける。彼しか見えない。ホモがどうとか、そんな問題ではない。だが、体を売って生きるということは男女にかかわらわず、やはりどうかな、と思う。モラルとして、ではなく心情としてなんか、納得しない。だから、心情的に素直には受け入れがたい。最初の高校生の頃の話も大概だが、後半に入って、大人になってからのちゃんと距離感を取りながら、上手く付き合う部分も、やはりなんだかなぁ、と思う。
とは言いながらも、いろんなところに毒をばら撒いているこの話を最後まで一気に読んでしまった。こんなにも嫌な話なのに、甘美なドラマとして、素直に読めてしまうのだ。それどころか、自分までもが彼らの一味になって、心にこんな悪を抱えこんでいるような気にすらなる。この人たちは自分に正直なのだ。だから、そのことに対しては一切悩まない。もちろん、それ以外のことでなら悩みはある。妹のことだったり、ままならない恋だったり。だが、彼らは本能のままの悪に対しては正直だ。なんかそれって凄くないか? これはちょっとしたモンスターだ。漱太郎だけではなく、2人とも。
漱太郎のしていることは犯罪行為だ。人を平気で傷つけて、でも表面的にはとても穏やかで紳士的。とても嫌な男だ。人を見下しているくせに、おくびにも出さない善人顔。人のいないところでは、悪業の数々を平気でしている。それがこの男の本性なのだが、本人は悪いとは思わない。自分の心に忠実なだけ。そんな彼を見て、見ぬふりする夢生も共犯者だ。そうすることでつながっているなんて思うのは言語道断だ。彼は漱太郎を全面的に受け入れて愛し続ける。彼しか見えない。ホモがどうとか、そんな問題ではない。だが、体を売って生きるということは男女にかかわらわず、やはりどうかな、と思う。モラルとして、ではなく心情としてなんか、納得しない。だから、心情的に素直には受け入れがたい。最初の高校生の頃の話も大概だが、後半に入って、大人になってからのちゃんと距離感を取りながら、上手く付き合う部分も、やはりなんだかなぁ、と思う。
とは言いながらも、いろんなところに毒をばら撒いているこの話を最後まで一気に読んでしまった。こんなにも嫌な話なのに、甘美なドラマとして、素直に読めてしまうのだ。それどころか、自分までもが彼らの一味になって、心にこんな悪を抱えこんでいるような気にすらなる。この人たちは自分に正直なのだ。だから、そのことに対しては一切悩まない。もちろん、それ以外のことでなら悩みはある。妹のことだったり、ままならない恋だったり。だが、彼らは本能のままの悪に対しては正直だ。なんかそれって凄くないか? これはちょっとしたモンスターだ。漱太郎だけではなく、2人とも。