
ネイルアーチストを主人公にした三浦しをんの新作長篇。作品の中で丁寧にネイルアーチストの仕事が描かれていく。ここまで描かなくてもいいじゃないか、と思わせる勢いだ。もちろん敢えてこんなにもきちんと見せるのはこの仕事に対する誤解を払拭するためである。チャラチャラした仕事、ではない。あなたたちが知らないだけ、とたぶん僕たち男たちに向ける。もちろんこんなにも大変なのだ、というアピールでもない、だいたいどんな仕事だってそれぞれの大変さはある。だけどこれを読めば知らなかったネイルについて知ることができる。
敢えてお話の流れを止めてまで施術作業をきちんと見せる。残念だが読んでも専門的すぎて何をしてるのやら僕にはよくわからないところもあるけど、ネイルの凄さはなんとなく(なんとか)わかる。
お話自体は実にシンプル。ネイルアーチスト女性が主人公で、彼女の店に入った新人との二人三脚での1年が描かれる。隣の飲み屋の主人との交流や地元の商店街の人たち、さらにはネイルの同業者、というか親友との友情。そんなのが描かれていく。お話で見せるわけではなく、400ページ近い長編だけど、サラリと読める。