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映画・演劇のレビュー

『はたらく細胞』

2024-12-13 18:48:00 | 映画

お正月映画。子供から大人まで楽しめるファミリーピクチャー。「翔んで埼玉」や「テルマエ・ロマエ」シリーズの武内英樹が監督する。永野芽郁が赤血球役、佐藤健が白血球。人間サイドの主役は阿部サダヲ、その娘を芦田愛菜というキャスティング。そこに豪華俳優陣が傍に揃う。永野芽郁が素晴らしい。あまり何も考えずにひたすら酸素を運んでいるだけだけど、それがいい。純粋に楽しんで仕事をしている女の子って感じ。とてもキュートでかわいい。

こういう映画がお正月にはいい。お屠蘇気分で家族みんなで笑って楽しむ。しかもお勉強にもなる。便利でお得な映画である。だけど今の時代は家族みんなでこんな映画を楽しむ、そんな余裕もないのであろう。だいたいお正月映画なんていう感覚は世間にもマスコミにももうない。昔は新春第一弾(年末から新年にかけて公開される映画のことだ)に任命されるのは名誉なことだった。だけど今はそんな認識はない。

そんな寂しい時代においてこんなノーテンキな映画はやはり貴重である。明るく楽しくワクワク、ドキドキ。何も考えなくていい。大予算で豪華絢爛カラフルな体内世界の万華鏡。役者たちのコスプレ演技も鼻につかない。みんなそれを楽しんでいるからね。だから裏を返せばバラエティ番組レベル。

ここには本筋となるまともなお話がないからだんだん退屈してくる。いかにもなたわいもない話は短いコントならいいけど2時間に届く劇映画としては物足りない。『翔んで埼玉』が成功したのはあまりのバカバカしさとその際限ないエスカレートがあったからだが、今回はお上品でまともな話に終始して弾まない。設定の面白さから逸脱できないまま次第に空転していく。

芦田愛菜が白血病になり、体内は大騒ぎするという展開もあまりに単調で、クライマックスとしての緊張感はない。これが家族向けの大作娯楽映画であり、だから無理(無茶)はできないという枷があったからであろう。常識的なところに収まる。

もちろんこの話から無茶な展開は望めない。だけど、せめて摩訶不思議な世界を堪能させてくれたならよかったけどそれもない。体内世界を使って何を見せるのか、それがない。作品の世界観もなくただの豪華な書き割り。底が浅いだけのハリボテ世界。ちゃんとしたお話がないのはやはりツラい。

せめて『ミクロの決死圏』のような冒険物だとそれなりのお話も展開できたことだろう。もちろんここにはそれはない。全体の作りのあまりのたわいなさにガッカリした。家族連れがこれを楽しく見れるのなら、まぁそれはそれでいいけど。


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