1時間ほどの小さな芝居だ。真面目にこの題材と向き合う。そういう意味では、好感が持てる芝居だとも言える。だけれども、少し硬い。もう少し遊びが欲しい。真面目すぎて疲れる。主人公が自分の性情に悩み、やがて、カミングアウトしていく過程をもう少し描き込んで欲しい。ストレートすぎて戸惑う。自分が女の子ではなく男の子の心を持つことに戸惑いながらも、自分に正直になろうとする、というお話自体はいいのだが、彼女の内面での葛藤があまりにストレートすぎて、リアルじゃない。
好きという気持ちに正直になるまでの物語。みんなが優しい気持ちになる、というのもいい。本当の優しさにたどりつくまでの物語、という基本コンセプトには問題はないのだけれど、それだけではお話は成り立たない。いろんな想いが錯綜しながらそこにたどりつく、そんな紆余曲折が欲しいのだ。それがいかにも作られたという嘘くさいドラマとしてではなく、できれば自然体のものであればいい。ここに登場するひとりひとりの内面に迫る何かが欲しい。