ティーンの男の子の心情をメインに据えた「学園もの」のスタイルを取る『スパイダーマン』新シリーズ第二作。今回はヨーロッパへの修学旅行がテーマとなる。ローマからプラハへの観光旅行(ほんとうは、もっとベタなパリだったけど、諸事情からプラハ入りすることになる)。そこでのあれこれが描かれる。
もちろん、事件も起きるし、彼はスパイダーマンとして世界の平和を守る為にも戦うけど、高校生活最大のイベントである修学旅行も愉しまなくてはならない。大好きな女の子に告白するチャンスをうかがうとか、みんなと愉しむとか、「ヒーローもの」の映画としてはどうでもいいようなことが丁寧に描かれる。なんていうか、なんともバカバカしいストーリーを大真面目に見せていく。それこそがこの映画の目指す地平だ。だから、これはこれで悪くはない。というか、これでいいのだ。だけどこのアイデア自体はいいし、面白いけど、なんだか乗り切れない。何かが足りない。
このままでは物足りない。せめて、もう少しドラマに奥行きが欲しい。アメコミだからというわけではなかろうが、ペラペラのお話を表面的にさらりとなぞって、そこに凄いビジュアルのアクションを乗っけただけ。それってなんかちょっと安直。マーベル映画はこんなふうにSFXに頼りすぎてお話には深みがないから、DCの「ヒーローもの」ほど、楽しくない。今回も『シャザム』に負けている。ジョン・ワッツは『コップ・カー』にあった溢れ出る才能の萌芽を自ら摘んでいる。もったいない話だ。
彼の苦悩がもっと真摯に描かれるべきなのだ。他人からすればバカバカしいことでも、本人に言わせれば、とんでもなく大切なこと。そこをきちんと追いかけるべきで、そういう青春映画をこのパッケージングの中で作ろうとしたのではないのか。これは派手な映画ではなくささやかな映画だ。でも、それが世界にための戦いへとつながる。そのギャップを楽しませて欲しい。