川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』




 2011年発表の川上未映子初期の作品です。周囲との人間関係が苦手で孤独な生活を送る校閲者が世間との接点を持とうとする。
 ちょっとした日常と小さな冒険の積み重ねですが最後まで読ませます。

 ユニークなのは、主人公が精神安定剤のように朝からビールを飲み、水筒に日本酒を入れて外出するところ。私もアル中っぽいですが、人と会う前に飲むことはありません。
 主人公のアル中設定では大好きなローレンス・ブロックのマット・スカダーシリーズ、日本では坂上琴の『踊り子と将棋指し』がそうでした。彼等の酩酊、やらかし事と本作の冬子の依存レベルは異なりますが、女性のアルコール依存は初めてで主人公のキャラを際立たせて面白かったです(桐野夏生などにあるかもしれませんが)。

 こういう正統派、本格派とは少し異なる味付け、視点が川上未映子の魅力なのかもしれません。

 また、この数日、アルゲリッチとショパンをまとめて聴いていたのですが、読み物との偶然の重なりは楽しいものです。探したのですが子守唄のCDはなかったので、Appleミュージックでポリーニの演奏を聴いています。


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