沢木耕太郎「ポーカー・フェース」

              

 沢木耕太郎の最新エッセイ集です。帯に「『バーボン・ストリート』、『チェーン・スモーキング』、そしていま『ポーカー・フェース』。」とあったのですが、チェーン・スモーキングって随分前に読んだ記憶があるけど、これまでの間に他にエッセイ集を出していないんだろうかと首を傾げました。沢木耕太郎の作品を細かく追っているわけではないのですが、「凍」や「旅する力」などの力作を数年おきに発表していますが、日常的にはずっとエッセイをどこかの雑誌に書いているイメージがありました。自分が知らないだけで、他に5~6冊のエッセイ集があると言われてもそうなんだろうと思ったでしょう。

 どうやらチェーン・スモーキング以来のエッセイ集のようです(映画評をまとめたものはありますが、テーマ不特定の所謂エッセイでは20年以上振り?)。著書の履歴欄を読むと、2011年に初の短篇小説集を発表したとありました。フィクションを書き始めたことを読んだのも15年とか20年以上前の印象です。沢木耕太郎はかなり寡作な作家なのかもしれません。

 内容は遭遇した出来事、出会った人とのこと、読んだ本、観た映画、人から聞いた話しなどなど雑多ですが、要するに面白い逸話を繋げたものです。取っ掛かりの話しから派生していき、3つ、4つの別の面白話が語られ、最後に冒頭の話しに再び戻って鮮やかに締められる。音楽でいうとソナタ形式のような様式美もあり、リズミカルに読み通せます。これだけの活字にできる話しを繋げていくためには相当量のネタが必要だと思うのですが、行動力があり、好奇心旺盛、幅広い交流がある沢木耕太郎だからこそ書けるエッセイなのかもしれません。

 以前、新聞で「作家になってみたものの私の周りでは何も起こりません」といった内容の無名作家の自虐的な書き物を読んだことがありますが、沢木耕太郎の周りではいろんなことが起こります。バーでたまたま隣り合わせた人が有名な作詞家でそれも知らずに日本の歌謡曲の話しを始めて、その人が作詞した曲までこき下ろしてしまったなど、一例ですが普通の人の人生では起こらないことがいろいろと起こります。これは幸運な男、沢木耕太郎ならではのことでしょうか。

 収められた13編はどれも秀逸で夢中になって読めますが、読み終わってみると何の話しだったかあまり覚えていません。高峰秀子の話しがあった、10億分の1の映画、それからバカラの話し、えぇーとそれ以外は何だっけ。宴会の席でとても面白い話しを聞いた筈なんだけど翌朝内容を思い出せないのと同じでしょうか。決して記憶に残らないつまらない話しばかりと言っているのではありません。すぐには思い出せないくらいに目まぐるしく展開が早いです。

 帯の後ろに「圧倒的な清潔感と独自の美意識に溢れた、13編」とあります。確かに。圧倒的な清潔感とは上手いです。沢木耕太郎の潔さ、侠気を感じるエッセイ集で読後感はとても爽やかです。


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羽海野チカ「3月のライオン 7」

             

 マンガが続きますが、楽しみにしている将棋漫画の新刊が続けて発売されました。羽海野チカの「3月のライオン」第7巻と南Q太「ひらけ駒!」第5巻です。

 面白かったのですが、どちらも本筋の新たな展開への繋ぎだったので(それでも3月のライオンは重かったですが)、次が期待でしょうか。


 実際の将棋界は、3月のライオンの決闘を終えて、春、4月は名人戦です。絶不調の森内名人と対する絶好調の羽生挑戦者、羽生さんの勝ちを予想しない人はいないでしょう。森内名人がどれだけ意地を見せるのか。しかも、羽生二冠は最近、矢倉を多用して勝っている印象です。ただでさえ矢倉の多い名人戦での6八銀は確実。矢倉を観れる名人戦は幸せです。4月10日が待ち遠しい。


             


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西炯子「娚の一生」①~③

             

 「ブルータス」のマンガ特集号で知った作品です。これは嵌りました。雑誌では最新作の「姉の結婚」が紹介されていたのですが、併せて推薦されていた前作の「娚(おとこ)の一生」全3冊です。

 東京でのハードな会社生活と不倫に疲れ果てて、祖母の住む鹿児島の実家に帰省した三十代半ばのつぐみ。祖母の死後は一人静かに生活するつもりが祖母の昔の教え子という中年の大学教授・海江田が離れに住みついていて・・・。故郷の田舎の家で感じるリラックスした雰囲気を疑似体験しながら読み進めました。懐かしい故郷との繋がりという点ではリリー・フランキーの東京タワーを思い出しました。海江田の砕けた関西弁のリズムがよくて、つぐみと一緒になって少しずつ心を開いていきます。

 最近の草食系に慣れた男の設定では珍しい(?)押しの強さ、それを受けたい女の願望についての解説は、ブルータスでの湯山玲子という作家の文章が見事でそれを読んでくださいということに尽きます。私は女心は分かりませんが、「海江田の攻めにアラフォー女子読者総キュン死。」という解説が笑えます。それでもこのマンガを読めば納得できます。

 もう当分結構なはずの愛をそれでも受け入れてしまう女の性に共感と憧れを抱くのでしょうか。このどっぷりと浸かる幸福感は、マンガでは「ハチミツとクローバー」以来かもしれません。


 次作の「姉の結婚」(今のところ2巻まで)は更に年齢が進んでアラフォー主人公とイケメン元同級生の物語。設定は似通っているのですが、湯山玲子氏解説のとおりどう展開させるのか作者も迷っているのではという感じです。さて、どうなるのか。こちらも楽しみです。


             


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「東天閣」(南加瀬店)

          

 焼肉はこの4~5年は完全に自宅派で、いい肉屋を見つけて、最高のロースあるいはカルビを買ってきて、韓国式のプレートで焼いて、さっぱりとポン酢でいただく。濃厚な牛肉の脂とポン酢が合う、これは幸せでした。

 先日、会社関係で「東天閣」の支店に行く機会があり、久しぶりにタレに漬け込んだ牛肉(全て一番安いクラス)をがっつり食べたのですが、これも美味いなとちょっと驚きでした。東天閣は川崎のセメント通りに本店がある焼肉店です。焼肉屋が並ぶ川崎のセメント通りに最後に行ったのは15年くらい前だと思うのですが、高級なイメージのあった東天閣には行けずに、美星屋という比較的安い店に何度か通いました。

 調べたら東天閣の支店が南加瀬にあったので家族で出掛けました。5年振りの外出家族焼肉です。いろいろ食べましたが、やっぱりハラミですね。ロースやカルビの霜降りもいいですけど肉っぽいハラミです。「壺漬けハラミ」(1980円)には大きな肉が2枚入っています。ジュージュー焼いてからカットしていただきます。旨みのある味付けの牛肉は最高です。


          


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「大分ラーメン たまがった」(横浜駅西口店)

          

 最近、続けて食べているとんこつラーメンです。大分を名乗っていますが、とろっとしたスープが久留米ラーメンを思わせます。横浜西口、神奈川新町、伊勢佐木町と3店舗あるようです。

 ラーメン(650円)をまず麺かためで注文して、100円で替玉しています。とんこつラーメンには替玉がありますが、小食なのでこれまで経験ありませんでした。初めての替玉です。とんこつラーメンはどの店も美味しく感じて、違いが分かりませんでしたが、これが好みのスタンダードなのかもしれません。


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「エヴァンゲリヲン:ワールド」(富士急ハイランド)

          

 1泊2日の旅行です。行き先を家族と相談したのですが、この時期、突然のドカ雪もありうるということで寒い方は避けて比較的暖かいエリアです。宿は再訪の機会を伺っていた東伊豆の江の浦テラスにすぐに決まりました。そこを拠点に子供の遊び、妻の希望も考慮して、富士急ハイランド、江の浦テラス、みかん狩り、熱海で餃子、御殿場アウトレットです。

  富士急ハイランドへ行くのは数年前に河口湖に泊まった時以来です。絶叫系乗り物で有名ですが、トーマスランド、ハム太郎エリア、雪そり広場など子供向け施設も充実しています。人気の絶叫系は1時間半待ち、2時間半待ちと気の遠くなるような待ち時間ですが、子供向け施設はガラガラに近いです。


          

 中央道を河口湖ICに向かうと雪を被った富士山が徐々に大きくなってきます。写真だとどうしても小さくなるのですが、天気も良くて美しくて迫力ある山容がどんと迫ります。


          

 朝の10時過ぎから17時近くまで乗り物や施設を堪能しました。絶叫系も含めて楽しもうとすると1日では足りないかもしれませんが、子供中心であれば十分に満足できます。

 私も子供に付き合って家族サービスしたのですが、エヴァンゲリヲンの館については個人的に大いに楽しめました。エヴァの世界を実物大で再現したり、登場人物になりきって記念撮影が出来たり、資料があったりと、他愛のない施設ともいえるのですが、それでもファンには興味深いです。


          

 主役クラスの有名なセリフが並べてあります。


          

 絵コンテというのでしょうか。資料コーナーには原作者のイメージ、細かな指示などが記載されたメモが沢山展示されています。

 全体的にもう少しお金をかけた精緻なものであれば興奮できるのになあという感想です。それでも、こういう施設は他にないので珍しく、いろいろと思い出してフムフムと楽しめます。


          

 富士急ハイランド内のモスバーガーにはフジヤマバーガーというハンバーグを何層にも重ねたバカでかい限定品があり、それを食べる気でいたのですが、直前に躊躇してしまいました。今回は時間がなくて店に寄れない吉田うどんか富士宮焼きそばをフードコートで食べようと考えたので、普通サイズのこれも富士急限定の黒胡椒チキンバーガーです。美味しかったのですが、結局、フードコートで改めて食事する時間がなかったので、やっぱりフジヤマバーガーにしておけばよかったと少々後悔です。次回に挑戦しようと思います。


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「江の浦テラス」(小田原市)

          

 江の浦テラスは2007年12月に行って以来なので、4年3ヵ月振りになります。みかん畑が広がる傾斜地に建てられた部屋数僅かに5室のこじんまりとした宿です。当時の会社の上司に教えてもらい訪問したところ、懐かしい故郷に帰ったような心安らぐロケーション、東伊豆の海の眺め、夜の満天の星空、シンプルで快適な部屋、美味しい金目鯛の煮付けを含んだ豪華な食事などなど、これで1泊2食付き12000円と驚異的な安さ。感激してまた来ようと思っていたのに、もう4年が経過してしまいました・・・。

 最近の状況は分からないのですが、以前は週末の予約は難しかったです。今回は祝日の夜から、翌日は平日の日程なので予約できました。前回はまだ子供は一人だったのとそもそも他に空きがなかったので洋室でしたが、今回は子供二人なのでご主人から和室を勧められました。

 到着には手間取ってしまいました。富士急ハイランドの出発が17時頃と遅れて、ナビによると到着予定は18時20分、すっかり暗くなってしまいました。国道から脇に入るちょっと分かりにくい場所にあるのですが、前回は迷わずに着けたのでうろ覚えだったのですが、ナビもあるし大丈夫だろうと安易に考えていました。
 ナビが示した海沿いの国道から入る道を一度通り過ぎてしまい、宿に電話して道を確認し、戻ったのですが再度通り過ぎてしまいました。暗いと分かりにくいです。3度目でようやく分かったのですが(因みにこの道の脇には「一吉 磯料理 10M手前」という看板があります)、こんなに狭い農道だったかなあと焦りながらなんとかたどり着きました。もっと手前で国道135号に入るのが正規ルートで、そうすれば今回のような狭い農道を上がらなくてもよかったのですが、ナビがそれを選択せずに、暗くて道も分からず、記憶があやふやということでバタバタやってしまいました。反省です。


          

 それでもなんとか到着してほっとしました。すぐに夕食です。生ビールで乾杯してようやく落ち着きました。


          

 料理は質も量も十分な水準です。刺身はホウボウ、ヤリイカにエビと赤身です。プリプリしていて美味しい。


          

 最後に名物の金目鯛の煮付けが登場です。これは二人に一尾です。甘い味付け、締まった身が最高です。繰り返しになりますが、これで12000円は安いです。


          

 お風呂は離れ(隣りの建物)に中型の展望風呂があり(14時~22時)、家族はそちらで汗を流しましたが私は疲れていたので食事の後、寝てしまいました。残念ながら離れには入れなかったので、部屋付きのお風呂・シャワーを利用しました(バスルームもアメリカの巨大ホテル並に広いです)。


          

 真夜中に目が覚めたので今回も外に出て、満天の星を眺めました。北斗七星とオリオン座しか分からないのですが、いろんな星の固まりが至るところにありました。

 翌朝も快晴です。染井吉野が満開でとても綺麗でした。


          

 5室のうち、真ん中にある和室「3」に泊まりました。部屋へは外から入ります。因みに、江の浦テラスのことを教えてくれた会社の上司は入口方面と海側の窓と2方面の視界が広がる洋室の「1」が空いているときに利用すると言っていました。当然、一番人気なのだと思います。当日の客は我々ともうひと組みでしたが「1」に泊まっていました。


          

 全てに亘り快適ですが、それでもこの宿の主役は東伊豆の海の眺めです。いつまでも見ていたいおだやかな眺めです。前回の訪問記にも書きましたが、同じ東伊豆の海を眺める評価の高い「ヒルトン小田原リゾート&スパ」は宿泊だけで18500円から、川奈の「月のうさぎ」は週末45000円からです。


          

 朝食も極めて定番でうれしく、美味しいです。


          

 食堂は2階にあります。同じフロアの奥に談話室でしょうか、休憩できる部屋があり、雛人形と吊し雛が飾られていました。

 大大、大満足の宿です。コストパフォーマンスでここと比肩する宿が果たして存在するのか・・・あるのであれば是非是非に教えて欲しいです。これぞ本当は教えたくない宿。それでも私も教えてもらった立場なのでご紹介です。実際、どれだけ予約しにくくなっても、次回が未定なので・・・それでも絶対にまた利用します。


          

 江の浦テラスにもみかん畑があり、みかんを販売していますが、小規模でこの時期はオフのようなので移動してみかん狩りをしました。

 伊東市の宇佐美という地区にある「伊豆斎藤農園」というところに行きました。時期により最もポピュラーな温州みかんなど様々なみかんを育てているようです。この時期は皮の厚い甘夏みかんです。子供の体験重視で計画したのですが、想像以上に甘夏みかんが美味しくてラッキーでした。すっぱさと甘さが合わさったみかんが多いのですが、甘みが強いみかんの木もあって食べ比べも面白いです。みかん畑では食べ放題、お土産付きで1000円で7個持ち帰れると安くてお得です。子供達も大喜びで楽しく、美味しい体験になりました。


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「壹番」(熱海市)

          

 秋元康がここの餃子のためだけに東京から車で往復すると書いていて、いつか行ってみたいと思っていました。

 皮の旨み、野菜中心の具、ニンニクの風味、少ししっとりの焼き具合が絶妙の餃子です。これは街中の普通の中華食堂で出す旨い餃子です。どこにでもありそうだけどなかなか無い。ああいう餃子じゃないかとイメージしていたらやっぱりそうでした。妻はこれのために東京から往復するの?と首を傾げていますが、私は分かる気がします。B級大衆食の中で餃子は意外や好みのど真ん中に巡り会うのが難しいです。好きな店を挙げろと言われても、多くはもう無くなってしまった記憶の中の店が多いです。

 こういう餃子が食べたい。好みのタイプはこれだけじゃないのですが、主要2~3の中の一つです。6個で550円、二人前をペロリと食べた後、二人前を追加しました。


          

 壹番麺という餡掛け醤油麺、チャーハン、コーンスープも食べました。これも想像どおり、特徴はないけど普通に美味しいレベルです。餃子をメインにいろいろ食べたら満足できるのではないかと思います。


          

 道を挟んで斜め左に店の駐車場が2台分ありますが、それが分からなく、また有料駐車場もないので結局、熱海サンビーチの脇の市営駐車場に駐車しました。そんなに遠くないし、散歩には適当な距離です。
 この後、御殿場のアウトレットに行く予定だったのですが、ちょっと時間が遅くなったのと短時間で広大なアウトレットを回るには忙しいので、今回はパスしました。楽しかった旅行も熱海の青い海でオシマイです。
 久しぶりの熱海でしたが、メインストリートのど真ん中のホテルや施設が廃業、貸店舗の表示がされていました。不況は聞いていましたがちょっと深刻です。

 
 富士急ハイランド、江の浦テラス、伊豆斎藤農園、壹番と充実した楽しいドライブ旅行になりました。


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アバド「モーツァルト 協奏交響曲、フルートとハープのための協奏曲」

              

 パワーアンプの電源が入らなくなりました。1年3ヵ月前にプリアンプとともに100万円近くで購入したゴールドムンドのMETIS2/3です。そんなに経っていない電化製品の電源が入らないって何だそりゃという感じです。外国製ってこんなものなんでしょうか。

 修理に要する1ヵ月近くの間、音楽を聴けないと諦めていたのですが、休眠中のSANSUIのアンプを繋げばよいことに気付きました。屋根裏部屋の片隅の箱から出して、久々に現役復帰のA-α9です。接続して、鳴らしてみると、ふわっとして自然な音色です。感激。昔聴いていた音だと懐かしくなりました。スピーカーとCDプレーヤーは格上なので以前より広がりがあります。こりゃ凄いぞといろいろと聴いてみました。始めはもしかしてゴールドムンドより音がいいんじゃないかと錯覚しましたが、やはり繊細な音や腰の据わった迫力はゴールドムンドが上だと思います。それでもこの懐かしい滑らかなサウンドは耳にとても心地いいです。定価では120万円対7万円、SANSUIは凄いメーカーでした。機械オンチ、オーディオ音痴なので普段は組み替えたりなんて絶対にしないのですが、故障のお陰で懐かしくてワクワクする体験をすることができました。

 前置きが長くなりましたが、アンプ故障前に気に入ったクラシックの新譜とタワーレコード渋谷で知ったディスクが数枚あって、もう1~2回聴いてから紹介しようと思っていました。

 まず新譜です。アバドとモーツァルト管弦楽団によるモーツァルトの協奏曲です。いわゆる協奏交響曲とフルートとハープのための協奏曲の2曲が収められています。オケとソリストの演奏、掛け合いがモーツァルトらしい愉悦感に溢れていて素晴らしいです。響きも新鮮で若々しい。それを優秀録音が捉えていて万全です。
 アバドは若手有望株時代、ベルリン時代、ルツェルン時代、最近の自前オケ中心の時代と変遷してきて常に第一線にいますが、最近の充実ぶりは特に目を見張るものがあります。加えてオペラの録音もあると最高なのですが・・・まだ入れていない作品も多くて、ロッシーニ、ヴェルディも再録音してほしいけど・・・音楽不況で大物、巨匠でもオペラの録音はもう無理なのでしょうか。

          


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谷口ジロー「ふらり。」

             

 「孤独のグルメ」の作者である谷口ジローによる江戸散歩物語です。日本地図を作成した伊能忠敬らしき人物を主人公にしています。江戸の街中を歩いて見て感じたことを淡々と描いたものです。江戸の街並みも美しいです。
 特別なことは何も起こらないのですが、日常のちょっとした変化を楽しむ静かだけど味わい深い世界があります。孤独のグルメ同様に何ともいえない渋みのある漫画です。


 ブルータスの特集号の推薦漫画はかなりの質の高さでした。追加で数シリーズをアマゾンに注文していましました。


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坂戸佐兵衛/旅井とり「めしばな刑事タチバナ」①~④

             

 これはB級グルメの好き嫌い、こだわり、思い出をこれでもかと語る漫画です。一応、主人公の立花刑事を始めとした刑事モノの設定はあるのですが、それは殆んど関係なく、立花刑事、警察署の上司、同僚や容疑者がひたすらB級グルメについてウンチクを傾けるというものです。

 牛丼(吉野家、松屋、すき家、牛丼太郎、東京チカラめし)、インスタントラーメン(サッポロ一番、チャルメラ、出前一丁)、立ち食いそば(富士そば、小諸そば)、カップ焼きそば(UFO、ベヤング、一平ちゃん)、天下一品、餃子の王将などメジャーな食べ物から、少しマイナーなメニュー、ローカルフードまで立花が博識を披露し、その中で一番好きなのはこれだと断定、それに対してライバルの上司や容疑者が反論したりといった展開になっています。

 漫画としては単純で絵も上手くないですが、B級グルメの店やメニューや過去のレアアイテムなどへの滅茶苦茶細かいこだわりを大袈裟に披露するのが面白いです。おそらく多くの読者は私が好きなのはコレですと立花に同意あるいは反論しながら読んでいるのだと思います。

 B級漫画ですが、こういうのも楽しいです。


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渡辺ペコ「にこたま」①~③

             

 この漫画も面白いです。交際9年、同棲5年をむかえたあっちゃんとコーヘー。このまま平凡だけど幸せな毎日が続くと思っていたところ・・・ちょっとしたことから歯車が狂い出します。浮気、妊娠、シングルマザー、手術、結婚など深刻なテーマが繰り広げられる。

 表面上はこれまでと変わらぬ毎日なのですが、起こってしまった事実が少しずつ重くのしかかってきます。どうすればいいのか。受け止めるのが難しい現実にモヤモヤ感が募り、戸惑い、困惑します。お互いのことを知り尽くしていたつもりが心がすれ違っていく。こういう時に相手にどう接したらいいのか迷い、相手の気持ちをさぐります。何とかなるのか、それとももう地獄にいるのか。
 
 爽やかな青春漫画風なのですが、結構怖いです。二人は一体どうなっていくのでしょうか。こちらも続きが待ち遠しいです。


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はるな檸檬「ZUCCA×ZUCA ヅッカヅカ」①~②

              

 これはブルータスで紹介された漫画ではなくて、「主に泣いています」の東村アキコについて検索した際に知った作品です。はるな檸檬は東村アキコの下でアシスタントをしていた弟子で、「あんたの飛び道具は宝塚しかない。宝塚をネタにしたエッセイ漫画を描いてみろ!」(巻末漫画より)とのコメントから誕生した漫画のようです。

 ヅカヲタ(宝塚を熱狂的に愛するファン)の生態を面白おかしく4コマ~8コマくらいにまとめた短編漫画を集めています。私も宝塚を知ったばかりで独特のファンの世界のことはよく知りませんが、対象は何にせよ嵌った人のおかしな行動というのは何となく分かるので笑えます。ヲタといえば最近はAKBヲタが有名であちらは総選挙の投票券のために同じCDを何百枚も購入したりとちょっと笑えないところがありますが、この漫画のヅカヲタはまだ許容範囲です。

 嵌るのは幸せなことでもあるので、大変だなと少し呆れる一方で読後感は爽やかです。第2巻の後半になると引き合いに出される男役・娘役のスターが現役で私も知っている名前が多くなるので同時代、現在進行系のワクワク感もあります。蒼乃夕妃の見事な太ももをオペラグラスでガン見するという話しがあるのですが、残念ながら私は見れそうにありません。

 この漫画も続編が楽しみです(同名のサイトで新作を公開中)。


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東村アキコ「主に泣いてます」①~⑤

              

 雑誌「ブルータス」に「マンガが好きで好きでたまらない。」という特集号がありました。この手の漫画の紹介特集号では過去の作品も含めて幅広く推薦されることが多いのですが、昔の名作にまで手を広げる時間がありません。この特集号では連載中の話題作が中心だったので(漫画は新しい作品の方が好みに合うことが多いです)、それならと気になった作品をまとめて読んでみました。

・東村アキコ「主に泣いています」
・谷口ジロー「ふらり。」
・渡辺ペコ「にこたま」
・坂戸佐兵衛/旅井とり「めしばな刑事タチバナ」
・はるな檸檬「ZUCCA×ZUCA ヅッカヅカ」

 5冊を並べて、それぞれの一話ずつを順繰りに読んでいきます。どれも予想以上に面白い漫画だったので、充実のお楽しみタイムです。

 その中でも東村アキコの「主に泣いています」が面白かったです。あまりの美しさに出会った男達を魅了し狂わせ破滅にまで追い込んでいく泉さん。そんな自分の境遇に失望し、変装して、世間の目から逃れるように生きています。泉さんのリアルな純愛と取り巻くキャラクターのナンセンスなギャグの連発。ベースはコメディなのですが、しっとりしたシーンに主人公達と一緒に心奪われたり、聖域なしの辛辣な風刺に笑えたりと飽きさせません。昭和、平成と幅広い時代の有名人の言動、有名漫画のシーンなどが引用され、メッタ切りにされます。作者のギャグセンス大爆発です。

 5巻までマンネリもなくとにかく読ませます。来週、第6巻が発売されます。


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「モーツァルトと出会う~田部京子のピアノ協奏曲」(石橋ホール)

          

 楽しみにしていたオール・モーツァルト・プログラムです。

 場所は上野駅の近くにある上野学園の石橋メモリアルホールです。初めて行きましたが、上野学園は巨大な中層ビル一棟の音楽大学です。その脇にあるホール。中は天井の高い教会のような造りになっていて正面奥にパイプオルガンが設置されています。

〔プログラム〕

モーツァルト 交響曲 第29番
モーツァルト ピアノ協奏曲 第20番
    (休憩)
モーツァルト ピアノ協奏曲 第21番
 
 モーツァルト好きには堪らない魅惑的なプログラムです。どのコンサートもあまり凝り過ぎたプログラムにせずにモーツァルトの代表曲を1曲入れるくらいのサービスをしてくれたらと思います。

 まず大好きな交響曲第29番です。シンプルな旋律の単純明快な美しさに溢れた名曲です。モーツァルトの交響曲は普通に演奏してくれればそれだけで楽しめるのですが、その普通が難しいとヴァイオリンをやっている知人から聞いたことがあります。29番はシンプルの極みなので逆に演奏は難しいのかもしれません。

 下野竜也指揮の紀尾井シンフォニエッタ東京は弦の音が美しくて豊かです。輝かしい高音、ビオラやチェロの艶のある中低音、これらと安定感のあるホルン、オーボエとがハーモニーします。想像以上の理想的な演奏です。高速でシャカシャカ演奏して濁った音を出す名指揮者、トップオケの演奏もありますが、下野竜也はキビキビとした躍動感、天国的な調べを絶妙なテンポで表現します。29番はこうでなくちゃと思えます。
 これまでCDで聴いてきたどんな名演、優秀録音も実演での豊潤な響きには敵いません。ホールの音響もよいです。席は6列目の左側の席だったのですが、いい音に酔いしれました。モーツァルトの精緻な演奏、いつまでも続いてほしい至福の時間です。

 紀尾井シンフォニエッタ東京は、新日鉄が開館した紀尾井ホールの付属オケで、個人や室内楽で活動しているメンバーがたまに集まるようです。非常に質の高いオケだと思いました。


 そして田部京子が登場してのピアノ協奏曲なのですが、当日聴いた席ではピアノとオケの音のバランス、融合がよくなかったようです。ピアノ協奏曲は、20年以上前にニューヨークでレオンスカヤがリストのピアノ協奏曲を弾くのを聴いたことがあるのですが、これは音の響かないエイブリーフィッシャーホールだったので向こうで鳴っているという感じでした。
 それ以外に経験はなく、通常、ピアノ協奏曲が実演でどのように聴こえるのかが分からないのですが、当日聴こえた音はCDで聴いているピアノとオケの掛け合い、ハーモニーとは違いました。オケのサウンドは29番で聴いたように耳によく届くのですが、ピアノの音は人気のない空間で鳴り響いているのをちょっと離れて聴いているような感じです。目の前で両者が協演しているのですが、それが一体として聴こえません。
 客席の中段・中央の席がごそっと空席だったので(芸術文化振興基金助成事業のコンサートだったので関係者用席でしょうか)、このブロックが一番よい音響の席なのかもしれません。

 それでも響きを別にすれば田部京子の高度なテクニック、しっとりとした情感は素晴らしく、斜め後ろから指の動きもじっくり観賞できたので楽しめました。何といってもモーツァルトのピアノ協奏曲の名曲です。それだけでも十分です。

 実演に接するとホール、席の特徴もあり、いろんな発見、驚きがあって面白いです。29番はこれまでで最高の音楽体験の一つになりました。これからも紀尾井シンフォニエッタ東京も含めていろいろとコンサートを聴いてみようと思います。


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