瀬尾まいこ「幸福な食卓」

              

 「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」

 印象的なフレーズに惹かれて読み始めた一冊です。「幸福な朝食」「バイブル」「救世主」「プレゼントの効用」の四編からなる連作小説。
 数年前に自殺未遂を起こし生活をリセットしようとする父、歯車が狂ってしまい家を出た母、秀才だったのに大学進学を止めて農業を始めた兄、そして普通の中学生の私(佐和子)。家族の再生と佐和子の成長物語風。

 そもそも寓話的な物語なので仕方ありませんが、登場人物の設定、描き方が個人的には大味に感じて、これが長編だったら途中で投げていました。少し我慢して読み進めます。見た目は家族崩壊しているのですが、お父さんは家族を温かく見守り、お母さんは食事を作りに家に通う。家族として普通に成り立っている不思議な均衡があります。希望学の玄田有史氏のいう「ウィーク・タイズ」(弱いつながり)を思い出しました。

 ほんわかした雰囲気の中にリアルな言葉のやり取りがあり最後は違和感なくこの物語に浸れました。恋愛と悲しみがあり、最後は答えが提示されるわけではありませんが明るい温かさの残る作品です。クリスマスプレゼントの中身は・・・何か感動が待っているのでは・・・これは肩透かしですっと終わります。


 非常に余白の多いストーリーなのでこれは映画を観てみたいと思いました。久しぶりにTSUTAYAのカードを作ってレンタルしました。


              

 基本的には原作に忠実に製作してあります。原作にあった大事なセリフ(シーン)が2~3無かったように思いましたが、全般的に安心して楽しく観れました。

 ここは何といっても主役の北乃きいです。初めて見ましたが佐和子のイメージにばっちり合っています。特に「は!」「え!」「何それ!」といった感嘆の声、間、表情が最高です。
 一方で違和感があったのがお母さん役の石田ゆり子です。原作のイメージでは40歳すぎ、ちょっと疲れている。石田ゆり子じゃ若いよなあと思い調べたところ、2007年当時、37歳でした。え?37歳。そんなに違っていませんでしたが、見た目が若いというか少し幼いのでここでの母さんにはどうでしょうか。
 それと直ちゃんの彼女、小林ヨシコは原作ではしっくりこない面があったのですが、この映画での描き方の方が自然に思えました。


 原作と映画と両方で楽しめた「幸福な食卓」でした。




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「英国王のスピーチ」

              

 今年のアカデミー賞を「ソーシャル・ネットワーク」と競っている話題作「英国王のスピーチ」を観に行きました。初日でもネット予約なら大丈夫、便利です。いつもの新高島の109シネマズ、15時45分の回だったのですが、放送で満席とアナウンスされていました。最近は、公開2日目の日曜日の第1回目に観ることが多いのですが、比較的ガラガラが多くて大丈夫なんだろうかと心配していました。満席は久しぶりです。

 エリザベス女王のお父さんであるジョージ6世、父の死後、兄が王に即位したのですが、例の王冠をかけた恋で辞任(軽い男とアバズレ女のどうしようもない恋愛と描かれていて驚きです)。次男の彼に王位が回ってきました。しかし、子供のころからの吃音に悩まされていて言葉がなかなか出ない。風変わりな心療士と悪戦苦闘しながら治療、トレーニングを重ねるけどなかなか成果が表れない。絶望して自暴自棄となりながらも忍耐強く訓練を続ける。そんな中、第2次世界大戦が勃発、ドイツとの開戦の日、国民に向けた世紀のスピーチが始まる・・・。

 心が震えました。感動です。こんなドラマがあったとは。「ソーシャル・ネットワーク」同様の事実ベース+αですが、内容・出来の良さが違います。まだ2月ですが今年のナンバー1確定でしょう。歴史に残る名作になると思います。重いテーマですが、ユーモアも交えて飽きさせません。

 音楽はモーツアルトのフィガロの結婚序曲、クラリネット協奏曲やベートーヴェンの交響曲第7番2楽章が劇的、効果的に使われます。重厚な映画に名曲がマッチして印象的です。


             




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「大勝軒」(日吉)

          

 今年始めての「日吉大勝軒」です。最近、ラーメン、つけ麺の有名店を比較的回っているので少し舌が肥えたかも(?)しれません。改めて大勝軒を評価します。飲み会の後ですが珍しくお腹が空いていてラーメンモードでした。

 外のカウンターに座り、「野菜せいろ」(950円)を注文します。ナイスガイな大将とチャーミングな奥様と相変わらず素敵な二人が黙々とにこやかに盛り付けていきます。記憶が定かではないのですが、つけダレの具が変わったような(以前と同じかも)、野菜の盛る場所も麺の端ではなく中央へと変化しています(以前と同じかも)。茹でたキャベツの色が鮮やかです。

 まずスープを啜ると思い出しました。正統派の醤油スープに脂が上澄みで浮き、少しとろみがある。ゆずの爽やかな香り。ああ、うまいです。キャベツがシャキシャキしっとり、ストレートの中太麺がつるっ、スープが絡む。忘れてましたが、こんなにもおいしいラーメン、つけ麺でした。

 ペロリと頂けました。これは最高のつけ麺です。



〔2011年2月27日〕

          

 未食のチャーシューせいろ(1100円)です。チャーシューがもの凄く旨いです。通常のラーメン屋のものではなく、ハムコーナーで売っている高級生ハム、高級生ベーコンの食感、味わいです。脂が上品で堪りません。前回、ここは野菜だなと思ったのですが、このチャーシューも絶品です。




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「ラーメン二郎」(横浜関内店)

          

 「ラーメン二郎」の横浜関内店。京急日の出町駅からだと10分弱のところにあります。この店は数多くある「二郎」支店の中でも屈指の人気を誇る店なんだそうです。ただ、それだけだと行かないのですが、ここで創作した(?)「汁なし」がとても美味いと読んだので行ってみることにしました。日吉「どん」などインスパイア系なら何ヵ所か経験はあるのですが、「二郎」を名乗る直系店だと最後がいつどこでかはよく覚えていません。10年は行っていないかも。本当に久しぶりです。

 コンビニで缶ビールを1本買ってから店に向かいます。17時20分で5人目でした。10席程度なので一巡目確保です。5分もしないうちに10人超したのでセーフというところです。

 開店の18時になり、店の前で麺の量を伝えてから、券売機でお札を購入します。注文は「小ぶた(普通の麺量にチャーシュー5枚)」(750円)+「汁なし」(80円)+「ニラキムチ」(80円)+「粉チーズ」(100円)、計1,010円です。

 明日は平日なのでニンニクは回避して、野菜マシだけお願いしました。にんにく野菜マシや全マシのお客さんが多いです。

 野菜マシでも盛り上がっている訳ではなくて適量でした。まずは評判のチャーシューから。トロトロで脂っぽくて最高です。そして底にある汁を麺に絡めつつ、粉チーズや卵などを溶かして少しずつ食べていきます。麺は少し平たい縮れ系で食感いいです。最後は全てをよーく混ぜ合わせていただきました。ワイルドで豪快な一杯。夢中になって食べられます。最後の最後に満腹で苦しくなりそうなところで食べ切りました。これは人気が分かる一杯です。満腹感強く、すぐにまた食べたくはならないと思いますが、二郎を求める時には最高の一杯かもしれません。

 18時15分に店を出て、並んでいる人数を数えると39人でした。




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「ぴょんぴょん舎」(ラゾーナ川崎店)

          

 10年近く前に珍しく盛岡に行く機会があり、盛岡名物の平壌冷麺を食べました。元祖の焼肉店「食道園」、別の有名焼肉屋、それと「ぴょんぴょん舎」の3軒でした。初めて冷麺を食べた訳ではなかったですが、腰があってさすがに美味しいなと満足したのを覚えています。

 先日、ラゾーナ川崎の1階フードコートで食事をした際、ぴょんぴょん舎が入っていることに気付き(しまった!)、次回こそと決めていました。

 「盛岡冷麺」の大盛り(特辛)+ミニ石焼ビビンバセット(1500円)です。つるつる冷麺に甘酸っぱ辛いスープが絡んでうまい。確か食道園などの老舗はかなり腰のある麺だったと記憶していますが、ぴょんぴょん舎はその点はマイルドです。久しぶりの本格冷麺に大満足。セットで付けた石焼ビビンバもコゲ、食感楽しく、おいしくいただけました。




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「大三元」(蒲田)

          

 蒲田シリーズ第3弾。水・木・金・土曜日限定のカレーを出す中華食堂です。木曜日からの3日間と紹介されていますが水曜日にも提供するようになったようです。

 蒲田駅西口の通りを歩いて暫く、セブンイレブンを右折した先にあります。優しそうで腰の低い老齢のご夫婦が迎えてくれます。メニューは張り紙に30種類近くでしょうか、常連風の先客は野菜炒め定食のようなものを食べていました。

 私はもちろんカレー。張り紙には並(700円)と小(600円)と書いてありますが、あると読んでいた大(800円)を注文しました。写真では分かりませんが深皿になっています。オタマで4掛けくらいよそってくれます。私好みのルー多めです。

 味は、見た目どおり大好きなスマトラ、中栄風の昔ながらのスパイシーなカレーなのですが・・・同じではなく、さっぱりしています。香辛料は効いていて甘辛いのですが、後味にカレー独特のコクが残りません。中華スープで中和されているんでしょうか優しい後味。これまで食べたことのないタイプですが、これはこれで美味しいです。大きめカットの肉や野菜もとろけていい感じです。心配していたご飯多過ぎではなくちょうどいいバランスで味わえました。

 それとここでは中華スープが付いています。チャーハンとのセットでお馴染み、中華食堂のあの鶏ガラスープです。うまい!このコンビ最高です。

 いいなあ、こういう店。このカレーとスープ。また来たいと思いました。



          




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サンドイッチ

          

 最近のお昼の楽しみ、サンドイッチです。

 数ヵ月前からお腹周りがいよいよ気になって、何とかしようと決心しました(ダイエットは結局、運動ではなくて食べることを減らすしかありません)。通常の昼食を止めて、基本、インスタントの雑炊・お粥シリーズ+α生活に変えました。意外と効果は早く出て、きつかったズボンもすんなりと入るようになりました。

 雑炊・お粥関係はコンビニでいろいろと売られていて気に入ったカップを順番に食べまわしています。すごく美味しいです。+αの方は、始めはコンビニのサンドイッチ、次にパン屋のバゲット類、そして最近、通勤経路の一つで早朝にお母さんが路上で売っているサンドイッチを買うようになりました。

 自分で作っているのか、どこかから仕入れているのか分からないのですが、卵サンド、ハムカツサンド(あるいはコロッケサンド)とおにぎりが並べられています。一個150円。サンドイッチを2つ手に取り、300円です。

 昼休みに食べるのですが、その美味しいこと。レタスのシャキシャキ感、卵・ハムカツの旨み、しっとりしたパンの食感が一体となって堪りません。コンビニのサンドイッチも美味しいなあと思っていたのですが、この路上サンドイッチを食べるとちょっと別物です。

 サンドイッチのカロリーはそこそこ高いので、1個が望ましいのですが、どちらかを選ぶことは今のところできていません。こんなに昼休みが楽しみになり、ダイエットどころか・・・何とかしないといけません。




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エイジア「エイジア ~時へのロマン~」(SACD SHM仕様)

            

 横浜モアーズにあるタワーレコードを散策するとSACD対応プレーヤー専用ディスクを集めたカゴがありました。「音が深い!気持ちいい!ずっと聴いていたくなる、別次元のクォリティ。」とCDの帯にあります。なんと4500円。高いなあ、でも、SACD専用だと何か基材が違うようでもしかしたら本当に異次元のサウンドなのかもしれません。
 迷いましたが一枚試してみることにしました。ディスクは1970年代~1980年代のディスク中心、その中から1982年のエイジアのデビューアルバムにしました。高校生の時、ロック好きの友人らの「エイジア聴いたか?」「すげえよな」という会話で知ったバンドです。プログレの強者が新しく作ったバンド、スケールの大きいロック・ポップ、時代を代表する一枚。

 帰って早速聴いてみました。いい音です。確かに深くてキレがいいです。ただ、「別次元」とまではいえないかなあ。2曲目の「オンリー・タイム・ウィル・テル」などのシンセサイザーの音はやはり違います。ギター、ベース、ドラム、ボーカルの音もずっとではありませんが、あれ!とハッとする箇所がいくつもあります。耳を澄ますと良さに気付きます。

 最新の録音だとどうなんでしょうか。SACDの評価にはもう少しディスクがお金が(?)必要なようです。ちょっと高かったですが素晴らしいアルバムの素晴らしい音のディスクであることには違いありません。30年近く前の(え!?30年・・・)感動が蘇りました。




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「六角家」(東白楽)

          

 白楽の「TERA COFFEE」でコーヒー豆を買った後、「仁鍛」に向かいました。今回はあつもりの大盛り、半チャーシュー追加でガッツリいこうとワクワクしていたのですが、火曜日はお休み。
 ラーメンモードだったのでおおよその場所は知っていた「六角家」です。濃厚こってりの家系は若い頃は大好きだったのですが、10年以上前にかもう中年の胃腸にはよくないと卒業を決めました。といっても日吉にあり客足の絶えない武蔵家、らすた、銀家で食べたことはあり完全に絶った訳ではないのですが本当にたまーにです。

 店内に入ると独特のニオイが鼻につんときます。店内もこってり雰囲気の家系、思い出しました。始めは気になりますが徐々に慣れます。いろいろメニューありましたが、最もオーソドックスなラーメン(650円)にWねぎを追加(+100円)しました。麺、スープなどもお好みの変化なしで標準の一杯です。

 お腹空いていたので美味しかったです。久しぶりのとんこつ醤油スープに平たい縮れ麺。トッピングのネギも予想外の大量でシャキシャキ楽しいです。違和感なくペロリといただけました。ラーメンにどうして海苔を付けるのかは相変わらず分かりませんが質の高いラーメンです。思ったよりも子皿で腹八分目というところですがこれが満腹だと、もう当分いいやという後味になるので適量だったと思います。

 食べ終わった後も暫くスープの匂いが顔の周りを漂います。ベースのとんこつが強烈です。腹ペコであれば中年でも家系ありかもしれません。




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朝吹真理子「きことわ」

             

 話題の芥川賞受賞作2編を読むために文藝春秋2011年3月号を購入しました。これまでも話題の受賞作を読もうと文藝春秋を買ったことは複数回あると思います。それでも実際に読み通せたのは3~4編でしょうか。やはり純文学というのは興味を持続させるのが難しく読み終わっても内容を覚えている作品はほとんどありません。

 ただ、選評を読むのは結構好きで、テーマが曖昧で輪郭のはっきりしない異作を女性選者が推薦して、石原慎太郎や宮本輝が反対していると面白いです。今回、石原慎太郎は西村賢太推し、宮本輝は朝吹真理子推しです。

 まず、西村賢太「苦役列車」です。面白いです。最底辺に属する貫多が肉体労働に従事しながら生活していく物語。昔なら社会の逆境に打ち克って成長する、そんな中で親しくなって信頼した友人に裏切られて社会の厳しさを知るといったストーリーなのかもしれませんが、主人公が悪童であるのは現代風でしょうか。いい悪いは置いておいて現実に存在する人間を描く。恵まれなかった家庭環境の影響を受けてそれなりに心が荒んでいるのですが悪行を重ねるということでもなく、知人との交流に喜びを見出したり、自分のことを「ぼく」と呼んだりと、不思議な違和感というか面白味があります。印象的でどこか親しみやすい人間をリアルに描いた。正直、こういう作品が芥川賞に相応しいのかどうかは分かりません。ただ、この作者の作品をまた読みたいと思わせます。そういう意味ではいい作品なんだろうと思います。

 そして、朝吹真理子「きことわ」です。過去、現在と異なる時間が交錯するプルースト的な(といっても私は「失われた時を求めて」を読み通せませんでしたが)実験的な作品です。こういう物語は好きな方なので期待して読みました。作者も冒頭に綴っていますが、「とりたてて記憶されるべきことはひとつとして起こらなかった」夏の思い出。15歳の永遠子(とわこ)と8歳の貴子(きこ)が25年後にこれまでの時間の流れを振り返り、そして再会をはたす。実際に起こったことなのか、夢なのか、曖昧模糊とした記憶と現実とのオーバーラップ。キラキラと光る箇所もあるのですが、小説として物語として魅了されたかというとそこまでではありません。特に後半は退屈で読み通すのが辛くなりました。ただ、設定や挿入する事件なりが嵌れば相当感情移入して楽しめるんだろうなという予感があります。

 確か芥川賞は作品単品の評価(直木賞は作家の筆力・将来性)なので、西村健太氏の方が賞に相応しいのかもしれませんが朝吹真理子氏の将来性、次回作に期待大です。




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「寿々喜蒲焼店」(蒲田)

          

 蒲田シリーズ第2弾。うなぎの「寿々喜(すずき)」です。蒲田駅西口、サンロードを抜けた先にあります。昔ながらの街角の蕎麦屋、食堂風です。11時30分開店と読みましたが、時間前に開けているようです。かなりの年配者のグループなど中高年を中心にあっという間に店内は埋まります。ただ、2階もあるようなのでそこそこキャパはありそうです。

 きも焼きを注文しますが今日は売り切れですとのこと。であればビールも止めて、始めから「うな重」です。1590円もありますが、ここは鰻大きめの1850円のものを頼みました。
 純和風の店内ですが、給仕のスタッフは3人とも中国人、私の隣りのテーブルのお客さんも中国人で中国語でやり取りしていました。イメージとは異なりましたが最近はどこもこういう感じなんでしょうか。それと昔ながらの食堂で仕方ないのでしょうが、タバコを吸う客が結構いるので気分はよくないです。

 10分ほどで出てきますが、パッと見、お重が小さいです。あれ?間違えたのかなぁ。店内を見回すと同じなので間違いではなさそうです。これまで食べたことのある一般的なうな重と比較すると一回り小さいです。都心の老舗で食べたら3000円以上はすると読んだのでてっきり1.5人前くらいのイメージだったのですがそれとは違います。庶民感覚では1200円の大きさ。

 味はとてもいいです。ふわっとしていてペロリといただけます。小さい、1850円?という疑念が後を曳いていましたが、食べ進めると、これは美味い、年配者にとってみればこのご飯の量は適量なのかもしれないなあと思えてきました(それでも器はもう少し大きくてもいいような・・・)。吸い物とお新香はいいとしても、ドレッシングのかかったサラダも付いていてこれはアンマッチかなぁ。

 鰻といえば登亭や鐵五郎といったサラリーマン向けのような店でしか外食したことがなくあまり比較はできませんが、ふわふわの食感は上質だなあという満足感はあります。蒲田まで態々食べに行くかどうかは若干微妙でしょうか。

 小路を挟んで店の真ん前が、以前、dancyuの鮨特集で読んで一度行きたいと思っていた場末の本格派「くま寿司」でした。今度はこちらに来てみたいと思いました。




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坂口恭平「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」

              

 リクルートの無料雑誌「R25」の本コーナーで知りました。

 無職・無一文、裸でこの都会に投げ出されたらどうなるのか・・・野垂れ死にするのか、いえ大丈夫、衣食住娯楽まで十分に生活できますよというノウハウ本。路上生活者から教わり、著者が調べた様々な手段が紹介されます。まずは福祉団体、教会などの慈善活動、そして飲食店関係の善意のお世話になって。そのままお世話になりっぱなしも可能だけど、色んなモノを拾い集めることで一定の収入を得て自立を模索することもできる。

 キーワードは都会のゴミ。生ごみを漁るということではなくて、モノ余りの現代ではある人には不要なものがある人には貴重な宝となる。「他人のほしがらないものが、きみの一番ほしいもの。こういう状態になると、じつに効率よく質の高いものを獲得することができる。」この言葉は多くの示唆に富んでいます。
 これまで知りませんでしたが、寿司屋、パン屋、個人系コンビニなどの飲食店の中には閉店後、不要となった余り物を店の前に置いて、それを必要とする人に提供するところもあるんだそうです。その御礼として、路上生活者が店の前・ゴミ置き場周辺を掃除する。こういう共存関係の中でなんとか生き延びる。

 大学で建築を学んだ著者が既存の設計、住宅に疑問を感じてドロップアウトし、理想の姿形として見出したのが路上の段ボールハウス、川沿いのビニールハウスです。これらの「家」の作り方を事細かに紹介した後で、ソローの森の生活や鴨長明の方丈記などの自給自足、掘立小屋生活の思想を引き継いだような現代日本の路上生活者のアイデア・自由を著者は称賛します。

 単なる変人によるノウハウ本かと思いきや(ここまでも十分に面白いのですが)、最後はボブ・ディランのように既存の生活・束縛からの解放、自由の獲得を呼びかけます。シンプルな本なのですが、読後、確かにこの都会の見方が変わってしまうような、大袈裟ですが過激で革命的な一冊です。



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「仁鍛」(白楽)

          

 飲み会の予定が無くなったのでぶらっと白楽に向かいました。空いていれば「仁鍛」、行列ならばココイチで鉄板カレーにしようと思っていました。

 仁鍛に着いたのは17:35頃、夜の部の開店の18:00まで30分を切っていますが誰もいません。セブンイレブンで缶ビールを買って飲みながら待つことにしました。店内は雑誌か何かの取材のようでずっと、それこそ100回以上フラッシュが光っていました。17:50にスタッフが出て来たので注文を告げます。温かい麺のつけ麺で辛味が付いてくる「辛あつ」(900円)にしました。麺の量を聞くと300gということだったので大盛り(+100円)にはしませんでした。てっきり事前に仕込んで、着席と同時に提供されるのかと思いましたが、そうではなく開店後にまとめて調理開始です。
 結局、私の次の客が来たのは17:56。開店直後で12席はほぼ埋まりましたが読んだほどの混雑ではなさそうです。

 いやぁー、滅茶苦茶うまかったです。この手のつけ麺は、日吉「あびすけ」、ラーメン博物館「頑者」で経験あるくらいですが、麺が違います。普通、つけ麺は、麺がスープと別皿なので絡む、馴染むという感じではないですが、ここのは浸けるだけでしっとりと馴染んで一体感があります。流行りの硬い麺ではなくて、かなり熱の通った柔らかめの麺なのですが、味があって(何が練り込まれているんだろう?)、最高に旨いです。スープも濃厚で万全。
 店主は「六厘舎」というつけ麺超人気店と「大勝軒」で修業したそうで、この味は「六厘舎」の系統と読みました。人気が分かります。こんな美味い麺、美味いつけ麺を食べたことありません。
 つるつると一気です。しまった、ここは大盛りでした。多くのお客さんはつけ麺(冷たい麺)大盛りでした。途中で忘れていた辛味を入れましたがそれほどの激辛ではなく、適度の刺激、スープを飲み干す邪魔にもなりませんでした。

 大大満足で食べ終わりました。これはクセになります。18:20頃に店を出ると7~8人並んでいました。この味でこの人数は少ない方だと思います。あまりの行列の近所迷惑から一旦閉店した六厘舎は1~3時間待ちとあったので、それに比べるとまだ穴場といえるのかもしれません(どの程度、味が似ているのか分かりませんが)。「仁鍛」、高水準の凄いつけ麺屋です。


 ラーメンとは関係ありませんが、店内でラジオがかかっていてマイク・タイソン・ストーリーのような特集でした。私は年次でいうと1966年組なのですが、最も誇りに思っている同期はマイク・タイソンです(次はZARDの坂井泉水)。登場時の破壊力、衝撃は忘れられません。ボディーかアッパーか一発で仕留めていました。噛ませ犬が対戦相手の時はパンチを怖がって、かすっただけで自分から倒れていました。これぞ恐怖という顔をして。
 そして、まさかまさかの東京ドームでのKO負け。我々の上の世代だと最も印象に残っているテレビ放送として浅間山荘事件などが挙がるのでしょうが、私はこのKOシーンです。驚いた。その後も復帰を信じましたがタイトルを獲ったとはいえ最後までパッとせず、ホリフィールドとの耳噛み付き事件でジ・エンドです。
 それでも史上最高のファイターを同時代で観られた感動は忘れられません。最近は分かりませんが、デラホーヤ人気などでボクシングのメインイベントは必ずしもヘビー級ではなくなってきました。世界一強いのはベビー級チャンピオンだというあの時代が懐かしいです。つけ麺を啜りながらそんなことを思い出していました。



〔2011年2月16日〕

          

 再訪です。今日もコンビニでビールを買って、近くの駐車場で飲み干してから店に向かいます。17:45で4番目でした。

 辛あつ(900円)の大盛り(+100円)に半チャーシュー(+150円)を追加です。いやあ、美味しかった。でも、ちょっと多かったかも。麺よりもチャーシューのボリュームが凄いです。スープの中に入ってきたのを一旦麺の上に避難させますが、なかなか無くなりません。この半分くらいで私にはいいです。でも満腹満足です。

 外に出ると今日は15人近くが待っていました。





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「しぶそば」(菊名駅)

          

 書店で『ご当地「駅そば」劇場』という新書を立ち読みすると、菊名駅の「しぶそば」というそば屋が紹介されていました。日本各地の駅そばの紹介の中で取り上げられていたのでどうしてこんな店がとちょっと不思議な感じがしました。

 帰宅して調べてみると、渋谷、大倉山、菊名、青葉台など東急線の駅に7店舗、東急グループの直営店みたいです。

 さっそく菊名駅で下車し、駅構内の店舗で「ピリ辛ねぎそば」(440円)の券を買いました。本にも載っていましたが、トッピングのピリ辛ねぎを目の前でスタッフがボウルで和えるので、立ち食い蕎麦=ネタは事前に大量処理済というイメージとは異なります。立ち食いカウンターもありますが、基本は二人がけのテーブル席で結構ゆったりしています。

 麺は細麺でしなやか、優しい食感です。汁は普通ですが、お目当てのピリ辛ねぎがいいアクセントになります。立ち食いそばなので、何かそれ以上ではありませんが、そばに求める十分なレベルにあります。冷たいそばも美味しそうです。神奈川県には「小諸そば」は未進出、「富士そば」も行動圏にはなく寂しい思いをしてきました。こんなに近くに手頃な立ち食いそば屋があったとは・・・軽食処として利用しようと思います。




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ザ・ドアーズ「ザ・ドアーズ(ハートに火をつけて)」

             

 村上春樹の「雑文集」という新刊が本屋に並んでいました。村上春樹のエッセイというか小文の大ファンには季節のプレゼントのようなものです。「序文・解説など」、「あいさつ・メッセージなど」といった珍しいものから、鉄板の「音楽について」など様々な70近い文章が収められています。

 その中から、まずは「音楽について」を先に読みました。一番おいしそうなところをまず食べないと落ち着いて読み進められません。82ページから186ページまで。期待をはるかに超える面白くて深みのある文章ばかりです。過去最高の充実ぶりではないでしょうか。その中の「ジム・モリソンのソウル・キッチン」に次のような記述がありました。

    僕にとってはLP『ザ・ドアーズ』を越えて戦慄的なレコードはなく、
    『ストレンジ・デイズ』を越えて美しくシンプルなレコードはなく、
    『LAウーマン』を越えて粗々しい優しさを秘めたレコードはない。

 これを読むと、ドアーズを聴きたい気持ちを止めることは出来ません。これまでドアーズというと映画「地獄の黙示録」の挿入歌「ジ・エンド」しか聴いたことはありませんでした(今回、ディスクを聴いて「ハートに火をつけて」は耳にしていました)。その他知っていることといえば、ボーカルのジム・モリソンがカリスマ的人気の中で多くの同時代のスター同様に麻薬か何かで早死にしたことくらいです。

 先日、横浜のタワーレコードに寄ったのは、ドアーズのディスクが目的でした。DのコーナーでCDの帯を眺めると、「雑文集」で取り上げられていた「ライト・マイ・ファイア(ハートに火をつけて)」と「ソウル・キッチン」はデビューアルバム『ザ・ドアーズ』に入っていました。「ジ・エンド」がラストを飾ります。まずは『ザ・ドアーズ』です。それと『ストレンジ・デイズ(まぼろしの世界)』の2枚をとりあえず購入しました。どちらも2000年代にリマスターされているようです。

 最近、たまげてばかりですが、これにはたまげました。『ザ・ドアーズ』はまさに戦慄的なアルバムです。私は史上最高の映画は「地獄の黙示録 特別完全版」(始めの上映のやつではなくて再編集して3時間20分になったバージョン)が有力候補の一作と思っているのですが、全曲、地獄の黙示録のサントラのように聴きました。ギターが前面に出る訳ではないのですが、リズムとボーカルとオルガンとでめちゃくちゃロックしています。これは凄い。ロックを聴き始めてから25年以上経ちますが、本物の最高のロックアルバムをこれまで知らなかったとは。

 心が震えた『ザ・ドアーズ』に比べると、『ストレンジ・デイズ』は心地よく聴けましたが今はまだ十分には価値を理解できないようです。ただ、シンプルな美しさは感じられます。もう少し聴き込めば分かるんだと思います。

 録音の良さ、音のキレも最高水準で全く問題ありません。いやぁ、これがロックなんだ、ロックだよなぁという驚きと溜め息です。




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