中山康樹「マイルスを聴け!」


 マイルス・デイビスの多くのディスクと切り離せないのが中山康樹氏の「マイルスを聴け!」です。マイルスの全ディスク紹介本で、1992年の初版以来、現在、第6版となっています。800ページを超える大著で、1ディスクを2ページ、名盤になると4~6ページで紹介してあるので、おそらく350枚を超える正規盤、海賊盤が紹介されています。
 
 その特徴は、「ク~ッたまらん」、「トホホ」などの感動、感想を感覚的に正直に表した表現や、「私は今はほとんど聴かないけど、初心者は一応聴いておけば」的な視点ではなく、現時点での著者の好みでズバリ評価されていて分かり易いことなどでしょうか。

 クラシック音楽の解説書では、宇野功芳氏の「クラシックの名曲・名盤」を初心者の頃は愛読していましたが、同じようなフィーリングを感じます。
 音楽の聞き方のノウハウ本なんておかしなモノですが、初心者の時はどこで感動するのか、どこが聴きどころなのかを玄人同様に早く知りたいものです。

 マイルスのディスクは、国内盤でも1500円、1900円という値段設定が多いので、ほとんど国内盤で購入するのですが、「マイルスを聴け!」があれば、付属の解説書は不要です(とりあえず今は)。


 まだまだマイルスが続いています。

・「マイルス・デイビス・オールスターズ」(1952年~1954年)
・「1958マイルス」(1958年)
・「アット・ニューポート1958」(1958年)
・「ライブ・アット・ブラックホーク」(1961年)
・「クッキン・アット・ザ・プラグド・ニッケル」(1965年)
・「1969マイルス」(1969年)
・「ブラック・ビューティー」(1970年)


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ムーティ/ウィーン国立歌劇場「モーツァルト ドン・ジョバンニ」


 1999年6月のウィーンでのライブ映像です。ムーティにはウィーンフィルとのスタジオ録音、スカラ座でのライブ映像もあるので、演奏は想像できたのですが、今、最も高水準のモーツァルト演奏を期待できるコンビの新譜、シモーネの演出もセンスのよいものと読み、手に取りました。
 マイルスの大量購入でポイントカードが満点になったこともありました。こういう値引きを使う場合は、通常控えてしまう少し高いディスクを買いたくなります。

 ドン・ジョバンニは、どうしても1987年、1988年のザルツブルク音楽祭でのカラヤンの演奏と比べてしまいます。その際のドキュメントである「カラヤン・イン・ザルツブルク」を見ると、カラヤンが名歌手達のちょっとした表情、仕草にも細かく注文を付けます、大物演出家のハンペが怒られます、取り巻きがお世辞を言いつつ寄り添います、カーテンコールでも観客ではなくカラヤンのご機嫌を伺っています、とにかく関係者全員がカラヤンを見て仕事をしています。
 それでも、それでも素晴らしい音楽でした。全編映像も観たし、海賊盤の演奏も聴きましたが、冒頭の序曲から緊張感が張りつめて吹き飛ばされそうです。分厚くてスケールの大きな迫真の音楽で、歌手も揃っています。

 晩年のカラヤンと比べると相手が悪すぎるのですが、ムーティも衒いのない純音楽的で躍動感のある演奏です。
 歌手については最近疎いので、ツェルリーナ(ゼルリーナと表記されていました。最近は変わったのでしょうか。確かに発音はゼルリーナと聞こえます。)役のキルヒシュラーガー以外は初めて聞いたのですが伸びのある力強い歌声で高水準です。

 見所はシモーネによる演出、美術です。場面ごとにヨーロッパのどこかのの時代のどこかの街の風景、服装に替わっていきます。第1幕は中世のスペイン風、フランス風、ギリシャ風など。第2幕は19世紀に入ったり、またロココ調に戻ったり、時代を超越したテーマであることを演出しているのだと思います。観ていて面白い反面、若干散漫な印象も受けました。
 少し気になったのは、ワザと厚めの化粧にしているのではないと思いますが、映像がクリアなこともあり、それぞれの歌手が実際の歳相応の顔付きに見えます。ツェルリーナも村娘というより熟女に見えます。

 全体的にはモーツァルトのめくるめく珠玉のメロディ、美しくて優しい旋律を楽しく聞かせ、見させてくれます。文句のない歌手、素晴らしい演出であれば、後は楽譜が最高級品なので3時間もあっという間です。

 ムーティには、評判のモーツァルトに加えて、ヴェルディ、ロッシーニといったイタリアものも思う存分、ウィーンで演奏してほしいものです。


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「マイルス・デイビス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ」


 まだまだマイルス・デイビスです。浴びるように聴いています。1960年代後半以降のエレクトリック、ファンクなサウンドには痺れます。こんな斬新な音楽がジャズから生まれていたなんて驚きです。以前はプリンスの音楽を革新的と思っていましたが、マイルス・デイビスを聴いた後ではプリンスも正装した優等生です。
 1950年代のジャズらしいムードのある音楽もたまりません。写真は、1956年12月の「マイルス・デイビス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ」です。ミルト・ジャクソンによる木管(ヴァイブ)、セロニアス・モンクのピアノも雰囲気十分で美しくも熱い演奏を聴かせてくれます。気分の乗らないモンクがピアノの演奏を止めるものの、マイルスが続けろとトランペットで促すというドキドキする間合いも含まれています。

 下に書いたディスク以外にも初期の10枚組のボックスも買ったので、トータルで50枚を超えたと思います。何枚持っているのかだんだん分からなくなってきました。

・「バグズ・グルーブ」(1954年)
・「マイルス・デイビス・アンド・ミルト・ジャクソン」(1955年)
・「マイルス・デイビス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ」(1956年)
・「マイルス・アヘッド」(1957年)
・「死刑台のエレベーター」(1957年)
・「アット・カーネギー・ホール」(1961年)
・「セブン・ステップス・トゥ・ヘブン」(1963年)
・「E.S.P.」(1965年)
・「マイルス・スマイル」(1966年)
・「ソーサラー」(1967年)
・「ネフェルティティ」(1967年)
・「キリマンジャロの娘」(1968年)
・「アガルタ」(1975年)
・「ミュンヘン・コンサート」(1988年)


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マイルス・デイビス「サムシン・エルス」


 まだまだマイルスが続いています。中山康樹氏の本に書いてあるとおり、これらはジャズを超越したマイルス・デイビスという音楽です。まだ表面的に音と雰囲気を楽しんでいる段階ですが、少しずつ細かいフレーズとかトランペット以外のサックス、ピアノ、ドラム、ベースの演奏の魅力も分かってきました。本当に痺れます。

 追加で聴いたディスクです。

・「ワーキン」(1956年)
・「スティーミン」(1956年)
・「クッキン」(1956年)
・「マイルストーンズ」(1958年)
・「サムシン・エルス」(1958年)
・「ポーギーとベス」(1958年)
・「ジャズ・アット・プラザ」(1958年)
・「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」(1961年)
・「ジャック・ジョンソン」(1970年)
・「ライブ・イビル」(1970年)
・「ダーク・メイガス」(1974年)

 どれも素晴らしい出来でそれぞれにマイルスの魅力、才能爆発、スリルのある作品です。
 その中で写真の「サムシン・エルス」は、まだオーソドックスなジャズ時代の演奏です。クールで落ち着きがありカッコいいです。まだジャズをよく知らなかった時代に聞きたいと思っていたのはこういうジャズでした。ファンの間でも愛聴盤として挙げられることの多い作品なんだそうです。5曲入っていてどれも凄いですが、特に1曲目の「枯葉」でのただならぬ雰囲気とムードは最高です。
 クレジットのトップにアルト・サックスのキャノンボール・アダレイとありますがこれは契約の関係でこうなったそうで実質的なトップはマイルス・デイビスです。


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内田光子「ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第30・31・32番」


 正直言って、内田光子はあまり好きではありませんでした。というよりいつも同じくモーツァルトやシューベルトを得意としているピリスと比べてしまい、少し違うなあという印象を持っていました。深み、味わいのある内田の音楽より、歌があり自然な流れのピリスの音楽のほうが好みでした。

 ピリスは以前、ベートーヴェンのソナタが3曲入っているディスクを出しましたが、こちらは表面的なメロディの美しさだけでピンとこなかったのを覚えています。
 先日、渋谷の音楽ショップでこのディスクを見つけて試聴してみました。ベートーヴェンというより30番、31番、32番であることに興味を持ちました。この曲をどう演奏するかはとても関心があります。意外といっては失礼ですが、とても耳にしっくりくる演奏だったので購入しました。

 家に帰って聴き直してみましたが素晴らしい演奏です。粒の揃った美しい音にこれぞベートーヴェンといえる静かな情熱も感じられます。もう少し陰りのある音の印象がありましたが、内田光子のピアノってこういう音だったかなあと思いながら聴いていました。
 後期ピアノソナタはメロディより音の響きが重要だと思います。早いスピードの演奏は全く合いません。落ち着きのあるゆったりとした演奏でこそ曲の魅力が生きます。
 これまで30番・31番はギレリス、32番はグルダのライブ演奏を愛聴してきました。内田の演奏はギレリスの演奏に近いものです。ただ、31番の第3楽章や32番の第2楽章後半での静かな音楽を聴いていると精神的な音楽というより、冬の日に美しい湖畔を散策しているような情景も浮かんできてこの曲の持つ多様性を改めて感じました。


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たこ焼き


 昼はたこ焼き器でたこ焼きを作りました。たこ焼きは大好きで、「銀だこ」でもよく買うのですが、以前からたこ焼き器を妻が持ってきていたのは知っていたので、今度作ってよとお願いしていたところ、ようやく実現しました。

 てっきり台所で作るものかと思っていましたが、テーブルで作って食べるものなんですね。楽しいし、メチャクチャおいしいです。我が家の定番になりそうです。

 最近は相変わらずマイルス三昧ですが、グルダのモーツァルト・ピアノソナタ集を聴いてみました。未発表の1980年に録音されたソナタ10曲とファンタジアです。まだ少し聴いただけですが、バッハの平均律やベートーヴェン、モーツァルトのピアノ協奏曲でのあの繊細で何ともいえない気品のある優雅な音楽とは違うような気がしました。決して悪くはないのですが、何というかグルダとは分からない演奏です。60年代、70年代のあの水準を求めてはいけないのかもしれませんが、ちょっとピンときませんでした。改めて聴き直したいと思います。


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