『先人の智恵、人類の全歴史を受け取る』
百年前後の一人の一生で極められるものはごくわずかです。すべてにおいて、過去の人々の歴史の上に立っての今であり、過去の人々の智恵と経験の全歴史を受け取り、極め明らかにしてきたものを糧としての今日を生きる者の成長があります。それはすべての人にとって共通する基本の育ち方、生き方、在り方であり、そのことによって、親を超え、先人を超えて人類は成長いたすものです。身近なところでは、両親祖父母から、あるいは身を置いている集団から、あるいは活字に残されている書物から過去に生きた人類の智恵をもらって、豊かに育ってゆきます。
成長の過程における真に必要とするものを、素直に誠実に謙虚に読み取り汲み取り、我が血肉とし、成長をなしてゆかねばなりません。智恵をもらい、授かるに必要な時間は与えられています。百年前後の時間を与えられているのですから、成長するに不足することはありません。一途に私のものにしてゆくことが大切です。そうして私の人生において、さらに私を生きないといけません。今を生きている人すべて、人類がかつて経験していなかった未知の世界を生きています。宇宙生命界自然界においても、同じく今までなかったところです。さらに明日は今までなかった新たな状況になり、常に刻々新た新たです。自然界においても、一人ひとりにおいても、人類全体においても常に新たなところであり、未知の今であります。人類は、生死に巡りながら歴史を重ねて今日に至り、明日また新たな人類の歴史を重ねます。
未知にして未経験の今を生きるに、過去のものをすべて手中にしておかないと、同じ間違いを繰り返し、すでに明らかになっているところを、私の大切な時間を投入して、無駄な時を過ごすことになります。先人の過ちにも気づき、悟りとし、過ちは繰り返すことなきよう育たねばなりません。過去のいのちよりもさらに成長しないといけません。成長することによって、人類は人類の不幸から救われてゆきます。一人ひとりが成長することによって人間社会はよりよい社会に成長してゆきます。
この今は過去の続きで、人類の始まりからの営みを知っているいのちの続きです。誕生した時に、人類の歴史がすべて刻み込まれています。あるいは人類を生むそれ以前のいのちの歴史が刻まれ、宇宙の全歴史が刻まれた続きの新たないのちの誕生です。過去のすべてを宿し、受け取り、引き継ぎ、一人ひとりがそれぞれの人生を同時に生きています。先人の智恵を受け取り、私は私の人生を生きなければなりません。
新しい年のはじまりに、川口由一・著「自然農にいのち宿りて」より抜粋・掲載させていただきました。八木
絵 川口由一さん
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