1953年
カスパラヴィッチは予想以上の速球の持ち主である。その速球を打者をおそれずグングン投げ込んでゆく気力、これは普通の投手ではなかなか出来ないことである。しかもこの速球に配するに角度の鋭いドロップ、それもインコースのヒザ頭に落ちるものと、横手で投げるカーヴとシンカーを持ち、さらに威力のあるシュートを配合している。これらの球がいずれも荒けずりでまだまだ伸びる余地を残しているのでよけい頼もしい。もっと良いことは六尺の長身を持ちながらストライドが非常に狭いことで、これは日本の投手たちが学んで良いことだと思う。というのはストライドが狭いとウエイトが球によく乗りカーヴも一般と鋭さを増すからである。リストの使い方も合理的でこの調子でゆけばまだまだ球速を増すことだろう。ただ一抹の不安は上手に逃げるうまさに欠けていることで、全力投球だけでは狙われる危険がなきにしもあらずだ。後半大映打者に打たれて来たのもその現れである。こうした点を今後改めてゆけば一流投手となることだろう。近鉄は有望な投手を手に入れたものだ。