1954年
野村、スタルヒン、江藤、武末、服部とそろえたユニオンズのピッチング・スタッフ、誰が一番先に「10勝ライン」に到達するか・・・とみていたのに野村以外はさっぱり振るわず、十二日現在で野村九勝、スタルヒン二勝、江藤、武末各一勝これが高橋低調の因とみられるが・・・滝良彦が四月五日に対南海戦の勝利投手になり・・多くの人を驚かせたのもつかの間、それから東映、大映、南海、毎日、東映、阪急と六連敗「使える投手は野村一人か・・・」と噂されるようになったとき、五月十二日「猛打西鉄」をおさえて勝利投手となって調子を上げその後は重要時期に再三登板、十二日までの成績は10勝13敗、真っ先に10勝ラインに到達したのだから・・・投手は使ってみねばわからない・・と監督達がなげくのもむりはない。滝は豊橋生まれで名古屋育ち、名古屋商業を出て南山大学に進み二十五年春卒業して名古屋のトヨタに就職、二十七年毎日オリオンズに加入して二軍で鍛えられ二十八年一軍のユニホームを着たが芽が出ず今春ユニオンズにトレードされ登板するようになったのがその球歴。名商では一年は内野手、二年間投手、南山大学では三年間投手(トヨタでは軟式)オリオンズで二年間、そこで今年が投手として八年目、二十四歳、十六貫五百、右投げの投手である。新人ではあるが二十四歳、長身ではあるが少し軽量というのが特徴これに対し本人は「もう一貫あまり肥りたい」といっているし「年など忘れ十八、九歳の若い人と同じ気持ちでスタートした」と告白しているが・・・一、二貫肥ったらもっと楽に球速がつくであろうと年を忘れての精進ぶりは買っていい。投法は横手投げ五に対しスリー・クォーター二ぐらいの割合、足をよくひねっているから棒球は少ない。内角をつくシュートは・・・くいこむ球と落ちる球の二種類、これで攻めておいてカーブで勝負をしているが・・落ちる角度より曲がる度合いの方が大きい。曲り方の小さいときは横手投げのスライダーとして効果をあげている。見ていると・・・割合に少ないウォーミング・アップで登板ができるのはいい習慣である・・が今後の課題は・・・スピードをつけること、コントロールの万全を計ること、そして投法と体力からいってチェンジ・オブ・ペースの会得、この三つであると思う。そのためにまず走って腰と足の力を強くすることに努めているようであるが・・・これは大いに励行することをすすめたい。そしてムダ球をへらすため「凡打率の多いコース」をさらに探究すると・・・勝星がふえると思う。
滝投手の話 僕はいま十六貫八百もう少し肥りたいと思っている。球質も重くなるだろうから・・・。しかし肥えない体質なのでこれ以上やせないように心がけています。中沢さんは僕がよく走っているといわれていますが、実際のピッチングの練習より走っているときの方が多いくらいです。登板する予定のない日はグラウンドを四周、投げる日は三周位です。だが走っているときに足が重く感じるときはすぐやめて体操を十分やっています。やはりこういう日は調子が悪いです。ウイニング・ショットはカーブシュートを投げておいてこのカーブで勝負する。しかしカーブだけだとやはりねらわれるのでいま外角へスライドして落ちる球を研究中、握り方をいろいろ変えてやっていますが、段々気に入ったのを投げられるようになった。これを早くマスターしてカーブと混用してみたい。最後に採点ですが大体これぐらいですが、球速はもう少しあると思っています。
野村、スタルヒン、江藤、武末、服部とそろえたユニオンズのピッチング・スタッフ、誰が一番先に「10勝ライン」に到達するか・・・とみていたのに野村以外はさっぱり振るわず、十二日現在で野村九勝、スタルヒン二勝、江藤、武末各一勝これが高橋低調の因とみられるが・・・滝良彦が四月五日に対南海戦の勝利投手になり・・多くの人を驚かせたのもつかの間、それから東映、大映、南海、毎日、東映、阪急と六連敗「使える投手は野村一人か・・・」と噂されるようになったとき、五月十二日「猛打西鉄」をおさえて勝利投手となって調子を上げその後は重要時期に再三登板、十二日までの成績は10勝13敗、真っ先に10勝ラインに到達したのだから・・・投手は使ってみねばわからない・・と監督達がなげくのもむりはない。滝は豊橋生まれで名古屋育ち、名古屋商業を出て南山大学に進み二十五年春卒業して名古屋のトヨタに就職、二十七年毎日オリオンズに加入して二軍で鍛えられ二十八年一軍のユニホームを着たが芽が出ず今春ユニオンズにトレードされ登板するようになったのがその球歴。名商では一年は内野手、二年間投手、南山大学では三年間投手(トヨタでは軟式)オリオンズで二年間、そこで今年が投手として八年目、二十四歳、十六貫五百、右投げの投手である。新人ではあるが二十四歳、長身ではあるが少し軽量というのが特徴これに対し本人は「もう一貫あまり肥りたい」といっているし「年など忘れ十八、九歳の若い人と同じ気持ちでスタートした」と告白しているが・・・一、二貫肥ったらもっと楽に球速がつくであろうと年を忘れての精進ぶりは買っていい。投法は横手投げ五に対しスリー・クォーター二ぐらいの割合、足をよくひねっているから棒球は少ない。内角をつくシュートは・・・くいこむ球と落ちる球の二種類、これで攻めておいてカーブで勝負をしているが・・落ちる角度より曲がる度合いの方が大きい。曲り方の小さいときは横手投げのスライダーとして効果をあげている。見ていると・・・割合に少ないウォーミング・アップで登板ができるのはいい習慣である・・が今後の課題は・・・スピードをつけること、コントロールの万全を計ること、そして投法と体力からいってチェンジ・オブ・ペースの会得、この三つであると思う。そのためにまず走って腰と足の力を強くすることに努めているようであるが・・・これは大いに励行することをすすめたい。そしてムダ球をへらすため「凡打率の多いコース」をさらに探究すると・・・勝星がふえると思う。
滝投手の話 僕はいま十六貫八百もう少し肥りたいと思っている。球質も重くなるだろうから・・・。しかし肥えない体質なのでこれ以上やせないように心がけています。中沢さんは僕がよく走っているといわれていますが、実際のピッチングの練習より走っているときの方が多いくらいです。登板する予定のない日はグラウンドを四周、投げる日は三周位です。だが走っているときに足が重く感じるときはすぐやめて体操を十分やっています。やはりこういう日は調子が悪いです。ウイニング・ショットはカーブシュートを投げておいてこのカーブで勝負する。しかしカーブだけだとやはりねらわれるのでいま外角へスライドして落ちる球を研究中、握り方をいろいろ変えてやっていますが、段々気に入ったのを投げられるようになった。これを早くマスターしてカーブと混用してみたい。最後に採点ですが大体これぐらいですが、球速はもう少しあると思っています。