EU統合という黒船の前に、立ち上がった男たちがいた。
イタリア・ピエモンテのバローロ生産者の若手たちだ。
伝統あるバローロはワインの王とも王のワインとも呼ばれていたが、フランスワインと比べるとスタイルが古く国際競争力に欠けていた。
そこで、バローロの伝統に敬意を払いつつも新技術を導入しモダンなワイン造りに務めた若き造り手たちが現れる。
彼らは後にバローロ・ボーイズと呼ばれる。
バローロ維新の旗手である。
少量生産にステンレスタンクでの温度管理、小樽熟成の導入などにより、フランス・ボルドーの高級ワインに負けない品質のものを早飲みが出来るスタイルにした。
高価格でしかも、換金が早くなるこのシステムはイタリア・ピエモンテに新しい夜明けを招いたのだった。
そのバローロ・ボーイズの一翼を担うルイジ・スカヴィーノが作るバルベーラのワイン「アゼリア・バルベーラ・ダルバ」がクアトロに登場。
「ピエモンテの夜明けぜよ」と思わせる味わいである。
イタリア・ヴェネトから届いた古くて新しいタイプのワイン。
名前は“カバローネ”。
ヴェネトで伝統的に作られるワインにアマローネというものがある。
よく熟したブドウを一粒づつ選び、時間をかけて陰干しにしたブドウからつくるワインで、味わいは特別に濃厚である。
その伝統的な手法を国際品種のカベルネ・ソーヴィニヨンで行ったワインがこのカバローネである。
カベルネとアマローネを合わせてカバローネという名前にしたのだろうか。
さらに、カベルネ男爵とも読める。
どこか遊び心を含んだワインだが、その味わいはとても真摯なものだ。
このワインの色は、ヴェニスの海のように深く暗い。
味わいは、美少年の眼差しのように官能的である。
マーラーの交響曲が似合いそうなワインである。
西暦2010年、突如侵攻してきた謎のイタリアン・クアトロによって、豊四季界隈の人類はその料理とワインに魅了されていた。
ある日、謎のブログ“ザ・クアトロ”によると、クアトロに行けば、美味しいワインが揃っていると書かれている。
豊四季界隈の人類の美味しいものを求める欲望を乗せて、宇宙戦艦“ダイワ”がクアトロ目指して旅立つ。
行く手にはクアトロの仕入れた美味しいワインが数多く待ち構えている。
その中で、今日のクアトロのおすすめワインは、イタリア・トスカーナのヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノである。
この舌を噛みそうな名前のワインは、イタリアを代表する白ワインである。
しかし、長い間このワインは品質において低迷していたのだが、近年優良な造り手によって大きく飛躍したワインである。
その優良な造り手として評価の高いフオンタレオーニのヴェルナッチャが今日からクアトロに登場している。
白桃やアカシアの花の香り、エレガントで奥の深い味わいは、クアトロの魚介料理に抜群のマリアージュを見せる。
このワインには、宇宙戦艦ダイワの乗組員も注目している。
「ハリー、あれは“名前を呼んではいけないあの肉料理”だね」
クアトロのあの肉料理は、あまりの美味しさに人々は名前を呼ぶことを恐れている。
クアトロの闇の帝王が作るあの肉料理のことだ。
今日の“名前を呼んではいけないあの肉料理”は、栃木和牛を代々引き継がれてきたソースにさらにたっぷりの赤ワインでじっくりと煮込んだものだ。
そのソースは闇の帝王の料理にふさわしい深い暗黒の色をしている。
そして、その“名前を呼んではいけないあの肉料理”を口にすると、だれもが闇の帝王に屈服することだろう。
「恐れることはないさ、たかが和牛の赤ワイン煮じゃないか」
「カタルーニャクアトロ」
ハリーは“名前を呼んではいけないあの肉料理”によく合うワインの名前を唱えるのだが、さてこの戦いの勝者は・・・。
※本日のディナーは貸切のため一般の営業を休ませていただきます。
※“名前を呼んではいけないあの肉料理”との戦いは明日から再開されます。