森を抜けると急に視界が広がる。
遠くに見える小さな町の教会は、ピンク色の影の中に立っている。
傍らの愛犬が、広い空に舞い上がる鳥たちを目で追っている。
長閑なピエモンテの春の風景だろうか。
クアトロの父のお気に入りワイン、スカリオーラの“フレーム”のエチケットに描かれた水彩画だ。
イタリアでは、トスカーナのサンジョベーゼと、アブルッツオのモンテプルチアーノとピエモンテのバルベーラというブドウが生産量のビック3だ。
そのバルベーラから作ったワインがこのフレームである。
日常用のワインを大量生産していたバルベーラもこのフレームのように、収穫量を抑え、日当たりの良い畑で丁寧につくるとこんなにも素晴らしい出来映えのワインとなる。
酸はとても穏やかで、丸みのあるタンニンはクアトロの父の好みである。
このワインを飲んで眠りにつくと、このエチケットに描かれたような穏やかな夢を見られそうである。
今朝は目覚めると、終わったと思っていたオリンピックの放送がテレビに映っていて、画面にはアイススケートの選手が三人に重なって見える。疲れているなあと思ったクアトロの父である。