大型のカマスが突如クアトロに現れた。
固唾を飲むクアトロのお客様たちだ。
「アトム、助けて」クアトロのお客様の声が届き、鉄腕アトムがやって来た。
「カマス君、みんなが君のことをとっても立派なカマスだねって褒めているよ」
「さあ、僕が助けてあげるからみんなに美味しいカマスの刺身を見せてやろうよ、君のように大きくて立派なカマス君じゃないと刺身には出来ないってお茶の水博士が云っていたよ」
アトムは心の優しい少年ロボットだった。
天馬博士に似てたまに髪の毛が立っているクアトロ・シェフにカマス君は刺身にしてもらった。
アトムのジェット噴射も借りて、炙りにしてみると絶品の味わいである。
クアトロの父のおすすめのイタリアの新酒・ノヴェッロもこのカマス君の炙りに良く合う。
こうなると、もうアトムの活躍を忘れてしまうクアトロのお客様たちである。
今日はイタリアの新酒・ノヴェッロの解禁日。
アブルッツォのファルネーゼ・ノヴェッロに続き、ヴェネトから“ゼニ/バルドリーノ・ノヴェッロ”が到着。
ゼニはカンティーナ(ワイナリー)の名前、バルドリーノはワインの生産地。
このバルドリーノのワインはDOCと云う高級ワインの格付け。
バルドリーノのワインはフレッシュさの中にしっかりとした味わいと深みを持ったワイン。
ロミオとジュリエットの舞台となったヴェローナに近接するバルドリーノ。
ロミオがジュリエットをナンパするのに使ったのはこのバルドリーノかもしれない。
ジュリエットもうっとりとするフレッシュで魅惑的なバルドリーノ・ノヴェッロ、今日から解禁です。
ジローラモなファルネーゼ・ノヴェッロも飲み比べてみよう。
ノヴェッロがクアトロに到着した。
だが、販売の解禁日は10月30日。
それまでに、味見をしておくことにした。
ノヴェッロとは、ボージョレ・ヌーヴォーのイタリア版なのだが、フランスほど規制が少ない分、当たり外れのあるもの。
クアトロが毎年使っているファルネーゼは、イタリアで一番の造り手だけあって、毎年しっかりとしたノヴェッロを造っている。
さて、わくわくしながら抜栓した。
今年は懇意なお客さまと一緒に試飲。
そのお客さまの印象は、これはジローラモだなと云う。
イタリアらしい明るさがあるが深みは無いと云う意味だろうか。
それでも、いかにもイタリアらしくていいなと云うことらしい。
クアトロの父も納得した表現だった。
ちょい悪おやじにもおすすめのファルネーゼのノヴェッロ。
30日にいよいよ解禁です。
クアトロには、美味しいチーズが色々と揃っている。
刺身で食べたいカマスも入荷している。
チーズにも魚にも合うような爽やかなのだがコクのある白ワインを飲みたい。
そこで、おすすめなのは、イタリア・アブルッツォの土着ブドウから造った「ペコリーノ」という白ワイン。
アブルッツォ州を代表するワインメーカー、ファルネーゼが造る白ワインだ。
ファルネーゼ家は、イタリア中世の名家であり、そこに嫁いだオーストリーの王女マルゲリータ妃がこの地にワイン産業を興した。
そのマルゲリータ妃の意志を継いだのが、このファルネーゼの名前を貰った造り手である。
すでに赤ワインは世界的にも高い評価を得ているが、このペコリーノと云う白ワインも旨い。
フルーティさと、しっかりとした酸が心地よく、魚介料理にもチーズにも良く合う。
また、このペコリーノとはイタリア語の羊という意味だが、羊が食べていた野生のブドウをワインにしたと云う説と、中世の基幹産業であった羊の放牧が、北から南に移動する際に、ブドウの苗も羊飼いが運んで売っていたと云う説がある。
クアトロの父は後者の羊飼いが伝えた苗に魅力を感じる。
そして、このファルネーゼの造るノヴェッロ(新酒)もいよいよ到着の季節である。