春に春に追われし花も散る
酒ひけ酒ひけ酒暮れて
どうせ俺らの行く先は
その名も豊四季番外地
魚市場で朝締めされた石カレイは、春だと云うのに肌寒い、豊四季の原野を、車に揺られクアトロへと移送されるのだった。
「おめえ、なにをやらかしたんだい」
クアトロの牢名主天然ヒラメは問いかける。
「てめえ、無口で気味悪い奴だな」
ヒラメは自分に似た野郎だとは思うが目つきが違う石カレイが気にくわない。
「不器用ですから」石カレイはめったに口を開かないのだ。
石カレイの活き締めは絶品である。クアトロにはそれぞれ名うての魚ばかりが集まっているが、その魚たちにも一目を置かれる石カレイであった。
今晩の予約で、クアトロの魚達は、大暴れするらしい。石カレイもその騒動に巻き込まれる運命であった。