蝶はふつうヒラヒラと、 螺旋を描くように飛んでいる。 大きな蝶ほど羽根をぱたぱたさせて落ち着かない。
ところが タテハ蝶の仲間 「コミスジ」は、 風まかせの優雅な飛翔である。 羽の開閉がすくない。 飛ぶというよりも、 羽は開いたまま波乗り(風乗り)名人のようで、 スーッと滑るようにやってきては、 ひそやかに降り立つのだ。
今日も
目の端を黒いものがよぎった気がして庭を見ると、 来た。 白と黒のあの蝶が。 三度旋回すると、 ここぞと見定め薔薇の木にとまった。
硝子越しだが文句はいうまい、 至近距離だ。
チャンス チャンス! カメラ カメラ…
終始無言のコミスジは、 真夏のけだるい風とともに去っていった。
全体に丸みを帯びて、 羽の厚さも薄く感じる、 モンシロチョウくらいの大きさ。
風に流されているように見えたら 間違いなくコミスジだ。