心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

「土佐日記」の風景を楽しむ

2015-04-18 23:44:51 | Weblog

 清明(せいめい)の季節。「春の暖かな日差しを受け、天地万物が清らかで生き生きとするころ」(日本の七十二候)の意味だそうですが、まさにそういう季節になってきました。我が家にいち早く春を告げたクリスマスローズも、今は切花になって最後の晴れ姿です。さて、先週に続いて今週も、週末の夜のブログ更新です。今日は勢い余って京都・伏見に足を伸ばしました。
 スキマ時間をみつけては眺めていた「土佐日記」(角川ソフィア文庫)を、数日前に読み終えました。4年間の土佐守としての任務を終えて帰京する紀貫之御一行様の55日間におよぶ船旅を、ブログよろしく日記にしたためたものです。若い頃、職場の仲間と一緒に、大阪と高知の間を車で旅したときのことを思い出しましたが、一千年前の風景と人となりが蘇ってくるようで、仕事の疲れを癒してくれました。
 雨風によっては港に何日も停泊しなければなりません。海賊が頻出する場所では夜の出航もあります。あとは神頼み。楫取(かじとり)との微妙な関係もあります。持て余すほどの時間は、老若男女、歌を詠んで暮らします。なんとも悠長な時代、一部の貴族たちの生活の一端を思わせます。
 大坂に近づくと、住吉明神、難波から淀川へ。鳥飼、枚方、石清水八幡宮、山崎、桂川と現存する地名が登場します。「人に問えば八幡の宮といふ。これを聞きて喜びて、人々拝みたてまつる。山崎の橋見ゆ。嬉しきこと限りなし」。実は、この距離感覚が曖昧だったので、きょう仕事を終えると、京都に向かいました。その途中、京阪電車で八幡市を通過するとき辺りを見渡すと、淀川の向こうの比較的近い位置に山崎の里が見えます。納得です。
 というわけで、めざしたのは、かつての伏見港でした。観光船「十石舟」に乗って、あとは想像を膨らませるだけです。
 現代の船旅は30分程度でした。なんとお酒の香りが漂います。そうです。この一帯は伏見の酒処でもあります。舟を降りると、さっそく月桂冠、黄桜.....と酒蔵巡りを始めました。黄桜の内庭では、なんと「黄桜」という品種の桜が満開でした。家内と一緒に、おいしいお酒と地ビールで喉を潤しました。
 時計をみると、4時前。まだ時間がありそうです。急ぎ宇治に向かいました。日本の中世文化の象徴ともいえる平等院にお参りです。「平家物語」では「宇治橋の死闘と宇治川渡河作戦の敢行」に登場します。源三位頼政は平知盛軍の追撃をうけて、この地で自刃したと言われています。
 角川ソフィア文庫(ビギナーズ・クラシックス日本の古典シリーズ)は、単位毎に、現代語訳、次いで原文、そして解説と続きます。だから、肩肘はらず現代のエッセーでも読んでいるような気軽さで読み進むことができます。これが初心者の古典の楽しみ方なんでしょう。きっと。
 さてさて、この時間になると、足腰が悲鳴をあげています。きょうは少し頑張り過ぎました。スマホの万歩計を見ると1万5千歩になっています。来週は仕事の予定が盛りだくさんですから、明日は大人しくしておきましょう。 

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