心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

ふだんとは違う街の風景

2015-05-23 23:12:23 | Weblog

 とあるパーティーで、4ターブの歌声を披露する不思議な歌手に出会いました。女性の声としか思えないのに、目の前で歌っているのは洒落たハットをかぶった男性です。「Time To Say Goodbye」を歌っているときでした、曲半ばでアンドレア・ボチェッリ風の声に変わりました。やっぱり男性なんだと。その歌手の名は泉大介さん。私の職場と全く関係がないとも言えない好青年でした。さっそくアマゾンでデビュー・アルバム「Hello,This is DiceK」を入手しました。「Song of love」「桜月夜~千年恋詩」「さよならの風」「影法師」「hana」.....。きょうは、そのCDを聴きながらのブログ更新です。

 さて、今週は、諸検査と人間ドックのため、1日だけお休みをいただきました。ウィークデーにお休みをいただくなんて滅多にない私にとって、いつもと違う街の風景に興味津々でした。
 ゴンタ爺さんと朝の散歩にでかけたら、公園の一画で太極拳に余念のないお年寄りの方々に出会いました。みなさん真剣な顔つきで体操をしていらっしゃいました。病院に向かう電車の中は、お客さんの層と表情が全く違いました。車窓に流れる初夏の風景とあいまって、長閑な空気が車内に漂っていました。
 検査を終えて家に帰ると、近所の公園で10名ほどの子供たちが集まってサッカーに興じています。少子化の時代、どこにこんなに多くの子供たちがいたんだろう、と思うほどでした。バーチャルなゲーム遊びに飽きたんでしょうか。昔なら当たり前の風景が珍しく思えたりもしました。
 それはそうと、人間ドックの追加メニューで受診した「脳ドック」は初体験でした。磁気と電磁波によって脳の断面画像を得るMRI検査です。発症間もない脳梗塞の病変や小さな梗塞などもはっきりと映し出せるのだそうです。
 耳栓を付けられて検査台の上に寝そべると、全身が徐々に大きな筒の中に移動していきます。すると、円筒形の周囲から、ガンガンという大きな機械音が聞こえます。まさに脳を輪切りにされていく感覚でしたが、もちろん痛みなどは全くありません。30分ほどで検査は終わりました。
 この日の締めくくりは簡単な検査結果のお話でした。詳細は後日郵送するとのことでしたが、な、なんと。またもや精密検査(癌検診)のお薦めでした。深刻な問題でもなさそうですが、今回は部位も広がり胃カメラのお薦めも。奥様も無傷ではいられませんでしたから、夫婦揃って「歳相応」、という結果にあいなりました。
 この日、検査を待つ間、私は上田秋成の「雨月物語」を再読していました。昔人が何を考え何をしたのか。かの村上春樹は「雨月物語」のモチーフを「海辺のカフカ」の中で何度か使っていますが、現実と非現実との曖昧な境界を行ったり来たりする、不思議な伝奇小説、怪奇小説です。日本や中国の古典を題材に、言えば幽霊のお話、幽霊を通じて人の深層心理に迫る、そんなお話です。
 最近、仕事の場面で「リアリティ」という言葉をよく耳にします。事実(現実)に真正面から向き合うことができないことへの警鐘、ということなんでしょう。雨月物語を読んでいると、曖昧な境界を挟んで右往左往する人間の苦悩が見て取れます。
 ひょっとしたら、日常性や常識性を越える世界を垣間見ることによって、私たちは足元をきちんと見つめ直すことができるのかもしれません。怖いもの、恐ろしいことを直視する機会がないから、いとも簡単に惨たらしい事件を起こしてしまう。
 病院という空間に身をおいて、真夏でもないのに、なぜか幽霊のお伽草子に没頭する。滑稽ですらあります。自分の立ち位置を見定めようと足掻く、もうひとりの私がいました。......非日常的な、不思議な一日を過ごしました。
 ちなみに、最後の写真は、ネギ坊主です。どこの畑に行ってもお目にかかることのできるものですが、ネギ坊主はネギ坊主なりに自己主張ができています。写真を見て思ったのですが、ひょっとして、このネギ坊主からネギの種が取れるんでしょうか???

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