心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

淀川も秋の気配

2008-09-21 10:31:41 | Weblog
 台風一過、清々しい秋の空に惹かれて、淀川堤防を歩いて職場に向かいました。遠くに大阪の都心が小さく見える、そんな地点から、ゆったりとした土曜休日の出勤でした。
 所々にススキの穂が揺れ、すでに秋の気配。爽やかな風の音と秋の虫のほか何ひとつ聞こえません。都会の喧騒が嘘のようです。ランニング中の何人かの方々と出会いました。「おはようございます」。えっ?都会のど真ん中で、朝のご挨拶?難しい顔、疲れた顔が目立つ通勤電車の中とは違います。皆さん良い汗をかきながら、それぞれのペースで走っていらっしゃる。だから自然に挨拶が口に出てくるんでしょうね。これは、湖北の山小屋に行くときと同じです。自然の風景が人の心の和ませる。躊躇うことなく心のなかから言葉が自然に出てくる。なんだか嬉しくなりました。これからも、時々、堤防を歩いて職場に向かうことにしました。暑い夏も、寒い冬も、初々しい春も、四季折々の風景を楽しむことができるのだと思います。それがビジネスの世界で疲れきった心を癒してくれるのだと思います。
 考えてみれば、人間と川の関係は奥深いものがあります。世界の文明の発祥は、いずれも大河を抜きには語れません。この淀川も湖北の水源から琵琶湖を通って大阪湾に流れています。太古からの悠久の歴史が、そこにあります。京都・大阪・兵庫の住民に多くの恵みをもたらしてきたのです。飲み水として、産業用水として、あるいは交通路として、人の生活と深く結びついてきたのではないでしょうか。私たちは、この川によって生かされているのです。
 実は、私も小さい頃から川とは縁がありました。実家のすぐ近くには、古事記にも登場する肥の河(現在は斐伊川)が流れていました。スサノウノミコトが八岐大蛇の生贄になろうとしている娘クスナダヒメを助ける話として登場する、まさにその肥の河の傍で生まれ育ちました。ちなみに、クスナダヒメの両親は、スサノオが大蛇を退治したら娘を嫁にやると約束するのですが、このシナリオ、なんだかヘンデルの歌劇「リナルド」に似ていますね。どこの国にも、似たようなお話があるものです。
 悠然と流れる大川は、温かい心で人の社会を見つめています。しかし、人間様からダム建設など望まない仕打ちを受けると、牙をむき出しにして怒ることもあります。昔人は、川とうまく付き合ってきたとよく言われます。現代の私たちも技術を過信せず、川と共生する方法を考え豊かな心を育てたいものです。私を、そんな優しい気持ちにさせるのも大川です。
 きょうは久しぶりに、松下真一作曲の交響幻想曲”淀川”のLPレコードを聴いています。演奏は大阪フィルハーモニー交響楽団、指揮は朝比奈隆です。ちょうど今、部屋中に第4楽章の合唱が響いています。

  ♪栄えあれ
  ♪歴史の証し
  ♪明日への生命たぎらせ
  ♪今日もとうとうと流れ豊かに
  ♪この水、淀の
  ♪母なる威容称え
  ♪われら、我等。おゝ淀川、 
  ♪母なる淀川。
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