今月は16冊でした。夏休みがあった割にはあまり読めなかった。アジア大会のせいかな。
直木賞受賞作品は03年の石田衣良さん以来38冊連続読破中です。
◆ファーストラヴ(島本理生)
ホワイダニットの倒叙ミステリー。しかも犯人の少女自身が自分の父殺しの動機を分かっていない。同じような過去を持つ臨床心理士・由紀がホームズ役となり、義弟の迦葉とともに犯人の心理を探る。
自傷行為を繰り返す環菜、絶対君主の父、裁判で検察側の証人に立つ母、こういう話ってだいたい虐待が絡むもので、無力な子供がいつも被害者、異常な家庭の状況が実に気持ち悪い。過去に何やらあった感じの由紀と迦葉、彼らの環菜への思い入れは似た者同士ゆえか。
それにしても、この小説のタイトル、なんで「ファーストラヴ」?
夏の文庫本フェアに挑戦中
「新潮文庫の100冊」から4冊
◆卍 (谷崎潤一郎)
レズ小説かと思っていたが、それだけではない。読み進むにつれて次第に光子の異常さが際立ってくる。口語体の大阪弁が良い。声に出して読みたい一冊。
◆心に太陽を持て (山本有三)
思いのほか良い本だった。こういう本に出会えるのも読破チャレンジの醍醐味。
昭和10年に青少年に向けて深イイ話を集めた本。満州事変、国連脱退、5.15事件、世の中の情勢が風雲急を告げていたであろうときにこういう本も出版されていたということを知り、少しほっとしました。
◆うらおもて人生録 (色川武大)
あの11PMで、巨泉さんや小島武夫さんと実戦麻雀教室をやっていた阿佐田哲也さんだ!懐かしい。
劣等生の若者向けに書いたエッセイということだが、私は劣等生でも若者でもないので、なかなかに感性が理解できない部分多々あり。でも、若い頃、麻雀と競馬にかなりはまったこともあるので、そこは理解できた。
ちょっと不良自慢が鼻につく感じはあるが、まあ、これはこれで。
◆日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (森下典子)
千利休がらみの歴史小説は結構読んでいるので歴史知識としての茶道は知っていたけど、今の茶道のことは何も知らなかった。四季を感じるDNAが日本人に組み込まれていて、それが茶道を触媒にして覚醒するような、そんな感じ?
良い本に出合えた。
カドフェス(角川文庫)からも4冊
◆ロマンス小説の七日間 (三浦しをん)
現実の恋は小説とは違う。翻訳者であるあかりさんの甘くない恋の行方、それに翻弄されて、騎士と王女様の甘いロマンス小説がほとんどエロ小説になっていく。なかなかに面白い大人のラブコメでした。
◆ヘンな論文 (サンキュータツオ)
去年のカドフェス本「学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方」も面白かったけど、今年の著者の本も負けず劣らず面白い本だ。自分も性格的にこういうところがあるので、楽しめた。
■dele2 (本多孝好)
シリーズもので続くのかなと思ったら2巻完結、PCのデータにまつわる人情もののミステリー短編連作かと思ったら、中盤以降は本筋のミステリー。圭司と祐太郎、そしてその妹の鈴の死に纏わる色々がつながる。
TVドラマはどんなラストになるのか、楽しみ。
◆高野聖 (泉鏡花)
泉鏡花の代表作といえば「高野聖」と中学の国語の授業で習ったが、実際に読んだのは初めて。
「高野聖」という題名から想像していたものとは全然違う。「義血侠血」「夜行巡査」「外科室」は当時の大衆娯楽小説かな。独特の文体が美しい。
「高野聖」「眉かくしの霊」は大衆ホラー小説。「眉かくしの霊」はストーリーが複雑で途中であらすじを追えなくなった。
ナツイチ(集英社文庫)からは2冊。
◆短編工場 (集英社文庫)
アンソロジー。奥田英朗さん、伊坂幸太郎さん、石田衣良さん、乙一さんのは既読。桜木紫乃さん、荻原浩さんのが良かった。
◆スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫 (友井羊)
「新潮文庫の100冊」に入っていた「ケーキ王子の名推理」同様、スイーツを題材にしたなんちゃってミステリーと思って読んだが、なかなかどうしてちゃんとミステリーしてた。
吃音で推理がうまく言えない引っ込み思案の女子高生というホームズ役の人物設定にも好感、日常ミステリーでありながら、主人公の淡い気持ちや成長っぷりも垣間見せてくれる、青春物語であり、成長物語でもある。爽やかな作品。
◆幼女戦記 7 Ut sementem feceris, ita metes(カルロ・ゼン)
絶体絶命の東部戦線、しかし西部戦線の回転ドア作戦同様、帝国の乾坤一擲の逆襲、鉄槌作戦が決まる。当然ターニャのサラマンダー戦闘団も要領よく大活躍、連邦を完全に駆逐する。大勝利に湧く帝国、これで停戦に持ち込めると思いきや、戦争は政治の延長、大勝利に気を良くした政治家の要求が吊り上がり、停戦交渉はとん挫、かくして戦争は続く。
確実に強くなっていく連邦軍を相手に、どうやら帝国は破滅に向けて転がり落ちることになるのだろう。ここまで長かったけど、いよいよ最終巻を残すのみ。
◆機龍警察 狼眼殺手 (月村良衛)
月村さんの「機龍警察」シリーズ5作目みたいですね。前の4作を読まずにいきなりこれを読んでしまった。警察所属の龍機兵って、ゆうきまさみさんの名作「機動警察パトレイバー」っぽい設定。どこで龍機兵が登場するのかなって思ったら最後まで出ずじまい。でも、ライザ対エンダ、楽しめました。
◆この世の春 上(宮部みゆき)
若殿・北見重興の錯乱と家臣による押し込め、錯乱の実態は多重人格、Mulitipul Personality Disorder、MPDってやつですね。MPDの原因は幼児期の虐待、それも性的暴行を含む場合が多いのだが、さて本作では?
重興の父殺害、それに過去の繰屋の惨劇、子供の神隠し、沼で発見された子供の頭蓋骨。これは「荒神」のような荒唐無稽なホラーではなく良質のミステリーの気配、下巻が楽しみ。
◆青くて痛くて脆い(住野よる)
住野さんは割と好きな作家さんで、これで5冊目。これは住野さんらしくない作品というか、浅井リョウさんっぽいというか、新境地?
友だちが少ない楓くん、でもホントの意味で孤独と向き合えているわけでもない、コミュ力不足、待ちの姿勢、独りよがりでちょっと気持ち悪い。何事もぶつかってみなければ分からないこともある。居場所は自分で見つけるもの。中盤からは一気読み。
◆心いやされる旅 坂東三十三か所めぐり 秩父三十四か所めぐり
秩父三十四か所、坂東三十三か所、西国三十三か所を合わせて日本百観音。この度秩父の三十四か所を結願した。最初はスタンプラリー感覚だったのだが、秩父の地形が織りなす奇観にブラタモリ的な興味も湧き、また静かな山寺で手を合わせ一人十句観音経を唱えると、信心も芽生えてくる。
さて、次は坂東かなと思いこの本を手に取ったのだが、、、坂東は車がないと無理かなー。
直木賞受賞作品は03年の石田衣良さん以来38冊連続読破中です。
◆ファーストラヴ(島本理生)
ホワイダニットの倒叙ミステリー。しかも犯人の少女自身が自分の父殺しの動機を分かっていない。同じような過去を持つ臨床心理士・由紀がホームズ役となり、義弟の迦葉とともに犯人の心理を探る。
自傷行為を繰り返す環菜、絶対君主の父、裁判で検察側の証人に立つ母、こういう話ってだいたい虐待が絡むもので、無力な子供がいつも被害者、異常な家庭の状況が実に気持ち悪い。過去に何やらあった感じの由紀と迦葉、彼らの環菜への思い入れは似た者同士ゆえか。
それにしても、この小説のタイトル、なんで「ファーストラヴ」?
夏の文庫本フェアに挑戦中
「新潮文庫の100冊」から4冊
◆卍 (谷崎潤一郎)
レズ小説かと思っていたが、それだけではない。読み進むにつれて次第に光子の異常さが際立ってくる。口語体の大阪弁が良い。声に出して読みたい一冊。
◆心に太陽を持て (山本有三)
思いのほか良い本だった。こういう本に出会えるのも読破チャレンジの醍醐味。
昭和10年に青少年に向けて深イイ話を集めた本。満州事変、国連脱退、5.15事件、世の中の情勢が風雲急を告げていたであろうときにこういう本も出版されていたということを知り、少しほっとしました。
◆うらおもて人生録 (色川武大)
あの11PMで、巨泉さんや小島武夫さんと実戦麻雀教室をやっていた阿佐田哲也さんだ!懐かしい。
劣等生の若者向けに書いたエッセイということだが、私は劣等生でも若者でもないので、なかなかに感性が理解できない部分多々あり。でも、若い頃、麻雀と競馬にかなりはまったこともあるので、そこは理解できた。
ちょっと不良自慢が鼻につく感じはあるが、まあ、これはこれで。
◆日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (森下典子)
千利休がらみの歴史小説は結構読んでいるので歴史知識としての茶道は知っていたけど、今の茶道のことは何も知らなかった。四季を感じるDNAが日本人に組み込まれていて、それが茶道を触媒にして覚醒するような、そんな感じ?
良い本に出合えた。
カドフェス(角川文庫)からも4冊
◆ロマンス小説の七日間 (三浦しをん)
現実の恋は小説とは違う。翻訳者であるあかりさんの甘くない恋の行方、それに翻弄されて、騎士と王女様の甘いロマンス小説がほとんどエロ小説になっていく。なかなかに面白い大人のラブコメでした。
◆ヘンな論文 (サンキュータツオ)
去年のカドフェス本「学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方」も面白かったけど、今年の著者の本も負けず劣らず面白い本だ。自分も性格的にこういうところがあるので、楽しめた。
■dele2 (本多孝好)
シリーズもので続くのかなと思ったら2巻完結、PCのデータにまつわる人情もののミステリー短編連作かと思ったら、中盤以降は本筋のミステリー。圭司と祐太郎、そしてその妹の鈴の死に纏わる色々がつながる。
TVドラマはどんなラストになるのか、楽しみ。
◆高野聖 (泉鏡花)
泉鏡花の代表作といえば「高野聖」と中学の国語の授業で習ったが、実際に読んだのは初めて。
「高野聖」という題名から想像していたものとは全然違う。「義血侠血」「夜行巡査」「外科室」は当時の大衆娯楽小説かな。独特の文体が美しい。
「高野聖」「眉かくしの霊」は大衆ホラー小説。「眉かくしの霊」はストーリーが複雑で途中であらすじを追えなくなった。
ナツイチ(集英社文庫)からは2冊。
◆短編工場 (集英社文庫)
アンソロジー。奥田英朗さん、伊坂幸太郎さん、石田衣良さん、乙一さんのは既読。桜木紫乃さん、荻原浩さんのが良かった。
◆スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫 (友井羊)
「新潮文庫の100冊」に入っていた「ケーキ王子の名推理」同様、スイーツを題材にしたなんちゃってミステリーと思って読んだが、なかなかどうしてちゃんとミステリーしてた。
吃音で推理がうまく言えない引っ込み思案の女子高生というホームズ役の人物設定にも好感、日常ミステリーでありながら、主人公の淡い気持ちや成長っぷりも垣間見せてくれる、青春物語であり、成長物語でもある。爽やかな作品。
◆幼女戦記 7 Ut sementem feceris, ita metes(カルロ・ゼン)
絶体絶命の東部戦線、しかし西部戦線の回転ドア作戦同様、帝国の乾坤一擲の逆襲、鉄槌作戦が決まる。当然ターニャのサラマンダー戦闘団も要領よく大活躍、連邦を完全に駆逐する。大勝利に湧く帝国、これで停戦に持ち込めると思いきや、戦争は政治の延長、大勝利に気を良くした政治家の要求が吊り上がり、停戦交渉はとん挫、かくして戦争は続く。
確実に強くなっていく連邦軍を相手に、どうやら帝国は破滅に向けて転がり落ちることになるのだろう。ここまで長かったけど、いよいよ最終巻を残すのみ。
◆機龍警察 狼眼殺手 (月村良衛)
月村さんの「機龍警察」シリーズ5作目みたいですね。前の4作を読まずにいきなりこれを読んでしまった。警察所属の龍機兵って、ゆうきまさみさんの名作「機動警察パトレイバー」っぽい設定。どこで龍機兵が登場するのかなって思ったら最後まで出ずじまい。でも、ライザ対エンダ、楽しめました。
◆この世の春 上(宮部みゆき)
若殿・北見重興の錯乱と家臣による押し込め、錯乱の実態は多重人格、Mulitipul Personality Disorder、MPDってやつですね。MPDの原因は幼児期の虐待、それも性的暴行を含む場合が多いのだが、さて本作では?
重興の父殺害、それに過去の繰屋の惨劇、子供の神隠し、沼で発見された子供の頭蓋骨。これは「荒神」のような荒唐無稽なホラーではなく良質のミステリーの気配、下巻が楽しみ。
◆青くて痛くて脆い(住野よる)
住野さんは割と好きな作家さんで、これで5冊目。これは住野さんらしくない作品というか、浅井リョウさんっぽいというか、新境地?
友だちが少ない楓くん、でもホントの意味で孤独と向き合えているわけでもない、コミュ力不足、待ちの姿勢、独りよがりでちょっと気持ち悪い。何事もぶつかってみなければ分からないこともある。居場所は自分で見つけるもの。中盤からは一気読み。
◆心いやされる旅 坂東三十三か所めぐり 秩父三十四か所めぐり
秩父三十四か所、坂東三十三か所、西国三十三か所を合わせて日本百観音。この度秩父の三十四か所を結願した。最初はスタンプラリー感覚だったのだが、秩父の地形が織りなす奇観にブラタモリ的な興味も湧き、また静かな山寺で手を合わせ一人十句観音経を唱えると、信心も芽生えてくる。
さて、次は坂東かなと思いこの本を手に取ったのだが、、、坂東は車がないと無理かなー。
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