ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

21年9月に読んだ本

2021-10-08 22:30:39 | 読書
9月は16冊読みました。まあまあ、でしょうか。
まずは話題作を中心に現代小説を8冊。

◆テスカトリポカ(佐藤 究)
メキシコの麻薬密売組織のボス・バルミロは、兄弟家族を対抗組織に殺され、命からがらの逃亡の果てに日本に流れつく。一方メキシコ人密入国者の母と暴力団員の父を殺害したコシモは少年院に。臓器売買で力をつけ、親族を殺した組織への復讐を目論むバルミロと少年院を出所したが行く当てのないコシモの人生が交錯する。
残虐なクライム小説だが、さらにその背後にあるアステカの神への信仰がなんとも不気味、いけにえとか、同じ土着の宗教でも、牧歌的な日本神道と何とも違うことか。読む者を圧倒する第165回直木賞受賞作。

◆推し、燃ゆ宇佐見りん
家族と微妙な関係の高校生・あかりの心のよりどころ(彼女曰く「背骨」)は、アイドルグループの推しメン。ブログで推しを語る時のみ雄弁な彼女に普通の友達もいない。
「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」 その気持ちは、推しが問題を起こしても、揺らぐどころか一層推すことにのめり込んでいく。家族からも半ば見放されたところで、その推しが突然の芸能界引退、自らの背骨を失ったあかり、それでも人生は続き、彼女は生きてゆかねばならない。どうなっちゃうんだろうね、彼女。第164回芥川賞受賞作品。

◆とわの庭(小川 糸)
盲目の少女・とわの、少し変だけど幸せな母との二人暮らしが、とわの10歳の誕生日を機に壊れていく。虐待とネグレクト、やがて母はとわをゴミ屋敷に放置したまま失踪する。餓死の危機をギリギリ回避したとわが、周囲に助けられ、前に進む物語。小川糸さんの文章はいつもほんわりとあたたかい。来年の本屋大賞にノミネートされそうな作品。

◆正欲(朝井リョウ)
正しい欲ってなに? 面白いけど後味の悪い小説でした(良い意味で)。
最近LGBTが突出して市民権を得た感があるけど、私は女性好なので全く理解できない。ロリコン・ペドフェリアや水フェチも理解できないという点ではLGBTと五十歩百歩。理解できないけど、いずれも非難、批判する気はない。ペドだって、犯罪を犯さなければいいじゃない。田吉みたいに異質なものに対し攻撃的な日本人って多いですよね。やだやだ。

◆月まで三キロ (伊与原 新)
「月まで三キロ」「星六花」「アンモナイトの探し方」「天王寺ハイエイタス」「エイリアンの食堂」「山を刻む」、自分の人生が不本意と思っていたり、悩みを抱えていたり、そういった人たちが新しい一歩を踏み出す短編集。
「星六花」「エイリアンの食堂」でほのかに恋愛が薫るのも良い。本屋大賞にノミネートされた「八月の銀の雪」同様、理科系作家の地学や物理や天文学の味付けが興味をそそります。

◆ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人(東野 圭吾)
田舎町で中学校教師が殺害される。犯人は被害者の娘・真世のの元同級生の誰か。
東野さんの作品としては「危険なビーナス」っぽく少しコミカル。ホームズ役の武史叔父、ワトソン役の真世の人物造形も軽めで、シリーズ化はちょっと無理かな。
でも、どうしてこんなに読みやすくて、作品に引き込まれてしまうのだろう。東野さんは、やはりうまい。

◆invert 城塚翡翠倒叙集(相沢 沙呼)
一昨年の「このミス」1位作品の続編。前作は城塚翡翠の存在そのものがミステリーの鍵、正体が割れてしまった状態で書くには、なるほどこの倒叙ミステリーが最適。
前作にもまして魅力的なヒロインにページを繰る手が止まらない。「雲上の晴れ間」「泡沫の審判」「信用ならない目撃者」の中編が3編。「信用、、」のどんでん返しには思わずうならされた。

◆グッバイ・イエロー・ブリック・ロード 東京バンドワゴン(小路 幸也)
年に1冊、おなじみの東京バンドワゴンのシリーズ、これでもう何作目なのかよくわからなくなりました。
今回のはスピンアウトものなのかな。舞台は英国、従来の季節毎の短編ではなくミステリー仕立ての長編。こういうのも読みやすくてよい。

◆ゴーストハント7 扉を開けて (小野 不由美)
6巻の強敵との戦いで傷ついた一行が帰り道で立ち寄ったキャンプ場。ひょんなことで巻き込まれた廃校の幽霊とついに明かされるナルのプライベートな秘密、1,2巻を読んで3,4,5巻を飛ばして6,7巻を読んでしまったので、、、それでもこの最終巻での伏線回収と大団円はある程度理解できました。このシリーズ、小野さんの描く怪奇は迫力があるし、麻衣のキャラが立ってて面白い、機会を見て残りも読んでみます。

歴史、時代小説を2作。
◆高家表裏譚3 結盟 (上田 秀人)
「忠臣蔵」の敵役・吉良上野介の、家督相続前の若き日のお話もこれで3冊目。高家筆頭の吉良が否応なしに朝廷と幕府の駆け引きに巻き込まれていく。
徳川幕府は、元々軍隊だった武士階級をそのまま行政官僚としたため、人数的にも能力的にも非効率な組織とならざるを得なかった。武家の礼儀作法を担当する高家は、その非効率さを体現したようなお役目。岡目八目、メタ視点でで観れば滑稽なルールばかりだが、本人たちは大真面目。
この話がどうなってあの「討ち入り」に続くのか、興味津々です。

◆つくもがみ笑います (畠中 恵)
新キャラの阿久徳屋と春夜登場で、しゃばけ同様長期シリーズものを目論んでいるようですが、さて。


ラノベが3冊
◆りゅうおうのおしごと! 15 (白鳥士郎)
前巻で八一のハーレムからあいと銀子が消え、天衣が登場、と思ったら、そこはさすがにツンデレお嬢様、八一への対応が一味違います。でも、なんといっても今回は供御飯さん、脇役が一気に準主役級。それにしても八一はもったいないというか、意気地がないというか。東京もジンジンとたまよんの元であいが覚醒の予感。もう15巻だけどずるずる続いている感じは全然しない。「りゅうおうのおしごと」はいつも熱い。

◆死物語 上・下 (西尾 維新)
「りゅうおうのおしごと」とは真逆に、ずるずる感満載なのが物語シリーズ。ファイナルシーズンの「終物語」で伏線も回収され、実質的に終わったのですが、その後も「続・終物語」からオフシーズン、モンスターシーズンとだらだら続いてます。ファンなので徐々にテンションを下げながらも全作読んでいるのですが、それもいよいよ終了?
上巻は、忍の盟友デストピアがアンチ吸血鬼ウィルスにやられて死にかけているという、COVID19が蔓延する今の世相を強く反映したお話。いつもの調子でまとめてはいるものの、ラストに向けての盛り上がりは感じません。
下巻は、上巻とはほとんどつながりはなく、語り部は千石撫子。すわラスボス対決?思わせて、全裸の撫子の無人島サバイバル生活が延々と続き、バトルシーンは皆無。
これでようやく終わりなのかな。途中からひたぎさんと委員長がほとんど出てこなくなってしまったのが残念。最後はこんなものかと思わなくもありませんが、まあ、とにかく祝!完結。西尾維新さん、長い間お疲れ様でした。それともまだ続いたりするのかな???

◆逆説の日本史: 明治激闘編 日露戦争と日比谷焼打の謎 (26)
日露戦争とポーツマス条約と日比谷焼き討ち事件、日本近代史のヤマ場。
「坂の上の雲」が小説として素晴らしすぎて、その印象に引きずられていたのですが、二〇三高地を取らなくとも旅順湾への艦砲射撃が可能だったとは!日清戦争の戦病死の多さは知っていたが日露戦争も、陸軍は進歩ない。桂・ハリマン協定は初耳!これが日米関係悪化の元凶か。
戦争も条約もまさに薄氷の勝利、それを知らない国民をマスコミが煽って国を間違った方向に導く。欧米に比べ極めて被害が少ない日本のコロナ対策への批判を煽るマスコミ、今も昔も体質が変わらない。

◆土地の記憶から読み解く早稲田: 江戸・東京のなかの小宇宙(ローザ・カーロリ)
この辺りはお散歩、ジョギングコースなので良く知っているつもりだったが、こうして読んでみると、知らないこともあったなあ。とりあえず今日、穴八幡から水神社、甘泉園を訪問、源兵衛が緊急事態宣言終了まで休業だって。
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