ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

19年4月に読んだ本

2019-05-01 00:53:55 | 読書
18冊読みました。
まずは第160回芥川賞受賞の2冊、芥川賞はとりあえず読むことにしている。
◆ 1R1分34秒(町屋 良平)
プロボクサーといっても、チャンピオンなどとは無縁の無名の4回戦ボーイの、ストイックにボクサーであろうとする内面が綴られている。ひらがなが多いモノローグがリアル。
ガールフレンドと別れるシーンの自分勝手さや主人公とウメキチとのややホモっぽい関係性がいかにも男の世界という感じでなかなかに良い。
◆ニムロッド(上田 岳弘)
社命でビットコインを採掘する僕の恋人は、中絶のトラウマを抱えた外資系証券会社のエリート、そしてたった一人の友人は小説家への夢に挫折したニムロッドこと荷室仁。3人が織りなす、いかにも芥川賞っぽいよくわからない世界。

直木賞は候補作までも全部読むことにしている。2冊読んで、これで第160回直木賞候補作5冊読了。
◆ベルリンは晴れているか (深緑 野分)
前作の「戦場のコックたち」に続き、直木賞候補、本屋大賞ノミネート、「このミス」をはじめミステリー本ランキングにも軒並み名を連ねた、期待感の高かった作品。
日本人にはなじみの薄い第二次世界大戦下の欧州。戦争のみならず極端な人種差別政策と民族浄化というジェノサイドが行われた世界。終戦直後のアウグステとカフカの小さな冒険の合間に、悲惨な現実が見え隠れする。ミステリー要素も前作より自然に織り込まれている。
◆童の神(今村 翔吾)
源依光と四天王、鬼退治で有名な平安のヒーロー登場、ただし悪役で。京人から鬼とされたまつろわぬ者、いつしか酒呑童子と呼ばれるようになった桜暁丸の波乱万丈の生きざまを描いた疾走感溢れる歴史エンタメ。こういうの、結構好き。

ミステリーを3冊。
◆火のないところに煙は(芦沢 央)
芦沢さんの短編連作は「バック・ステージ」「許されようとは思いません」に続いて3冊目。ホラー要素の強い作品で、気に入った。著者自らが語り部となったリアルっぽい作風、余韻を残した終わり方で、読み終わった後で考えるとぞわぞわっとする。
◆ドッペルゲンガーの銃(倉知 淳)
昨年末の「本格ミステリ」7位作品。本格ミステリってことで、トリック以外の人物設定とか、動機とか、そういうのは二の次、ワトソン役は女子高生、ホームズ役はなんと残念なイケメン刑事の兄に憑依したご先祖様。これはこれで、楽しくていいんじゃない?
◆魔眼の匣の殺人(今村 昌弘)
「屍人荘の殺人」の今村昌弘さんの待望のシリーズ2作目。クローズドサークルの連続殺人事件は前作と一緒だが、今回は仕掛けが普通というか、前作みたいにぶっ飛んではいなかった。未来予知が絶対に当たることを前提にしたオカルト系本格ミステリー、謎解きは圧巻だけど、やはり前作は超えてないかな。

テレ東の「美の巨人たち」で若冲とその作品の由来を知り、都美術館の「奇想の系譜」展で作品も見た。その若冲がらみで2冊。
◆若冲 (澤田 瞳子)
京都の大店の後継ぎとして生まれ乍ら、早々に稼業からリタイヤ、絵師としての立身出世の野心も、金や生活の心配もなく、ただただ自ら思うままに絵筆をふるい続け、独自の「旦那芸」を極めた男。
澤田さんの歴史小説は「火定」「腐れ梅」に続いて3冊目だが、彼女の創作はいつも大胆不敵、若冲に自死した妻がおり、市川君圭をその弟として彼と深い因縁を持つ画家に仕立て、その特異な人生の説明とした。まさに澤田さんの若冲。
◆異能の画家 伊藤若冲 (狩野 博幸,森村 泰昌)
TV「美の巨人たち」や澤田さんの小説に出てきた絵のおさらいに。

◆小説「映画 ドラえもん のび太の月面探査記」(辻村 深月)
アニメ好きの直木賞作家、辻村深月さんがドラえもんの劇場版の脚本を書いた。世代じゃないので正直ドラえもんについてはそれほど詳しくないのだが、でも、さすが辻村さん、SFに友情、しっかりドラえもんである。脚本家によるノベライズといってもそこは本職、少年少女向け小説としても楽しめた。

◆イシイカナコが笑うなら(額賀 澪)
そりゃ、生きていれば、あの時こうすればよかったとか、後悔はたくさんある。でも、人生をリセットして過去に戻ってやり直したいかと言われれば、そうでもない。失敗や後悔を積み重ね、それでもここまで歩いてきた今の自分が唯一無二、かけがえのない存在と思えるから。菅野くん、お父さんだって同じ思いを繰り返してきたんだよ、と、お父さん世代の自分はそう思う。そう思えるきっかけを与えるイシイカナコ、良いお話でした。

◆ビブリア古書堂の事件手帖スピンオフ こぐちさんと僕のビブリアファイト部活動日誌 (峰守 ひろかず)
「ビブリア古書堂の事件手帖」のスピンアウトものと思って手に取ったが、著者が違うし、完全にラノベだし、ミステリー要素ゼロだし、、ビブリアファイト=推薦図書のプレゼン合戦は楽しめたが、お勧め本にあの「とある魔法の禁書目録」まで出てくるとは。紹介されていたゲド戦記も読んでみた。
◆影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)(アーシュラ・ル・グウィン)
ジブリのアニメは見たが、全然違う話でした。むしろSTAR WARSのダースベイダーや終物語の阿良々木くんとくらやみの戦いが連想され、真名や魔法の概念などこの手のファンタジーの原型を読むような感じ。
時代的にはSTAR WARSやハリポタの少し前でしょうか、そんなに大昔の小説ではないけど、これはこれで古典。ところで著者、女性だったんですね。初めて知りました。

◆黒猫王子の喫茶店 お客様は猫様です (高橋 由太)
昨年のカドフェス本ということで読んでみた。川越を舞台にしたのは良いが、それ以外は微妙。

◆FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣(ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド)
12問中正解1問、完全にチンパンジー以下。初めてスリランカに行ったのが89年、中国の田舎やフィリピンの離島に行ったのが95年、当時は外人と見るや子供たちが金をくれと群がってきた。先入観で判断してしまいがちだが、人類は進歩しており、世界は確実に良くなっている。確りと事実を把握して判断をせねばならない。

◆『迷路の外には何がある?』 ――『チーズはどこへ消えた?』その後の物語(スペンサー・ジョンソン)
多分もう10年以上前に、前作の「チーズはどこへ消えた」を、英語の勉強も兼ねて原書で読んだ。随分話題になった本の続編だけど、間空きすぎ!?前作を読んでいないと分かり難い内容だけど、覚えている人あまりいないのではないか?シンプルな寓話、箴言集で、内容は当たり前のことだけど、行動を起こせるように背中を押してくれる本と思う。
著者、亡くなられたのですね、ご冥福をお祈りします。

◆紀州のドン・ファン殺害 「真犯人」の正体 ゴーストライターが見た全真相 (吉田 隆)
カミングアウトしたゴーストライターの手による本人像は気まぐれで嘘つきで自己顕示欲も強い。これではあまり人に好かれず、友達も少なかったろう。金の力で分不相応な女と次々と関係を持っていることを公言することで、金目当ての、犯罪も辞さない人間を自分の周囲に集め、あげくは殺されてしまう。真相は未だ藪の中だが、55歳年下の妻が完全に金目当ての結婚であったことも白日の下にさらされ、哀れな最期だなー。

◆陰謀の日本中世史 (呉座 勇一)
呉座さんの本は評判になった「応仁の乱」に次いで2冊目。本能寺の変や関ケ原はともかく、保元・平治の乱から応仁の乱までは、基本的な歴史知識が浅いのでラインマーカーを使って暗記もののように読んだ。
数々の陰謀説よりもはるかにリアルな歴史がここにあった。結局歴史の勝者はメタ視点で陰謀を張り巡らす稀代の天才ではなく、気を見るに敏な行動家で運にも恵まれた人、なんだろうなー。
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