5月は12冊読みました。
ページ数が多い本が多かったのと、小説を書いて「カクヨム」に投稿してたりしたから、冊数は少な目。
昨年のカドフェス本の未読があと2冊になった。6月末に今年のカドフェス本が発表になるので、「それまでにあと2冊読むぞ!」と思ったら、もう今年のラインナップがWEBサイトで発表になっていた。わーん。(´;ω;`)
カドフェス本で読んだのが5冊
◆臨床真理 (柚月裕子)
ハラハラ、ドキドキで一気読み。デビュー作とは思えない安定した面白さ。タブーっぽい知的障碍者の性の問題に触れたり、生々しい描写もあったりして、柚月さんらしい作品。
◆遠い唇 (北村薫)
短編が7編、どれもあまりに短いのだけど、内容はバラエティに富んでいて味わい深い。
一つ上げるとしたらやはり表題作の「遠い唇」かな。暗号自体は古典的なあの「黄金虫」のようなものだけど、なぜあの時に気づかなかったのか、謎解き以外の部分がこんなに短い話なのに切なく心に迫る。
この中では唯一ちょっと長めのビスケットは普通にダイイングメッセージのミステリーだけど、名探偵・巫弓彦がすごい。
◆論語と算盤 (渋沢栄一)
渋沢栄一大正4年の著書、漢語が難しくて読むのに時間がかかったが、著者の慧眼に感心。
江戸幕府の衰退の大きな要因の一つが商業の蔑視と貨幣経済への転換の遅れであり、その原因が朱子学(儒教)と考えていたが、渋沢は、儒教は商業を否定していないという。
その正誤はともかく、官僚となった元武士が商業を低く見て殖産振興に本気で取り組まず、理念や公共心を教育されなかった商人が私利私欲に走っていたのが、渋沢の時代の実態だったのだろう。
企業理念が声高に言われるようになったのはここ20年、ようやく栄一の望む世の中になったかな。
◆ディズニー ミッキーマウスに学ぶ決断する勇気 ニーチェの強く生きる方法
ニーチェって、読んだことないのだけど、勝手にすごく難しいことを言う哲学者だと思って敬遠してました。ホントにこんなステレオタイプの人生訓を言う人だったの?内容自体はごもっともで、特にFutureの部分の教訓は激しく同意、読む本と言うよりも、手元に置いて、必要になったときにすぐ手に取りたい本。
◆高家表裏譚1 跡継 /高家表裏譚2 密使 (上田秀人)
若き日の吉良上野介の話。カドフェス対象は1巻だけだったのだけど、面白くて2巻も続けて読んでしまった。
江戸幕府は基本的には軍事政権。平和になり、武官をそのまま行政官僚に起用したため、適材不適所、不文律やしきたりだらけでかくも非効率な組織ができあがってしまった。
高コストで支給される扶持では足りないから賄賂を取る。高家の存在意義はその武家社会の行政組織の非効率さにあるってことかな。枠組みの中での、真剣そのものの小競り合いはメタ視点が持てる我々の目には滑稽に映るが、渦中の彼らはそうせざるを得ない。
物語はもう1巻ある。この流れがどう赤穂浪士の討ち入りにつながっていくのか、人形浄瑠璃で悪役に仕立てられた吉良上野介の目線での事件の顛末が楽しみ。
◆雪冤(大門剛明)
死刑判決を受けた青年の父親と顧問弁護士は、冤罪を訴える息子を信じ、救済のための活動を続ける。その父と被害者遺族に真犯人が名乗りを上げるが、冤罪の決めてがないまま死刑は執行されてしまう。
死刑制度に疑問を投げかける重い話だが、エンタメとしても面白く、ハラハラドキドキで読み進めた。ただし、最後のどんでん返しは、そこまで複雑にしなくともと思った。
◆オルタネート(加藤シゲアキ)
オルタネートって、高校生専用のSNSアプリなんだけど、決してそれが主役じゃない。オルタネートから距離を置く蓉(いるる)が料理部長としてワンポーションという学校対抗の食戟に挑む話がメインで、それにオルタネート信奉者の恋に夢見る凪津(なづ)と高校を中退してオルタネートをやれない尚史が絡む。
オルタネートってツールとしては便利だけどそれもよしあしで、結局大事なのは直接のコミュ力だよねって感じの青春真っ只中の群像劇。変な名前が多かったのには閉口、男か女かもなかなか分からない登場人物が多かったし。
◆ビジュアル 進化の記録: ダーウィンたちの見た世界
本屋大賞第二位の「お探し物は図書館まで」の作中で、太った司書さん(名前忘れた)が悩める人にお勧めしていた本のうちの一冊。高くて(6500円!)でかいので、図書館で借りた。写真が美しい、生物の進化にまつわる目からうろこの事実も。余談ですが、自然淘汰って、natural selectionの訳語なんですね。簡単な英語が難しい日本語に訳されて、とっつきにくく学問のハードルが上がっているように思えるのですが。
◆愛されなくても別に(武田綾乃)
「響け!ユーフォニアム」の武田さんですよね。こういうのも書くんですね。
最近、この手の、毒親がいる主人公の小説を読むことが多くて、それに比べると自分の両親はまともで(母親に少しだけ木村母の要素が入っている気もしますが)、金銭的にも苦労したことはないので、自分はそれだけで実に幸せなんだなーと実感してます。江永にとって宮田は救いだったのですね。真逆の性格、似た境遇の二人のピッタリはまった関係に乾杯!
◆黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続(宮部みゆき)
聞き手が過去に因縁を持ったおちかから富次郎に変って、変調三島屋百物語も、やや雰囲気が変わったような。構成は今までと同じ短編が4編と思いきや、最後の表題作が300ページを超す長編で、ちょっとバランスが、、、ここまで長くする必要があったのか、それなら一つだけ切り出して長編にしたら、とちょっと思ってしまいました。内容は安定して面白かった。
◆麦本三歩の好きなもの 第二集(住野よる)
前作では今一つ好きになれない、職場にこんな人が入ってきたらいやだなぁと思って読んでいたが、今回はそれと比べると、少し成長したのかな。戦力にはあまりならないまでも、職場のムードメーカーの役割はしてくれてるなと思った。
◆この気持ちもいつか忘れる(住野よる)
序盤のカヤとチカの部分は、カヤに共感できなくて冗長に感じ、なんじゃこの話!?と思ったが、後半は「そうきたか」と一気読みでした。確かに高校時代は、人生今がピークと思っていたけど、今は、この歳になっても、もう一花さかせたいと思っている。去る者は日日に疎し、人間の脳ってよくできたもので、楽しかった記憶は風化しても、それが楽しかったということは覚えている。日々しっかり生きて、死ぬまで人生を積み重ねていこう。カヤは、それを気づかせてくれる、よい人に出会えたね。それにしても、チカってなんだったんだろう。
ページ数が多い本が多かったのと、小説を書いて「カクヨム」に投稿してたりしたから、冊数は少な目。
昨年のカドフェス本の未読があと2冊になった。6月末に今年のカドフェス本が発表になるので、「それまでにあと2冊読むぞ!」と思ったら、もう今年のラインナップがWEBサイトで発表になっていた。わーん。(´;ω;`)
カドフェス本で読んだのが5冊
◆臨床真理 (柚月裕子)
ハラハラ、ドキドキで一気読み。デビュー作とは思えない安定した面白さ。タブーっぽい知的障碍者の性の問題に触れたり、生々しい描写もあったりして、柚月さんらしい作品。
◆遠い唇 (北村薫)
短編が7編、どれもあまりに短いのだけど、内容はバラエティに富んでいて味わい深い。
一つ上げるとしたらやはり表題作の「遠い唇」かな。暗号自体は古典的なあの「黄金虫」のようなものだけど、なぜあの時に気づかなかったのか、謎解き以外の部分がこんなに短い話なのに切なく心に迫る。
この中では唯一ちょっと長めのビスケットは普通にダイイングメッセージのミステリーだけど、名探偵・巫弓彦がすごい。
◆論語と算盤 (渋沢栄一)
渋沢栄一大正4年の著書、漢語が難しくて読むのに時間がかかったが、著者の慧眼に感心。
江戸幕府の衰退の大きな要因の一つが商業の蔑視と貨幣経済への転換の遅れであり、その原因が朱子学(儒教)と考えていたが、渋沢は、儒教は商業を否定していないという。
その正誤はともかく、官僚となった元武士が商業を低く見て殖産振興に本気で取り組まず、理念や公共心を教育されなかった商人が私利私欲に走っていたのが、渋沢の時代の実態だったのだろう。
企業理念が声高に言われるようになったのはここ20年、ようやく栄一の望む世の中になったかな。
◆ディズニー ミッキーマウスに学ぶ決断する勇気 ニーチェの強く生きる方法
ニーチェって、読んだことないのだけど、勝手にすごく難しいことを言う哲学者だと思って敬遠してました。ホントにこんなステレオタイプの人生訓を言う人だったの?内容自体はごもっともで、特にFutureの部分の教訓は激しく同意、読む本と言うよりも、手元に置いて、必要になったときにすぐ手に取りたい本。
◆高家表裏譚1 跡継 /高家表裏譚2 密使 (上田秀人)
若き日の吉良上野介の話。カドフェス対象は1巻だけだったのだけど、面白くて2巻も続けて読んでしまった。
江戸幕府は基本的には軍事政権。平和になり、武官をそのまま行政官僚に起用したため、適材不適所、不文律やしきたりだらけでかくも非効率な組織ができあがってしまった。
高コストで支給される扶持では足りないから賄賂を取る。高家の存在意義はその武家社会の行政組織の非効率さにあるってことかな。枠組みの中での、真剣そのものの小競り合いはメタ視点が持てる我々の目には滑稽に映るが、渦中の彼らはそうせざるを得ない。
物語はもう1巻ある。この流れがどう赤穂浪士の討ち入りにつながっていくのか、人形浄瑠璃で悪役に仕立てられた吉良上野介の目線での事件の顛末が楽しみ。
◆雪冤(大門剛明)
死刑判決を受けた青年の父親と顧問弁護士は、冤罪を訴える息子を信じ、救済のための活動を続ける。その父と被害者遺族に真犯人が名乗りを上げるが、冤罪の決めてがないまま死刑は執行されてしまう。
死刑制度に疑問を投げかける重い話だが、エンタメとしても面白く、ハラハラドキドキで読み進めた。ただし、最後のどんでん返しは、そこまで複雑にしなくともと思った。
◆オルタネート(加藤シゲアキ)
オルタネートって、高校生専用のSNSアプリなんだけど、決してそれが主役じゃない。オルタネートから距離を置く蓉(いるる)が料理部長としてワンポーションという学校対抗の食戟に挑む話がメインで、それにオルタネート信奉者の恋に夢見る凪津(なづ)と高校を中退してオルタネートをやれない尚史が絡む。
オルタネートってツールとしては便利だけどそれもよしあしで、結局大事なのは直接のコミュ力だよねって感じの青春真っ只中の群像劇。変な名前が多かったのには閉口、男か女かもなかなか分からない登場人物が多かったし。
◆ビジュアル 進化の記録: ダーウィンたちの見た世界
本屋大賞第二位の「お探し物は図書館まで」の作中で、太った司書さん(名前忘れた)が悩める人にお勧めしていた本のうちの一冊。高くて(6500円!)でかいので、図書館で借りた。写真が美しい、生物の進化にまつわる目からうろこの事実も。余談ですが、自然淘汰って、natural selectionの訳語なんですね。簡単な英語が難しい日本語に訳されて、とっつきにくく学問のハードルが上がっているように思えるのですが。
◆愛されなくても別に(武田綾乃)
「響け!ユーフォニアム」の武田さんですよね。こういうのも書くんですね。
最近、この手の、毒親がいる主人公の小説を読むことが多くて、それに比べると自分の両親はまともで(母親に少しだけ木村母の要素が入っている気もしますが)、金銭的にも苦労したことはないので、自分はそれだけで実に幸せなんだなーと実感してます。江永にとって宮田は救いだったのですね。真逆の性格、似た境遇の二人のピッタリはまった関係に乾杯!
◆黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続(宮部みゆき)
聞き手が過去に因縁を持ったおちかから富次郎に変って、変調三島屋百物語も、やや雰囲気が変わったような。構成は今までと同じ短編が4編と思いきや、最後の表題作が300ページを超す長編で、ちょっとバランスが、、、ここまで長くする必要があったのか、それなら一つだけ切り出して長編にしたら、とちょっと思ってしまいました。内容は安定して面白かった。
◆麦本三歩の好きなもの 第二集(住野よる)
前作では今一つ好きになれない、職場にこんな人が入ってきたらいやだなぁと思って読んでいたが、今回はそれと比べると、少し成長したのかな。戦力にはあまりならないまでも、職場のムードメーカーの役割はしてくれてるなと思った。
◆この気持ちもいつか忘れる(住野よる)
序盤のカヤとチカの部分は、カヤに共感できなくて冗長に感じ、なんじゃこの話!?と思ったが、後半は「そうきたか」と一気読みでした。確かに高校時代は、人生今がピークと思っていたけど、今は、この歳になっても、もう一花さかせたいと思っている。去る者は日日に疎し、人間の脳ってよくできたもので、楽しかった記憶は風化しても、それが楽しかったということは覚えている。日々しっかり生きて、死ぬまで人生を積み重ねていこう。カヤは、それを気づかせてくれる、よい人に出会えたね。それにしても、チカってなんだったんだろう。
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