1月は13冊読みました。
単行本を7冊。
◆大鞠家殺人事件(芦辺 拓)
昨年末の本格ミステリ6位、でもこのミスでは30位にも入らなかった作品。さぞかしマニアックな作品?と思って読み始めたが、割と面白くすらすら読めました。
昨年の「鶴屋南北の殺人」同様、舞台設定が特殊、大阪商人の文化が色濃く残る明治末期から大戦までの船場の、化粧品で富を築いた大鞠家で起こる奇怪な連続殺人事件。因習に捕らわれた家に、長男の嫁となった軍人の娘・美禰子が新風を吹き込む。
ミステリー以外の部分もなかなかに楽しめる快作。
◆忌名の如き贄るもの(三津田 信三)
著者のこのシリーズは11作目だそうだが、私は「碆霊の如き祀るもの」に続き2作目。横溝正史的な民間伝承ホラー・ミステリー、戦後間もない時代に古い因習が残る田舎町で起きた事件をミステリー作家の刀城幻耶が解決するシリーズもの。
民間伝承の謎解きは興味深いが、事件の謎解きはどんでん返しに次ぐどんでん返しで、結構本格ミステリーっぽい。それだけに動機が??そんなことで殺人までするかなと言う気もしないでもない。2作しか読んでないので決めつけは良くないので、シリースの中で評価の高いものから読んでみます。
◆きのうのオレンジ(藤岡 陽子)
著者の作品は「手のひらの音符」に続き2作目。期待にたがわず、優しい物語。
冒頭がいきなりがん告知を受ける主人公の遼賀、早くも立った死亡フラグに読み進めるのが辛くもあったが、素朴で暖かい家族の物語に慰められた。
遼賀って、目立たないけどいい奴ですねー。だから短いけど良い人生を送れた。遼賀の倍ほどもある自分の人生はどうなのか、自問自答してしまいます。
◆ワンダフル・ライフ(:丸山 正樹)
「無力の王」「真昼の月」「不肖の子」「仮面の恋」、障碍者に纏わる4つのストーリーがパラレルに進む。これ、最後に全部つながるんだよね。パソコン通信とか、古い感じのする話もあったので、時代が違うのかなと思ったのですが、なるほど、こういう風につながるのか。重度の障碍者って普段あまり接することがないから、知らなかったことも多くて、でもタイトル通りに最後にちょっとだけ希望が見える、良いお話でした。
◆十の輪をくぐる(辻堂 ゆめ)
十の輪は二度の東京五輪を表しているのだろう。母の万津子と多動症の息子の泰介、そしてその娘の萌子の二度の東京五輪前夜の物語。私は先の五輪の記憶がかすかにあり、中学から大学までバレー部で、つい先日春高バレーをTV観戦したばかりなので、思いっきり琴線に触れる話で、一気読みでした。
語られることのなかった母の人生と心を揺さぶるスポーツの力。私も、バレーと出会わなければ今の自分はなかった、心からバレーボールに感謝している。
◆ひきなみ(千早 茜)
葉(よう)は引っ越し先の、男尊女卑等昔ながらの因習の残った何もない島で真衣に出会う。周囲から孤立しても屈しない真衣と友達になった葉、しかし真衣は脱獄犯とともに葉の前から姿を消す。裏切られた?それでも葉の心から消えることのなかった真衣、大人になってからの真衣との再会に、葉も心の殻を破る、友情と成長の物語。
そういえば受刑者が瀬戸内海の島に逃げていた事件、あったよね。それにしても葉の上司、こいいう奴は根絶しないとね。
◆ほたるいしマジカルランド(寺地 はるな)
「夜が暗いとは限らない」と同様大阪府の場末の、今度は遊園地が舞台。有名な鼠のキャラのテーマパークとはかけ離れた環境の遊園地で働く人たちの短編連作お仕事小説。
お話毎に代る主人公は、性格が災いしてあまり良い人生を送れていない人たちばかり。でも一歩踏み出すことで取り巻く景色が変わり始める。軽く読めたけど、その分内容も「夜が暗いとは、」に比べて少し軽いかな。
木村幹のことも最後まで良く分からなくて、あれ、もう終わっちゃったのと言う感じで、なんとなくもやもやした読後感。
文庫本を6冊。
◆アキラとあきら (池井戸潤)
池井戸さんの小説は基本的に勧善懲悪なので、結末を心配せずに読み進められ、いつも一気読みになる。
悪役として描かれることの多い銀行が今回は善玉。紙の稟議書を回覧してハンコを押すって、ちょっと時代を感じた。
金貸しとバンカーの違い、早逝した高校時代のクラスメートが銀行員だったのですが「仕事で一番大切なものは」と質問した時に、彼が「志(こころざし)」と答えたのを思い出した。
◆君にささやかな奇蹟を (宇山圭祐・角川文庫)
実在したサンタ家のダメ当主と絵本作家になる夢に挫折した女性のラブコメ。斜めに軽く読んだ。
サンタ家が日本に実在してたという設定はおもしろい。楽屋落ちの絵本、サンタさんのためにだけ作ったと言うならわかるけど、これを本屋さんに平積みしても全く売れないだろうな。
◆長く高い壁 The Great Wall (浅田 次郎)
1902年生まれで102歳で亡くなった私の祖父はこの戦争に出征していた。30代半ばで父も生まれていたのでロートル兵だったのだろう。北京に駐屯しその後転進、前線での戦闘は未経験だが、駐屯地にたくさんスパイ容疑の捕虜がいたとか、村人と思って手を振ったら八路軍(共匪)で急に撃ってきたとか、この本の通りの戦争を祖父は経験したのだなあと思った。
浅田さんの戦争ミステリー、軍隊と言う組織の論理が優先し自浄作用の働かない組織、悪人の群れの中では良心を持った人が異分子、悪人となってしまう。人は見かけ通りではない。怖い。
◆蒲公英草紙 常野物語 (恩田 陸)
常野物語シリーズは初読み、大東亜戦争で消滅した古き良き日本の農村の風景、でしょうかね。
地域のリーダーとしての槙村家の強い使命感、その在り方が、尊敬と信頼、聡子と峰子の友情を通じて描かれている。
◆今夜、世界からこの恋が消えても (:一条 岬・メディアワークス文庫)
ああ、これは忘却探偵の今日子さんと同じやつだなと、ライトノベル級だなと、一人突っ込みしながら読みました。ベタな小説でした。でも、こういうシンプルにベタなやつって自分の心に響く。不本意ながらちょっと感動してしまった。
◆文字禍・牛人 (中島 敦・角川文庫)
この小説を通じて、改めて中島敦のことを知った。なるほど、すごい知識人だったのですね。
牛人、怖い。
単行本を7冊。
◆大鞠家殺人事件(芦辺 拓)
昨年末の本格ミステリ6位、でもこのミスでは30位にも入らなかった作品。さぞかしマニアックな作品?と思って読み始めたが、割と面白くすらすら読めました。
昨年の「鶴屋南北の殺人」同様、舞台設定が特殊、大阪商人の文化が色濃く残る明治末期から大戦までの船場の、化粧品で富を築いた大鞠家で起こる奇怪な連続殺人事件。因習に捕らわれた家に、長男の嫁となった軍人の娘・美禰子が新風を吹き込む。
ミステリー以外の部分もなかなかに楽しめる快作。
◆忌名の如き贄るもの(三津田 信三)
著者のこのシリーズは11作目だそうだが、私は「碆霊の如き祀るもの」に続き2作目。横溝正史的な民間伝承ホラー・ミステリー、戦後間もない時代に古い因習が残る田舎町で起きた事件をミステリー作家の刀城幻耶が解決するシリーズもの。
民間伝承の謎解きは興味深いが、事件の謎解きはどんでん返しに次ぐどんでん返しで、結構本格ミステリーっぽい。それだけに動機が??そんなことで殺人までするかなと言う気もしないでもない。2作しか読んでないので決めつけは良くないので、シリースの中で評価の高いものから読んでみます。
◆きのうのオレンジ(藤岡 陽子)
著者の作品は「手のひらの音符」に続き2作目。期待にたがわず、優しい物語。
冒頭がいきなりがん告知を受ける主人公の遼賀、早くも立った死亡フラグに読み進めるのが辛くもあったが、素朴で暖かい家族の物語に慰められた。
遼賀って、目立たないけどいい奴ですねー。だから短いけど良い人生を送れた。遼賀の倍ほどもある自分の人生はどうなのか、自問自答してしまいます。
◆ワンダフル・ライフ(:丸山 正樹)
「無力の王」「真昼の月」「不肖の子」「仮面の恋」、障碍者に纏わる4つのストーリーがパラレルに進む。これ、最後に全部つながるんだよね。パソコン通信とか、古い感じのする話もあったので、時代が違うのかなと思ったのですが、なるほど、こういう風につながるのか。重度の障碍者って普段あまり接することがないから、知らなかったことも多くて、でもタイトル通りに最後にちょっとだけ希望が見える、良いお話でした。
◆十の輪をくぐる(辻堂 ゆめ)
十の輪は二度の東京五輪を表しているのだろう。母の万津子と多動症の息子の泰介、そしてその娘の萌子の二度の東京五輪前夜の物語。私は先の五輪の記憶がかすかにあり、中学から大学までバレー部で、つい先日春高バレーをTV観戦したばかりなので、思いっきり琴線に触れる話で、一気読みでした。
語られることのなかった母の人生と心を揺さぶるスポーツの力。私も、バレーと出会わなければ今の自分はなかった、心からバレーボールに感謝している。
◆ひきなみ(千早 茜)
葉(よう)は引っ越し先の、男尊女卑等昔ながらの因習の残った何もない島で真衣に出会う。周囲から孤立しても屈しない真衣と友達になった葉、しかし真衣は脱獄犯とともに葉の前から姿を消す。裏切られた?それでも葉の心から消えることのなかった真衣、大人になってからの真衣との再会に、葉も心の殻を破る、友情と成長の物語。
そういえば受刑者が瀬戸内海の島に逃げていた事件、あったよね。それにしても葉の上司、こいいう奴は根絶しないとね。
◆ほたるいしマジカルランド(寺地 はるな)
「夜が暗いとは限らない」と同様大阪府の場末の、今度は遊園地が舞台。有名な鼠のキャラのテーマパークとはかけ離れた環境の遊園地で働く人たちの短編連作お仕事小説。
お話毎に代る主人公は、性格が災いしてあまり良い人生を送れていない人たちばかり。でも一歩踏み出すことで取り巻く景色が変わり始める。軽く読めたけど、その分内容も「夜が暗いとは、」に比べて少し軽いかな。
木村幹のことも最後まで良く分からなくて、あれ、もう終わっちゃったのと言う感じで、なんとなくもやもやした読後感。
文庫本を6冊。
◆アキラとあきら (池井戸潤)
池井戸さんの小説は基本的に勧善懲悪なので、結末を心配せずに読み進められ、いつも一気読みになる。
悪役として描かれることの多い銀行が今回は善玉。紙の稟議書を回覧してハンコを押すって、ちょっと時代を感じた。
金貸しとバンカーの違い、早逝した高校時代のクラスメートが銀行員だったのですが「仕事で一番大切なものは」と質問した時に、彼が「志(こころざし)」と答えたのを思い出した。
◆君にささやかな奇蹟を (宇山圭祐・角川文庫)
実在したサンタ家のダメ当主と絵本作家になる夢に挫折した女性のラブコメ。斜めに軽く読んだ。
サンタ家が日本に実在してたという設定はおもしろい。楽屋落ちの絵本、サンタさんのためにだけ作ったと言うならわかるけど、これを本屋さんに平積みしても全く売れないだろうな。
◆長く高い壁 The Great Wall (浅田 次郎)
1902年生まれで102歳で亡くなった私の祖父はこの戦争に出征していた。30代半ばで父も生まれていたのでロートル兵だったのだろう。北京に駐屯しその後転進、前線での戦闘は未経験だが、駐屯地にたくさんスパイ容疑の捕虜がいたとか、村人と思って手を振ったら八路軍(共匪)で急に撃ってきたとか、この本の通りの戦争を祖父は経験したのだなあと思った。
浅田さんの戦争ミステリー、軍隊と言う組織の論理が優先し自浄作用の働かない組織、悪人の群れの中では良心を持った人が異分子、悪人となってしまう。人は見かけ通りではない。怖い。
◆蒲公英草紙 常野物語 (恩田 陸)
常野物語シリーズは初読み、大東亜戦争で消滅した古き良き日本の農村の風景、でしょうかね。
地域のリーダーとしての槙村家の強い使命感、その在り方が、尊敬と信頼、聡子と峰子の友情を通じて描かれている。
◆今夜、世界からこの恋が消えても (:一条 岬・メディアワークス文庫)
ああ、これは忘却探偵の今日子さんと同じやつだなと、ライトノベル級だなと、一人突っ込みしながら読みました。ベタな小説でした。でも、こういうシンプルにベタなやつって自分の心に響く。不本意ながらちょっと感動してしまった。
◆文字禍・牛人 (中島 敦・角川文庫)
この小説を通じて、改めて中島敦のことを知った。なるほど、すごい知識人だったのですね。
牛人、怖い。
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