ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

22年2月に読んだ本

2022-03-09 16:10:28 | 読書
14冊読みました。

昨年の「カドフェス」「ナツイチ」の積読本を崩し中で、あわせて9冊。

◆砂の家 (堂場瞬一・角川文庫)
母と妹を殺害し殺人犯として収監された父、幼くして家族を失い、殺人犯の息子として辛酸をなめた兄弟、兄の健人は大手外食会社に就職、弟の正俊は道を踏み外し兄を逆恨みする。砂の家=崩壊してしまった家族か。

やがて健人の会社に脅迫メールが届く。解決役となった健人は、恩人である社長と会社を救うため、最初は徐々に、そしてやがて決定的に道を踏み外す。普通であれば警察に届ける事案であろうものを、健人の判断を誤らせたものも、やはり彼を息子のように思ってくれる社長に対する気持ちなのだろう。

家族とは、を問う、良質のサスペンス・ミステリー。

◆幻夏 (太田愛・角川文庫)
警察官の相馬は、少年時代に幼馴染の兄弟がいた。その兄弟の父は殺人犯として刑期を全うしたが、それが冤罪と判明したその日に階段から落ちて死亡、そして兄が行方不明になった。相馬は現実に発生した誘拐事件を捜査するうちに、それがこの幼き日の事件と関係していることに気づく。

冤罪がテーマのミステリーと言ってしまえばそれまでなんだけど、「叩き割り」と「恨みません調書」、これ、本当にあることなんでしょうか。この国の司法の在り方を問う一作。

◆ヘッドライン (今野敏・集英社文庫)
TV報道番組の遊軍記者・布施を主人公にしたスクープ・シリーズ第2弾、ちなみに初回作の「スクープ」は未読。

今野さんは「隠蔽捜査」シリーズのファン、こちらは常に正論のキャリア官僚警察官が主人公(カッコいい)なのだが、本作はそれと正反対、なにやら緩い、それれでいてスクープをとってしまう布施。「報道マンが正義を振りかざしたら終わりですよ」は言いえて妙。

◆あなたが愛した記憶 (誉田哲也・集英社文庫)
古くは東野圭吾さんの「秘密」とか、今やっているTVドラマの「妻、小学生になる」とか、ラノベでも転生ものは多々あれど、これはなんとも救われない話。

ハッピーエンドを期待したのだが、栄治が現場に踏み込むも手遅れ、さらには赤ちゃんが女の子と知ってほっとしたのもつかの間、、、すべての覚悟を以てやり遂げた栄治に支援者があったのがわずかな救い。なんとも言えない読後感の小説でした。

◆本性 (伊岡瞬・角川文庫)
第4章までは魔性の女っぷりを発揮するサトウミサキだが、被害者がクズなのであまり同情する気持ちになれない。第5章からガラッと展開が変わる。偏屈な安井と若手の宮下、二人の刑事が一見今までと関係のなさそうな焼死事件を追うのだが、捜査が進むにつれここまでの全ての登場人物がつながり始める。安井はサトウミサキに誘導されるままに事件の真相に近づいていく。

伊岡さん渾身のサスペンスミステリー。

■玩具修理者 (小林 泰三・角川ホラー文庫)
表題作の「玩具修理者」はホラー短編として面白く読めた。

「酔歩する人」は並行世界の存在を前提にしたタイム・リープものの中編なのだが、途中で良く分からなくなった。登場人物は小竹田(しのだ)と血沼(ちぬ)、一人称で始まるこの話の私は血沼、酒場であった見ず知らずの男は小竹田、ここからほぼ全編が小竹田の長いモノローグなのだけど、どっちがどっちだか、読み手の判断能力を喪失させるような、不可思議な話。

◆恋に至る病 (斜線堂有紀・メディアワークス文庫)
寄河景が、宮嶺をも手玉に取っていた稀代のサイコパスなのか、それとも景にとって宮嶺は特別だったのか?きっちりした種明かしがないので読後感はややもやもやですが、まあ、前者なのだろう。仮にそうなら、景の罪を被ろうとした宮嶺にしてみればなんとも救われない、絶対に、意地でも信じたくない話。

うわーって感じの読後感。

◆小説 シライサン (乙一・角川文庫)
シライサン=白井さんかと思ったら、、、

鈴木光司さんの「リング」同様の、伝染し拡散する呪いのお話だけど、ネットを通じてってのが今風。乙一さん、こういうのも書くんですね。小野不由美さんばりに怖かった。

溝呂木の推理通り石森ミブ=呪いを創作した蔵の女とすれば、本物のミブは呪いで死んでいる?間宮冬美の旧姓が石森って、もしかして冬美は蔵の女の!?とすると冬美が呪いを広めたのは意図的!?じゃ冬美の家にいた親戚の娘って!?とか、種明かしなしのミステリー要素にちょっと読後感がもやもや。

◆なぎさ (山本文緒・角川文庫)
途中までは登場人物すべてに共感できなくて、、、特に冬乃、ウェットで感情的でめんどくさい女。一方の川崎くん、うさんくさいモリさんのワークとレイバーの話もそこだけは同感、こういう目標も志も持てずに惰性で人生を消費している若者に嫌悪感を感じる。菫も相当に変だったけど、この毒親たちが歪んだ原因だったのか。親に対して、子供ってのは無力だよね。最後はなんとか前向きにまとまって良かった。この小説で唯一の良心は所さんだね。こういう年寄りになりたい。

話題の単行本を4冊。

◆透明な螺旋(東野圭吾)
ガリレオシリーズの新作長編ということで、かなり期待して読み始めた。

湯川がその卓越した頭脳で謎を解く、いつものパターンではない。特にややこしいトリックもなく、プロローグ等伏線も分かりやすく、ミステリーの醍醐味は薄目。湯川の出生の秘密とか、今回はヒューマンドラマでした。でも、容疑者Xと違って園香さんは沈黙なんですね。

それにしても、加賀恭一郎も家庭の問題があったが、湯川さん、あなたもですか。

◆彼岸花が咲く島(李琴峰)
行った竹富島の情景が頭に浮かんだ。外界から遮断され、祭政一致でノロと呼ばれる女性によって統治されている島に流れ着いた記憶喪失の少女が、自らもノロになる道を選ぶ。

やがて明らかになる島の歴史、ファンタジー色満載の第165回芥川賞受賞作。

◆ヒトコブラクダ層ぜっと(上)(万城目学)
久々の万城目ワールド、前作の「バベル九朔」は分かりにくかったが、本作はどうやら単純明快に不可思議なお話。万城目ワールドもグレードアップして、メソポタミアですか。下巻を読むのが楽しみ。


◆天使と悪魔のシネマ(小野寺史宜)

天使と悪魔が登場する、死に纏わる短めの短編が10作、最後の「中津巧の余生」でいくつかの話がつながる。小野寺さんらしい、ほんわかと優しいファンタジー。



旅行ガイドとして、、

◆五木寛之の金沢さんぽ

金沢旅行の行きの新幹線の中で予習に読んだ。
くらがり坂や文芸館など、読まなければ素通りしていただろう。この本とブラタモリのおかげで観光地以外の金沢を堪能することができた。読んでよかった。
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