ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

10月に読んだ本(2015年)

2015-11-01 21:21:10 | 読書
夏からの課題であった「新潮文庫の100冊」を10月5日に読了したので、それ以降はリラックスして好きな本を読んでます。って、なんか本末転倒のような気もしますが。

新潮文庫のラスト2冊は、
◆コールドゲーム (荻原浩)
いじめに対する怨念、復讐劇。犯人は容易に割れたが、その行方がつかめない。
クラスメートは団結して見えない敵に立ち向かう。って、でも、被害者は元加害者で、元加害者であることが明るみに出るのが嫌というのが、警察に通報しなかった一因なんだから、北中防衛隊に友情はあっても正義はないよね。
面白かったけどとことん救いのない話でした。

◆直観を磨くもの: 小林秀雄対話集
「直感」と「直観」、理屈抜きに真実にたどり着いてしまう力でしょうか。湯川秀樹さんとの対話が難しくてよく分からなかった。美術や歴史、芝居や職人の話はなるほどねと思わせるものがありましたが、音楽の話は屁理屈っぽく感じました。いずれにしても、西洋哲学などとは異質な考え方ですよね。

角川文庫の「カドフェス」から5冊。

◆球体の蛇 (道尾秀介)
面白かった。
サチの言動は謎ですね。そのサチに面影が似ている智子とサチの妹のナオの二人がついた嘘。
人の死が絡むシリアスな局面で、罪悪感を抱く相手を思いやっての嘘と自分勝手な嘘が交錯し、人間関係も変質する。星の王子様のウワバミのように、外からはわからぬように嘘を飲み込むこと、その相手を許容することも、生きるためには必要ってこと?
話は変わりますが、道尾さんの小説のタイトルって、動物が入っているものが多いですね。

◆図書館危機 図書館戦争シリーズ3 (有川浩)
映画「図書館戦争The Last Mission」を見た勢いで再読。
映画は小説と別物だけど、まあ、だいたいこの「図書館危機」の後半部分が下敷きでした。改めて読んでみて、「言いたいことが言える世の中って大切だなあ」と。

◆金曜のバカ (越谷オサム)
「金曜のバカ」「星とミルクティー」「この町」「僕の愉しみ 彼女のたしなみ」「ゴンとナナ」の学園青春恋愛もの短編5作。
この頃の恋愛の悩みって、歳とってから考えるとホントバカみたいで、他人事のように振り返ることができる、かけがえのない日々の愛すべきバカ話。特に「この町」の雅樹はお気の毒でした。

◆百年法 (上)(下) (山田宗樹)
HAVI、不老技術が実用化され、法により健康でも100年で安楽死しなければならなくなった世界。
平等化した社会がもたらした停滞と不安、それに対する改革もまたマンネリ、陳腐化するということか。
前半はやや冗長な感じがしたが、中盤以降は急ピッチで話が展開していく。
不死化というありえない設定から死生観を問う作品かと思ったら、もちろんそういう部分もあったけど、基本的にはダイナミックなサスペンスものでした。
決断をしない政治家、衆愚に落ちた民主主義、憂国の士、救世主出現かと思えば、オーウェルの動物農場を思わせるような指導者の変節、でも、新たな危機を前に、指導者の覚悟、そして国民の選択は。。。
救いようのない現実を前に自虐、冷笑、虚無、そんなことしている場合じゃない。自分はこのラスト、好きだなー。

集英社文庫の「ナツイチ」から3冊。
◆天に堕ちる (唯川恵)
10人の女性(一人はネカマですが)を描く、バッドエンドの短編集。
でも、汐里はバッドエンドでもないかな、守られるのではなく、守るものができると強くなる。かっこいいです。
和美と光はありがちなお話。妙子も結末は読めましたが、笑っちゃいます。

◆何もかも憂鬱な夜に (中村文則)
死刑制度と真摯に向き合う意欲作ということだが、そっちよりも親にネグレクトされて育った人の心の闇が主題でしょうか、刑務官になった「僕」も相当にヤバい。やっていることはほとんど犯罪者です。
無自覚で投げやりな犯罪者、怖いです。
こういう心理が全く分からないのは、自分が恵まれているからでしょうか。幸運にも「あの人」に出会えた「僕」は山下を救えるのか。
なんかよくわからない話でした。

◆少女は卒業しない (朝井リョウ)
廃校になる高校の卒業式の一日の少女7人の想いを綴った短編連作。
「エンドロールが始まる」の作田さんは先生への想い。「屋上は青」の孝子は別の道を目指して退学した尚輝への想い。「在校生代表」の亜弓は大胆にも送辞で田所先輩に告白、「寺田の足の甲はキャベツ」の後藤は付き合っていた寺田に別れを告げ、「四拍子をもう一度」の神田は、卒業ライブで森崎にアカペラで歌わせ、「二人の背景」のあすかは正道くんと言葉を交わし、「夜明けの中心」のまなみは、今はいない駿の思い出に親友の香川と浸る。瑞々しい。自分の高校時代を思い出した。

直木賞受賞作を3冊。

◆破門 (黒川博行)
スピード感あふれるやくざモノハードボイルド。スリルあふれるエンターテインメント作品に仕上がってました。
複雑な極道の社会を余すとことなく描写、大阪弁の会話も実にテンポが良い。
桑原と二宮も名コンビ、これだけキャラを生き生きと描き切る力量はすごい。

◆昭和の犬(姫野カオルコ)
これはまた、私の知っている姫野カオルコさんらしからぬノスタルジックな作品。
各章のタイトルは懐かしの米国のTVドラマ。主人公イクの育った昭和の時代を、犬との関わり合いを通して描く。
犬は寿命が短いからなー、人生のそれぞれのステージでいろんな犬との出会いと別れがあります。
ちなみに我が家の愛犬すいか♂は、ベルクと同じビジョンフリーゼです。

◆鍵のない夢を見る (辻村深月)
女性が主人公の犯罪にまつわる短編が5作。
「美祢谷団地の逃亡者」「芹場大学の夢と殺人」はとことんダメな男とダメンズな女性のお話。
「石蕗南地区の放火」の男もしょうもないけど、なるほど女性というのはこういう見栄のはり方をするものなのか、めんどくさいですね。
「君本家の誘拐」は育児ノイローゼ、でいいのかな。
「仁志野町の泥棒」親の問題で子供は無力ですからね。

「このミス大賞」など、ミステリーで賞を取った作品を5冊。

◆土漠の花(月村了衛)
ソマリアの国境付近で、いきなりテロリストとの戦いに巻き込まれた自衛隊。
理不尽にも仲間の命を奪われ、生きるために戦う決意を固める男たち。
憲法9条とか、平和ボケした日本人には想像もつかない過酷な局面で自衛隊魂が炸裂する。
どこまで本気で読めばいいのか戸惑いつつも、男の子として、ハラハラワクワクしながら一気読みしました。

◆虚ろな十字架(東野圭吾)
これは一気のどんでん返しと予想はしていたのですが、やはり東野圭吾さんらしい展開でした。
でも、テーマは殺人被害者の遺族と死刑制度でしょうか。
身勝手で残酷な殺人も、思慮のない愚かな殺人も、遺族からしてみれば、かけがえのない命を奪われたのは同じこと、殺人は極刑に値する絶対悪、犯人側の事情なんて知ったこっちゃない。
無知、未熟、愚かしい殺人の連鎖、重い読後感のミステリーでした。

◆さよなら神様(麻耶雄嵩)
「犯人は〇〇だよ」一行目で犯人が分かってしまう刑事コロンボ展開の短編連作。
3話目までは話は平凡、謎解きも無理やり感があり、「んー?」と思っていたが、4話の「バレンタイン昔語り」から「えっ、そうなの!」となって、そこからは面白くて一気読みでした。
でも、結局神様鈴木の正体はわからずじまい、少年少女の心の闇、どろどろした話で読後感は良くなかった。
それにしても、こんなこまっしゃくれた小学生は絶対にいないと思う。

◆ノックス・マシン(法月綸太郎)
法月綸太郎初読み。正直言ってかなり難解でした。SFファンで、物理学に抵抗がなくて、かつ海外のミステリーファンでないととっつきもできないかも。
「引き立て役倶楽部の陰謀」は「そして誰もいなくなった(=テン・リトル・ニガーズ)」が好きな作品なので思わずニヤリ。
「論理蒸発」も「華氏451度」をちょうど読んだところだったのでよかったし、細かいところはともかく、結末にはホロリとさせられました。
でも、「バベルの牢獄」はどう読めばよいのだろうか。

◆教場(長岡弘樹)
「警察学校は、警官に不向きな人間を振るい落とす場」、昔、キスマイと剛力が出ていた「ビギナーズ!」というドラマがあったが、それとは打って変わってシビアな警察学校のお話。ホントはどっちなのかな。文春ミステリーやこのミス大賞等で上位にランクインしていたので手に取ってみたが、短編連作形式で読みやすかった。風間教官がシブい。

◆明日の子供たち(有川浩)
大好きな作家さん、有川浩さんを1冊。彼女の本は全部読むつもりで読んでます
自衛隊シリーズもそうですが、しっかりした取材を通じて地に足がついた、それでいて重苦しくならない、さりげなく恋バナも織り込まれていて、良いお話でした。
これも映像化してほしいな。

◆華氏451度 (レイブラッドベリ)
愚民化政策のため言論が統制された世の中。本は焼かれ、大型テレビから愚にもつかない娯楽が提供される。
Fireman(焚書を業務とする者)のモンターグは本を読むことを知り、危険を冒して現実にあらがう。
翻って現実を見るに、日本人、自ら進んで愚民化していないか。マスコミに踊らされていないか。大切なことは、真実はなんであるかを自分の頭で考えること。今でも色あせることのない、ブラッドベリの代表作。

◆愚物語 (西尾維新)
オフシーズン1作目は暦くん不在、老倉育の「そだちフィアスコ」、神原駿河の「するがボーンヘッド」、阿良々木月火(&斧乃木余接)の「つきひアンドゥ」、脇役ヒロインのスピンアウトもの。
でも、他の2作はともかく「するがボーンヘッド」は、「海外で羽川先輩が大変なことになってて、暦くんもそっちにかかわっている」という伏線もあり、案外ここから膨らまして、暦くん卒業後の1年間を6冊くらい書いちゃうんじゃないのって気もします。
「終物語」TVアニメ、「傷物語」劇場版、掟上今日子TVドラマ化、西尾さん、盛り上がってきました。

仕事の本が2冊。
◆現代の実践的内部監査(川村眞一)
仕事で読みました。同じ説明が何度も出てくる箇所があり、詳しすぎる、くどい感じはありましたが、タイトル通り論理的かつ実践的な説明が多く、基本的なことが網羅されており、満足のいく一冊でした。

◆これだけは知っておきたい内部監査の基本(川村眞一)
久々にビジネス本を読んだ。会社の内部監査部門に属する人にとって、すごくわかりやすい理論説明と、実践的な助言に満ち溢れた良書。



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