ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

19年7月に読んだ本

2019-08-01 08:22:16 | 読書
7月は20冊でした。
文庫本のフェア中なので、「新潮文庫の100冊」から9冊。
◆眠れる美女 (川端康成)
男の機能を失った老人に対する全裸の美女の添い寝、男のプライドを損なわないために眠った女性を相手にする老醜、まだ現役?の主人公の、老人たちに対する優越感も、これまた五十歩百歩の老醜、睡眠薬を使った危険な遊戯が哀れだったり、自虐だったり。
ノーベル賞作家・川端康成というと、伊豆の踊子、雪国が頭に思い浮かぶのだけど、こっちの方が神髄なのかも。
◆ケーキ王子の名推理 4 (七月隆文)
「名推理」とタイトルにあるが、ミステリー要素はゼロ。一昔前の少女マンガのようなストーリー。甘いものとラブコメが大好きという人には良いかも。
◆淋しい狩人 (宮部みゆき)
古本屋の雇われ店主、イワさんが遭遇する、本に纏わる短編ミステリー。宮部さんらしい、適度にほの暗い心の闇、杉村三郎シリーズの原点っぽい。
◆7月24日通り (吉田修一)
自分の住む町をリスボンになぞらえ、イケメンの弟を自慢し、その自分に似て平凡な恋人にイラつくサユリ。自分で自分にかけた居心地の良い呪縛に留まるのか、進むのかの成長物語。どっちの結末になるのが良いのかなーなんて思いながら読んだ。このラストは嫌いじゃない。
だいぶ前に映画にもなっているんですね。映画も見てみたい。
◆二十歳の原点 (高野悦子)
我々の世代の青春バイブル、高校時代に読んで、理解、共感したつもりになった記憶あり。
普通の大学生が偏狭な反代々木系の学生運動家となり、家族や恋人とも決別、孤独の中死を選ばざるをえなくなる。
今なら無秩序と自由をはき違えていると理解できるのだけど、当時の自分を含め純粋真っすぐさんの視野狭窄は何とも始末に負えない。人間はちょっとずるくてなまけものでちょうど良いのかも。
◆きみの町で (重松清)
重松さんが子供向け短編集。震災の話が4編、「こどもの哲学」という本に寄せた話が7編、今どきの子供たちに向けたメッセージは安定の面白さ。
◆ボクたちはみんな大人になれなかった (燃え殻)
昔振られたブスな彼女に、ついfacebookの友だち申請を送ってしまうってところがいきなりあるある感満載で惹きこまれた。今の彼ならもっといい女と付き合えるだろうに、妙に引きずっちゃって、ああ、男だなと、そのリアルさにヒリヒリ。しかも、いい男になったつもりが、すごい勢いでダメ出しされてるし。
無防備な主人公が良い、妙にリアルな私小説。
◆午後の恐竜 (星新一)
お馴染みの星さんのショート・ショートが11編、星さんにしてはやや長めの作品が多かった。
安定の面白さはもはや古典、各話ともどうなるのかワクワクしながらオチを読んだ。
◆本屋さんのダイアナ (柚月麻子)
単行本で読んだけど文庫本で再読。やはり1回読んで面白いと思った本は二度読んでも面白い。
境遇が正反対のふたりが出会い、惹かれあい、友達になり、やがて些細なことが原因で離れてしまう。でも、正反対と思った境遇が意外なところでつながって、、、Wヒロインの成長物語。

「カドフェス」から3冊。
◆悪いものが、来ませんように (芦沢央)
どうしても周囲に良い顔をしてしまう紗英と常に彼女に寄り添う奈津子、紗英の奈津子に対する複雑な気持ちと奈津子の母に対する複雑な気持ちが交錯する。彼女らの独白や関係者の証言を通じ、彼女らが引き起こした事件が小出しにされる序盤の叙述トリックがうまい。芦沢さんの書く話には、いつもドキドキ、ハラハラさせられる。
◆アオハル・ポイント (佐野徹夜)
他人の頭の上にその人の偏差値が見えてしまう病気?の高校生、青木くんは、自分より上の者にはへりくだり、下の者をさげすむ。周囲を伺いながら、夢も持たずに、分相応に生きることが習い性、あたりまえになっている。そんな彼が、方法はともかく、ポイントが見える病気から脱し、かつポイントが見えない不安に対しても開き直ることができた。
これもひとつの成長物語かと。青木に想いを寄せる成瀬がカワイイ。
◆まあまあの日々 (群ようこ)
初読みの著者のエッセイ集。私より少し上の世代かな。共感する部分もあり、そうでもない部分もあり。
年配の人のマナーの悪さは実感、ああはなりたくない。

「ナツイチ」から3冊。
◆どこよりも遠い場所にいる君へ (阿部暁子)
離島の高校に通う過去にワケアリの高校生、和希は、1974年からタイムリープしてきた少女を助ける。出会うはずのない二人の邂逅、ひと夏の甘酸っぱい青春もの、というだけではない。切ない思いとそれをばねにした成長物語がおじさんの胸をも打つ。
◆下町やぶさか診療所 (池永陽)
初老の町医者、真野麟太郎の元に、元ヤンのリストカット少女、麻世が転がり込む。その他にも、いきつけの飲み屋のママさんや悪友、優秀な一人息子など、いかにもという登場人物が出てくる下町人情物語。
高齢化した下町って、うちの実家のまわりもこんな昭和な感じで、これはこれで楽しめました。
◆うずら大名 (畠中恵)
畠中さんらしい、軽妙な時代小説。主人公は、有月というよりも泣き虫の吉之助ですね。
でも、うずらって、そんなに強いのかな?

その他が5冊。
◆オリジン 下(ダン・ブラウン)
今までのラングドン・シリーズとはかなり趣が違い、美術要素やシンボリックな謎解きは控えめ。今回の相棒は美貌の美術館長に加え、なんと人工知能。生命の創造と人類の未来とか、散々盛り上げたが、黒幕の正体は話の流れから大体わかってしまった。
結局人類の未来はどっち?ラングドンによって世界に配信された楽観的なものか、前もってバルデスピーノら3人の宗教家が見せられた悲観的なものなのか。前作の「インフェルノ」に続き、ちょっとモヤモヤの読後感。
◆落花(澤田瞳子)
澤田さんの歴史小説は、歴史考証は緻密だが、歴史解釈や人物造形は実に大胆。京都の理屈が通用しない坂東の地で、将門たちの魅力が貴種の僧・寛朝の心を動かす。戦乱の火付け役となった千歳の異常さが際立つが、澤田さん、こちらにも驚きのオチを用意していた。澤田版「平将門の乱」を堪能。
◆もののふの国 (天野純希)
螺旋プロジェクトの1冊。最初の武士(平将門)から最後の武士(西郷隆盛)まで、日本を割った闘いを、海・山の一族の闘いということでまとめた1冊。それぞれの武家政権の特色がなんとなく保守・土地本位=山、改革・金本位=海ということでうまく対立軸になった。
いやいや天下人になった家康?関ケ原から豊臣滅亡までの家康像が、普通の歴史小説と180度違って新鮮。

◆東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!(西成活裕)
私は文系、大学は社会学部。数学は得意ではなかったのだけど、スッキリ答えが出る瞬間が好きだった。何十年もご無沙汰してすっかり忘れたため、中学レベルから復習、代数はすぐに思い出せたけど、方べきの定理とか、図形がちょっとヤバかった。ホントに5時間で中学の数学がさらえた。良書。

◆働くおっぱい(紗倉まな)
現役AV女優のエッセイ集。小説がまずまず面白かったのでこっちも読んでみたが、1本1本がやや長すぎでキレがない感じ。内容も、もっと業界ネタや自虐ネタにお面白おかしく振ってしまうか、逆に仕事の意義とかを使命感にまで昇華したような、そんなスタンスの話も過大に期待してしまっていたので、ちょっと肩透かし。今時のお嬢さんが心情を思いつくまま吐露した、普通にカワイイエッセイ集。
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