ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

22年4月に読んだ本

2022-05-02 13:36:46 | 読書
4月は、16作品17冊、読みました。
まずは、第166回芥川賞、直木賞受賞作と候補作、本屋大賞ノミネート作等、単行本の小説を6作品。

◆ブラックボックス(砂川文次)
コロナ禍の社会における非正規労働者の悲哀みたいな書評もあったが、私には、行き当たりばったりに生きている切れやすい若者の自業自得のお話のように読めてしまった。今に限らず、こういう人はいつの時代でも生きにくいはず、サクマくん、衝動的に暴力をふるってしまうのは病気かもしれないので、お医者行ったら?表現は今風で心理描写も巧み、芥川賞にしては読みやすかった。

◆黒牢城(米澤穂信)
ミステリー四冠!と思ったら直木賞まで取ってしまった。
米澤さんに歴史小説は書けまい、官兵衛をホームズにした時代ミステリーではと想像していたが、そんなことはない、これは立派に歴史小説。
荒木村重や黒田官兵衛の存念、堅固な城の守りが疑心暗鬼で内から朽ちていく様が鮮やかな人物造形とともに描写されている。
官兵衛はNHK大河の岡田准一に脳内変換しながら読んだが、村重は誰だっけ?

◆塞王の楯(今村翔吾)
さすが直木賞受賞作。抑止力による平和のための武器がテーマにはなっているが、本質的には「究極の石垣vs至高の鉄砲」の圧巻の戦国エンターテインメント、ワクワクドキドキ、500ページ超の長さも気にならなかった。時は関ヶ原前夜、武士のみならず石垣と鉄砲、武器職人集団も互いにしのぎを削り、矜持と信念をもってぶつかり合う。
話は変わるが先月金沢に旅行した。前田家は後藤某を穴太衆として召し抱えたとこの本にあったが、泰平の世になって作られた加賀百万石の石垣はアートしてました。

◆新しい星(彩瀬まる)
第166回直木賞候補作。大学時代の合気道部の同期(男性2名、女性2名)の10年後からさらにその後10年くらいを描いた作品。パワハラで引きこもり、子供を亡くして離婚、大病、それぞれが「新しい星に落ちたような」困難を経験した、人生の要所要所で寄り添ってくれる、淡白なようでツボを押さえた、かけがえのない友人の存在はありがたい。静かで優しいお話でした。

◆赤と青とエスキース(青山 美智子)
今年の本屋大賞2位作品。オーストラリアで出会ったブーとレイの穏やかな愛の軌跡が1枚の絵を通して描かれる短編連作は、エピローグで怒涛の伏線回収。いかにも本屋大賞で上位を取りそうな、優しさにあふれたお話。読みやすかった。

◆ペッパーズ・ゴースト(伊坂幸太郎)
ペッパーズゴーストって、板ガラスと特殊照明を使用して幽霊を見せる視覚トリックなんですってね。なるほど、幽霊さながら小説の中の人物が現実に登場したように見せてはいますが、実在の人物であるというタネ(伏線)も垣間見えます。ネコジゴもサークルも予告上映も、伊坂さんらしい奇抜すぎる設定ですが、ありえない展開の裏には緻密なトリックあり、最後は、多少強引ではありますが、すべて収まるところにすっと収まる様は見事。ラストのオチも効いています。

全冊読破挑戦中のカドフェス2021より2冊、これで残すところあと2冊。
◆日本沈没(上)(下) (小松左京)
昭和48年のベストセラー小説、草薙くんが出てた映画や昨年のリメイクのTVドラマは見たけど、原作は初読みでした。ウェグナーの大陸移動説、プレートテクトニクス理論当時としては最先端であったろう地学の知識に裏付けされた本格SF小説、エピローグの「竜の死」の描写は迫力がすごい。
でも、それだけではない。国内政治や海外の反応、献身的に救出活動を行う姿は東日本大震災と被るし、難民となった日本人の未来を想像して、もしそうなったら我々は日本人であり続けられるのか、とか、いろいろと考えさせられた。

同じく挑戦中のナツイチ2021から5冊
◆みんなで一人旅(遠藤 彩見)
人生も折り返しを過ぎた男女を主人公にした、旅に纏わる短編集。
「癒しのホテル」、自分も自分のことが大好きなマイペース男なので、ちょっと怖かったです。「氷上のカウントダウン」、露子もとんでもない女に声をかけてしまいましたね。解決策が小気味よい。

◆東京藝大 仏さま研究室 (樹原 アンミツ)
とぼけたタイトルとペンネームから、ライトノベル的な話を想像していたが、違った。実在する東京藝大の文化財保存修復彫刻研究室(通称仏さま研究室)で学ぶ修士課程4名のとてもまじめな青春群像劇。卒業制作の模写ならぬ模刻を通し、普通の人には思いもよらぬ仏像の奥深さに呻吟し、家族や友人、恋人との関係に悩みながらも成長し、巣立っていく風変りな若者たち。輪をかけてユニークな教授たちのエピソードが興味深くも、面白かった。

◆ ハニーレモンソーダ (後白河 安寿,村田 真優,吉川 菜美)
人気コミック・映画のノベライズ本。Snowmanのラウールと吉川愛で映画にもなった。吉川愛って、子役の吉田真琴ちゃんだよね?大きくなったなー。
小説の方は、おじさんが読むとこっぱずかしくなるようなストーリーでした。

◆なんて嫁だ めおと相談屋奮闘記 (野口卓)
よろず相談屋の信吾が嫁の波乃とふたりで相談屋をやることになる、セカンドシーズンの始まり。
お二人が底抜けな善人であることは分かりましたが、「なんてやつだ」「なんて嫁だ」と言われるほど変わり者とも思えないし、相談屋をやることになった経緯ばかりで肝心の面白い相談事があったわけでもないので、ちょっと退屈でした。

◆これが「日本の民主主義」! (池上 彰)
戦後70年の民主主義の歴史の振り返り、相変わらず、池上さんの解説は分かりやすいが、ところどころちょっと偏っているような気も。
55年体制を崩壊させた社会党の自壊は自民党の仕掛けた罠か。自民党の首相も玉石混交だけど、自民党以外でまともだった首相って、こうやってみると野田さん一人だけだな。

◆女のいない男たち (村上春樹)
アカデミー賞を取る少し前に遅ればせながら映画を観て、これは小説も読んでおかねばと手に取った。なるほど、映画の脚本は「ドライブ・マイ・カー」+「木野」に「シェラザード」のエピソードを加え、なおかつ舞台を東京から瀬戸内に移したものだった。「ドライブ・マイ・カー」の家福、「イエスタディ」の木樽、「独立器官」の渡会、「シェラザード」の羽原、「木野」の木野、そして表題作の僕、かけがえのない女性を失った喪失感になすすべなく戸惑う男たちの物語。映画の方が少しだけ救いがあったかな。

◆りゅうおうのおしごと!(白鳥士郎)
待ちに待った続編を発売日読み。今回は釈迦堂里奈編でしたね。主人公の八一は脇役。進化を続けるあいちゃん、ついにタイトル奪取、そしてさらに高みを目指すことを堂々宣言。一方でもう一人のあい、夜叉神天衣も裏で不穏な動き?銀子はどうした?ってことで、いつの間にかずいぶんと増えたキャラがどんどん動いて、話はまだまだ続く。「俺の全盛期は明日」、いい言葉ですね。いただき。

◆荘園-墾田永年私財法から応仁の乱まで(伊藤 俊一) (中公新書)
8世紀の墾田永年私財法から15世紀の応仁の乱までの荘園の変遷を研究した本。思えば歴史の教科書に出てくる荘園って、自分にしてみればなにやら正体が分かったような分からないようなものであった。摂関政治や院政、鎌倉幕府、室町幕府の政治形態や疫病、飢饉、貨幣経済、戦乱などの環境変化を受け、荘園が、それぞれの時代の人々の私利私欲や都合にあわせて、水があたかも低きに流れるように変化する様が、良く分かったような気がしないでもない。

◆東京23区 境界の謎(浅井 建爾)
もう少しトリビアに寄った本かなと勝手に思っていたが、意外と正統派というか、東京23区の成立を歴史を踏まえながら、詳細な地図で丁寧に説明した本。私は新宿区上落合在住だが、お隣さんは中野区、JRの最寄り駅は東中野、案の定、落合は中野区になりたくなくて新宿区にすり寄ったとあった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新倉富士浅間神社 | トップ | 大阪ミックスジュース考 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事