「ボッシュ 愚者の船・・・」ふたたび
どうも先ごろ装備された３本のマストと船長によって、この日本丸はバミューダートライアングルへと舵を切ったように思えて心もとない。
航海士も機関士も船員も乗客も、みんな何かの幻術にかけられて、常夏の楽への航海を楽しんでいる、もしくは思い込んでいるのだろうか。
もっとも、それは日本丸だけに限ったことではないのかもしれない。
ノベール賞もユネスコの世界遺産登録も、偏った政治的意向が働いた方便として使われるのが露骨になっている。
もともと人は平和的生き物ではないけれど、知恵があると自負している割には少しも無限に肥大する欲望を制御する術を身につけてはいないようだ。
我が日本丸の船長は、しばしば交代することはあっても、ハメルーンの笛を握ることを忘れる者はまずない。
あの日よりときどき眠りが浅くなり寝言を言う回数が増えた乗客が現れた。
でも、乗客に割り振られた固体識別番号が、これから活動の全てを阻むリードとなるやも知れぬと危機感を募らせている。
いろいろな意味で、日本丸は先頭を切っているようだ。
不安で仕方がなくなると、星を眺め、空や自然の美しさに目を向けて、今あることのありがたさを心に刻み、慰めるのであった。