rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

日本の北端へGO その4 旅の終わり、想いかえして

2024-06-26 11:08:22 | 漫画やアニメ

風力発電の風車が立つ丘


アカシア

早朝の雨の礼文島を後にして、フェリーで稚内へ戻る。
辛うじて見えた利尻島も遠くになるころ、船体が起こす白波を見ていると、時折波しぶきとは違う飛沫が起こるのが見えた。
その飛沫が起こるのを注意してみていると、飛沫が上がってまもなく黒っぽい何かか海面を下からなぞる様子があった。
一回だけでは眼の錯覚もあるだろうと、しばらく海面を注視する。
それは、その後も幾度となく起こり、同時に何箇所で起こることもあった。
おそらく、イルカが船に併走していたのだろう。
曇天の船旅が、ちょっと楽しくなった時間だった。
到着した稚内も、やはり重く暗い雲が垂れ込めていて肌寒い。
これから札幌へ向かって、また道路をひた走っていく。
稚内市街地を抜けると、丘陵地帯の尾根沿いに、大きな風力発電の風車が連なり立つ風景が続く。
風が強く雪が降る地域では、太陽光パネルでの発電は不向きなためだろう。
白くて大きなプロペラがゆっくり回る姿は、私の性癖に刺さる。
水が流れて時々渦を作る渓流や、はたまた二層式洗濯機の回っているところ、独楽は当たり前だが、排水溝に流れ込む水をうっかりうっとり見とれてしまう癖があるから。
また、なんとなくエヴァンゲリオンに登場しそうな使徒たちの雰囲気もあって、不気味で素敵だ。
しかし、風力発電の巨大プロペラは、その姿の優美さとは相反するデメリットもある。
風という自然の現象を利用することで、風力が安定しなく、無風では稼動せず、弱ければ発電量がおぼつかず、強すぎれば破壊されかねないので稼動を中止する必要がある。
自然界への影響として、風車の騒音、鳥がぶつかってしまうこと、あとは超低周波がある。
この中で、超低周波は、個体差はあるものの悪影響が報告されている。
人で言えば、頭痛、心拍の向上、血圧上昇、場合によっては「幻覚」を見ることがあるようだ。
主に、人が聴覚で感知できない周波数を浴び続けることで、無自覚に肉体的にストレスを受けるためなのではないか。
そういえば、一昨日に宿泊したホテルから程遠くないところに、熊が出没したとニュースで見た。
人よりより地面に近く生きる動物は、よりこの超低周波の影響を強く受けていると想像できる。
再生可能エネルギー、聞こえはいいが、メリットばかりでもないのはこれからもわかる。
エネルギー利用の効率化を開発しながら、リスク分散と、使用できなくなった発電機材の安全な処分方法(特に太陽光パネル)を早急に整備しなくてはならない。
人が便利で快適な生活を営む上での、一番の基盤である地球を汚染してしまっては、取り返しのつかない愚行となる。
それとも、人は破滅に自ら進みたいマゾならば如何ともできないけれど。
さて、話題がいささか深刻になってしまった。
旅に戻ろう。
稚内より内陸の道国道40号を南に下り、幌延町を過ぎたあたりで国道232号に入り天塩町へ向かって、留萌市まで海岸沿いの道(日本海オロロンライン)を行く。
時折右手に日本海が見え、途中の初山別村に入ると街灯に星の形があしらわれ、岬のところに初山別天文台あるのが見えた。
晴れた日の夜は、星が手に届くように見えるのだろうか。
北海道には、温泉と天文台が多い印象を受けた。
留萌から内陸に進んでいくと、アカシアの木が多く見られるようになって来た。
白い花をたくさん咲かせ、風に揺れる姿は、清楚で美しい。
休憩したパーキングエリアで、アカシアを間近で見ることができた。
花の形は、まるで藤の花のようだ。
歩道の脇には、雑草のようにフキが生え、見慣れないオレンジ色の花が咲いていた。
コウリンタンポポという外来種で、黄色のキバナコウリンタンポポも名寄で見た。
自分が子供のころにはなかったものだ。
ちかごろ、綺麗で駆除しにくいような外来種の花が、至る所で勢力を強めていると思われる。
人の心の弱いところをつく、狡猾な生存戦略だ。
実際私も、道路わきに生い茂っているハルザキヤマガラシを、ヨーロッパ的と受け入れてしまいそうだから。
そうすると、物資や人、文化の交流が進むのは、一見よいようだけれど、もちろんマイナスな要素もちゃんとあるわけで、そこを考え合わせてやっていかないといけないらしい。
旅は、非日常。
いつもとは違う環境、時間の流れ、刺激に触れることで、心の中に変化が起こる。
どこに居ても考え方次第なのはわかっていても、物理的なスイッチで強制的に思考の視点を変えるのも必要だろう。
言い訳がましいけれど、旅は、人生を豊かにしてくれる装置なのだと思う。


アカシアの花


フキとコウリンタンポポ

日本の北端へGO その3 レブンアツモリソウ

2024-06-25 15:50:31 | 旅先から
レブンアツモリソウ



レブンアツモリソウは、この島の固有植物。
一ヶ月にも満たない開花時期の終盤に間に合い、この花を見ることができた。
寒冷地を好むラン科の植物で、このレブンアツモリソウは、特定の虫でしか受粉ができないことと、その発芽から生育も時間がかなるなど幾多の条件をクリアしなければならないとかで、絶滅危惧種となっているようだ。
保護育成活動がなされているのはもちろんのこと、花を観察する時に花を揺らしたりしないなど、注意を払う必要がある。
レブンアツモリソウ群生地を後にして向かったのは、島の西北端にあるスコトン岬。
やはり霧雨と強い風が吹きつけてくる、厳しい自然環境があった。
それしか、体感できない状況だった。
また来た道を南下して、島の南の西側にある、桃のような形状の桃岩と猫の後姿のような猫岩が見える桃台猫台へと移動したが、移動した先もやはり霧雨と強い風が居座っていた。
もちろん、桃岩と猫岩を拝めることはできず、そこに咲いていた花を写真に収め、旅の記憶とする。
島を南北と移動していると、島の特徴に気がつく。
バスガイドの方の説明にもあったのだが、南半分には、ハイマツやトドマツなどの樹木が生えていても、北半分は木のないいわゆる「礼文島」の観光写真にあるようななだらかな丘陵地が続く景色になる。
明治ごろの幾度かの大火で北側の木々が消失し、川を境に南側への延焼は止まったとのこと。
その後、植林をして復活を目指すものの、北の厳しい環境では、人の努力は実を結ばなかったようだ。
「花の島 礼文島」と言われていても、そこに咲く花の植生は高山植物であり、本州などにおいて2500m付近の森林限界と同じような条件となると、植林という行為が困難を極めるということがわかる。
私が憧れた景色の背景にこのような経緯があったことを知って、今ある自然を失ってからでは元に戻すのが、どれほど困難を極めるか、元には戻らないかを考えさせられた。
たしかに、場所は遠く離れるけれども、かつてのギリシャは豊かな森が国土を覆っていたそうだが、文明の発達と共に木々は伐採され生活燃料に使われたり、土木工事に使用されたりと、ただ切り倒されていた。
彼らには、伐採と植林が対を成す考えはなかったのだろう。
そして、今のギリシャの景色が出来上がった。
話を元に戻そう。
観光バスでの周遊を終えて、宿泊するホテルは、北の久種湖(くしゅこ)にほど近く、スコトン岬と金田ノ岬にはさまれた入り江に面していた。
ホテルから歩いて浜辺に行き、貝拾いをして童心に返る。
ホテルのルームキーについていた貝殻には、綺麗な穴が開けられていて、実は人工的に開けたものではなく、この浜辺で取れる貝だけにある特徴なのだと教えてもらったのだ。
その実態は、ちょっとグロく、エゾタマキガイにツメタガイが吸い付くことによって開いた穴なのだそうだ。
うむむ、でもなんとなく可愛いからよしとして、気に入った貝を拾い集めた。
観光ポイントを巡るのも楽しいが、貝殻集めや石探しなどのシンプルで没入感のある行為は、人の記憶の原初的なところに刻み込まれるのではないだろうか。


スコトン岬


チシマフウロ


レブンシオガマ


センダイハギ


穴あき貝


ゴロタ浜



さて次回は、アカシア花盛りの北海道で締めくくろうか。

木漏れ日マニア または〇は正義!

2024-06-24 10:21:14 | 散歩


先日、夏至の日の2日前に、また鹿島詣でをした。
しっかりと踏み固められた地面が心地よい広く長い参道を歩いている時、ふと足元に目をやると、そこには木漏れ日が光の模様を描いていた。
遠くの隙間を抜けてきた光は丸く、近くの葉にさえぎられたものは葉の形を成していて、様々な光の強さと影の形が織り成す世界は、静かで美しかった。
木漏れ日の描く地上絵に魅せられて、幾久しく。
このブログでも時々取り上げている。
今回は、夏至も近いということで、太陽が地面に垂直近くに光を落とすことから、丸の形がとてもきれいだったような気がして、一人ではしゃぎ写真を撮ったのだった。





日本の北端へGO その2 礼文島澄海岬

2024-06-23 15:32:51 | 旅先から

稚内から礼文島へ向かうフェリーより、利尻島の利尻富士を臨む


幸運に開けた青空

雨雲が覆う稚内から、朝一のフェリーで礼文島に向かう。
稚内のノシャップ岬を遥か後方にするころ、フェリーの上空には青空が広がってきた。
天気予報では曇り時々雨だったから、この束の間の青空は、北端に向かう旅行者へのちょっとした贈り物のように思われた。
そうこうするうちに、前方左手に島影が水平線上に現れた。
利尻富士を頂く利尻島だ。
30年以上前に、行ったことのある島だ。
山の右側に、白い筋があることから、残雪の可能性がある。
ここにあげた写真の前のもののほうが、山頂までよく見えて、白い筋もくっきりしていたが、全体のバランスがいいものを選んだので山頂に雲がかかり始めたものとなっている。
海上の風は強く、しかも冷たい。
時々船内へ戻って体を温めてから甲板へ出るの繰り返しをしていると、進むにつれて空に雲がかかり、利尻島は灰色の世界の奥に隠れてしまった。
もちろん、礼文島は、すぐ近くになるまで待たなければその姿を見ることができないほど、霧がかかっていた。
フェリーが接岸し上陸すると、観光バスへと乗り込んで、礼文島周遊をする。
礼文島は、南北に細長い島で、その東海岸沿いに道路が走る。
いくつかの名所、見内神社(みないじんじゃ)、日食観測記念モニュメントなどを車内より確認して、西側にある澄海岬へ移動する。
その途中、日食記念モニュメントを過ぎたあたりから一区間だけ、すっきりと晴れているところがあった。
礼文岳(490m)に西よりの湿った空気が阻まれて、そこだけ晴れているのだろう。
その影響が及ばないところへ進むと、また霧雨の降る世界へと戻っていった。
澄海岬には、強く湿った風が吹きつける過酷な中でも咲く、エゾカンゾウ(ニッコウキスゲ)、ミヤマオダマキ、チシマフウロ、オオハナウドなど、健気で可憐な花たちが居た。
晴れて視界が開けていたら・・・と思いつつ、まだ雨が酷くないだけでも幸運なのだと言い聞かせては、一期一会の面持ちで、この景色と空気を自分に刻み込もうとしていた。


澄海岬(すかいみさき)にて


澄海岬に咲く花々




澄海岬の入り江





この続きは、礼文島固有種のレブンアツモリソウと、穴あき貝などを織り交ぜておくりたいと思う。


日本の北端へGO その1

2024-06-17 15:58:17 | 旅先から




6月8日から13日にかけて、北海道へ行っていた。
そのうち4日間、北端の稚内と礼文島へ足を延ばす。
あいにくと、曇って肌寒い天気だったが、それもまたよし。
稚内へ行く途中の名寄に泊まった。
北海道は、温泉がとにかく多い。
ここ名寄も優しい泉質の温泉で、ホテルでは日帰り温泉も行なっており、近隣の人々が利用しているのが伺えた。
さて、「名寄」とはどこかで馴染んだ地名と思っていると、観光案内の小冊子を見て気がついた。
天文台があるのだ。
先月は、太陽フレアの影響で、低緯度オーロラが世界各地で目撃されていた。
そのなかで、名寄天文台「きたすばる」がSNSで発信する情報を見ているということから、初耳ではなかった。
行った日は生憎と月曜日で、概観を拝むだけではあったが、よりリアルさを増してこれからの情報を受け取れそうだ。

そして、古生物の化石が取れるという中川町を通って、サロベツ原野に向かった。
より寒さと霧雨が増してきて、ある意味湿原の雰囲気が強められている。
湿原の植物が咲くには少し早くっても、エゾカンゾウ(ニッコウキスゲ)、アヤメ、ワタスゲなどがポツポツ咲いていた。
風が強く、すぐにも雨が本降りになりそうな中、それでも人はやってくる。
花の時期は目まぐるしく変わるから、天気を待っているだけでは逃してしまうのだろう。

次は礼文島篇へ。